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マイリトルガーデン

黄色と赤で可愛い。紅夜はそれを目の前に暫く考えていた。 「オイ」 「・・・」 「オイ、相原」 「・・・え、あ、・・・なに?」 「俺をシカトするとはいい度胸じゃねぇか・・・」 「や、ご、御免って!どないしたん!」 「別に」 「何やそれ!」 「早くしろよ」 「あ、・・・うん」 京義は眠そうに欠伸をして、大して興味の無さそうな顔でそう言った。帰り道で寄ったコンビニの中、涼しいだろうと思って入ったそこは随分寒かった。店員はこんなところに居て寒くないのだろうか、そんな余計な心配さえしてしまう。紅夜はもう一度キャラメルコーンを睨みつけた。 「あ、あかーん!」 「・・・は?」 「耐えろ!耐えろ、俺!あかん!」 「・・・オイ・・・」 「い、行くで、京義。もうこんなとこには用は無いわ!」 「・・・」 そう言うと紅夜はやけに威勢よく自動扉を潜った。勿論、店員はぽかんである。何ていう暴言を吐いて出て行くのだろう、しかも自分ひとり残して。京義は溜め息を吐いて、店員の意味深な視線を背中に受けながら、すたすたと行ってしまった紅夜の後を追いかけた。 「・・・相原」 「あかん!あかん!魔物や!」 「・・・は?」 「魔物!魔物が住んでる!」 「・・・」 「はよ、帰ろ!暑いし!」 「・・・」 京義の話など全く聞いていない紅夜は、ひとりでぶつぶつと怪しげに何か呟いている。バス停のベンチに座ってもまだ、紅夜はひとりごとに夢中である。京義はぼんやりと時刻表を確かめ、暑い太陽を見上げた。暑いのは嫌いだ。苦手だからだ。舌打ちしたい気持ちで、京義は目を瞑った。 「なぁ、どう思う!」 「・・・は?」 しかし、眠りは妨げられ、京義は目を擦った。見れば真剣な顔をした紅夜がこちらを見ている。一体何だと言うのだろう。京義は眠い頭を揺さぶって、取り敢えず意識を回復させた。何かなんて聞くのがまず面倒臭い。一人でぶつぶつやっていてくれたほうがまだ良かった。 「・・・何が・・・」 「お、俺・・・」 「・・・?」 「・・・太った・・・と思わん・・・?」 「・・・は」 「あー、やっぱりやー!何てことや!」 「・・・」 「ま、・・・魔物や・・・」 「・・・そうは見えねぇけど」 「そう!?・・・いいや、あかん!見て分かるほど太ったらそれはもうなんちゅ―か・・・!」 「何なんだよ・・・」 あぁ、だからお菓子をあんなに欲しそうにしていたのに買わずに帰ってきたのか、京義は納得はいったが、そんなどうでも良いことに睡眠を妨害されたと思うと恨めしい。しかし、隣の紅夜はその京義にとっては全くどうでも良いことで、完全に頭を悩ませていた。 「ナツさんがあかんねんもん・・・毎日お菓子食べてるから・・・」 「食わなきゃいいだろ」 「良いわけあるか!あんなもん目の前にして食べんのを我慢せぇっちゅうん!む、り!」 「・・・面倒臭・・・」 「あぁ、でも、もしも俺が太りに太って可愛くなくなってしまったらどうすんねん・・・!ナツさんに追い出されたら行くとこあらへんもん!」 「・・・そこかよ」 「何ゆうてんねん!俺にとっては死活問題や!」 しかし、京義にとっては全くのどうでも良いことには変わりは無かった。 「あ、おかえりー・・・」 「・・・」 「・・・」 「え、どうしたの・・・?」 「あ、あかーん!」 「・・・え、なに・・・紅夜くん?」 「ナツさん!なんちゅう・・・!」 「これ?あ、美味しそうだから買ってきちゃった。キャラメルコーン、食べる?」 にこりと夏衣が笑って差し出したその黄色と赤のパッケージこそ、先刻紅夜がコンビニで見ていたそれであった。紅夜は蹲って、頭を抱えて京義はそれに小さく溜め息を吐いた。事情を知らない夏衣だけが、コンビニの定員のようにぽかんとしている。 「・・・ど、どうしたの・・・」 「・・・」 「な、あ!京義!」 「何だよ」 「また紅夜くん苛めて・・・!」 「苛めたことねぇし」 「魔物やもん・・・!」 「ま、魔物!?コラ、京義!一体何したの!」 「だから・・・」 あぁ、面倒臭い。京義は夏衣の持っていたお菓子の袋に手を突っ込んで、幾つか口に放り込んでばりばりと噛み砕いた。それは甘い味がして、何だか気持ちが悪くなるような匂いもしている。側で紅夜が声を上げたが知らない振り。 (・・・まず・・・)

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