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堀内先輩と初めて会ったのは、テニスサークルの新歓だった。
サークルは人間関係が面倒臭そうと思って入る気はなかった。なので入学式が終わった後、直帰するつもりだった。
ーあそこだけやけに盛り上がってるな
道を塞ぐくらい女子が群がっているブースがあった。みんな目を輝かせて、写真を撮っている。
「ねぇ、あれなんの騒ぎ?」
「あー、なんかかっこいい先輩がいるらしいよ」
隣りにいた努が興味なさげに答えた。
「ふーん」
ー見てみたいかも、でもあの中に入るのは···
「俺バスケ部のブース見つけたからまた明日授業で」
「分かったー」
ーどんなもんか少しだけ見てみるか
顔を見ようと何度か試してみたものの、人数が多すぎて顔どころか姿も見えなかった。
「新入生歓迎会は17時から行いまーす!参加希望の人は10分前に校門前に来て下さーい!」
「はーい!」
女子が一斉に返事した。
ーどんだけだよ
一度帰宅して校門前に向かうと、先輩が10人ほどだけでさっきの女子達が嘘のようにいなくなっていた。
「新入生かな?」
近くにいた先輩が声をかけてきた。
「はい、国際学部の1年です」
「国際学部なんだ!私と一緒!何か大学のことで分からないことがあったら聞いてね」
「ありがとうございます。1つ聞いていいですか?」
「ん、何?」
「あのー···さっきの人達は?」
「あぁ、毎年こうなの。女子の目当ては堀内実。私と同じ4年で経営学部なんだけど、新歓にはいつも来なくて。今年で最後だからって言ったんだけど駄目で。実が来ないって分かった途端こんな感じ」
「そうなんですね」
ー新歓来ないのか···
「他の新入生もぼちぼち集まってきたから、お店向かおうか」
「分かりました」
新入生は結局僕を含めて6人しかいなかった。
店は歩いて5分ほどで、学生にも良心的な値段設定の居酒屋だった。簡単な自己紹介を済ませた後は特に話したいこともなく、他の新入生が盛り上がっているのを横目に運ばれてきた料理を無心で食べた。
校門前で声をかけてくれた先輩の名前が立花楓ということはなんとなく覚えた。
ーやっぱり来なきゃよかった
始まって2時間、そろそろ帰ろう思い、グラスに残った氷を口に入れたとき
「実!来ないって言ってたのに」
「やっぱり最後だから顔出そうと思って」
「来るなら言ってよねー」
息を切らしながら入ってきたのは、女子が群がるのも頷けるイケメンだった。
整った顔に厚みのある体、身長も高く、街中で会ったらモデルか俳優かと思うほどだ。
ーこれはほっとかないな
人数分の椅子しかなく、前に座っている先輩がちょうどトイレに行ってることもあり、必然的に堀内先輩が僕の正面に座ることになった。
「新入生も私達も自己紹介は一通り済んでるから、実だけ宜しく」
立花先輩にそう言われて堀内先輩は立ち上がった。
「えーそういうの苦手なのに···」
「つべこべ言わないで早く!」
「はいはい、えーと、経営学部4年の堀内実です。一応、サークルのリーダーやってます。地元は埼玉で、高校もテニスしてました。宜しく。これでいい?」
「実にしてはよくできました」
はぁとため息をつきながら座る先輩の姿は、実家で飼っていたシベリアンハスキーにどこか似ていて思わず微笑んでしまった。
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