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地元−1−

正月以来の地元は東京と同じくらい暑かった。 「こっちも暑いなー」 先輩はジャケットを脱いで腕まくりをした。 灼けた肌に腕時計が眩しい。 「盆地だってこと忘れてました···」 「ほんとに地元かよ」 「い、一応···」 先輩の顔をまともに見ることができない。 「家まではどうやって?」 「あと5分くらいしたら親が迎えに来ます」 「そか、俺あそこのホテルだから先行くわ。連絡するから拒否するなよー」 「し、しませんよ!」 「じゃあまたなー」 先輩は笑いながら、ホテルへと向かった。 少しして、お母さんが最近買い替えたと写真を送ってきたお気に入りの車で迎えに来た。 「暑いでしょー、早く乗りなさい!」 どこどこの誰々が結婚したの、とかドラッグストアがあちこちにできた、とかいう他愛もない話をしているうちに家に着いた。 「昼は?食べたの?」 「ううん、まだ」 「じゃあなんか作るから待ってて」 「ん」 「汗かいたならシャワー先に浴びなよー」 「はーい」 一人暮らしをして気づいたことは、何もしなくても料理が出てくる実家のありがたみだ。自慢ではないが、お母さんは料理上手だ。上京したてのときはレシピ本を見て作っていたが、結局食べるのは自分だからそのうち頻度は減っていった。最近はデリバリーに頼りっきりだ。 シャワーから出るとテーブルに冷たい蕎麦が並んでいた。夏の定番は素麺の家庭が多いと思うが、お母さんが子ども時代に死ぬ程素麺を食べて嫌いになった、という理由から我が家では蕎麦が定番になったのだ。 「そういえば、大学の友達はいつ来るの?」 やけに楽しそうな声で聞いてくる。 「んー、まだ連絡ないから決まったら教える」 「早めに教えてよ、料理準備しなきゃだから」 「恥ずかしいからそんなに張り切らなくていいよ···」 「なぁに言ってんの!友達連れてくるの初めてでしょ。純がお世話になってる人ならお母さんも会ってみたいし」 「大袈裟な···」 ー後で努に連絡してみるか 蕎麦を食べ終えてリビングでゴロゴロしていると、スマホが鳴った。堀内先輩からだった。 「もしもし?」 「あー俺おれ」 「誰ですか?」 「名前出るから分かるだろ。今週の土曜必ず空けとけよ。必ずなー」 ー押しが強いなぁ 「あ、はい」 「素っ気な。店は純が決めてくれていいから。じゃあよろしくー」 「分かりました」 電話を切ると、洗濯物を干していたお母さんがあれこれ聞いてきたので昼寝するからって言って自分の部屋に逃げた。 新幹線でも先輩のせいで寝れなかったから、夕飯までの時間寝ることにした。

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