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合宿−1−

ーめちゃくちゃ動揺してたな 突然電話を切られてムカついたが、顔を赤らめて慌ててる純の姿が目に浮かび、気づけば笑っていた。 ーあれからもう1年か 新歓以降、就活やらバイトやらでサークルに顔を出すことはほとんどなくなっていた。夏休みの2週間前に楓から毎年恒例の合宿について連絡があった。合宿というのは名ばかりで旅行のほうがしっくりくる。 「実、生きてる?大学でも会わないし、サークルにも顔出さないから生存確認してみた」 「大学はゼミだけだから単にタイミングが合わないだけだろ。ちゃんと生きてるよー」 「それならいいんだけど。あ、合宿なんだけど栃木の那須に決まったって。参加するなら来週末までに連絡してだって」 「了解。1年は全員参加するのか?」 「えーと、峯岸くんだけ来れないみたい」 「峯岸?そんなのいたっけ?」 「ほら、新歓のとき実の前に座ってた子だよ」 「あー···」 ー氷食べてたあいつか 「とりあえず私は参加する予定だから。またねー」 「あーい」 那須までの移動は車がある俺と他3人の車に分かれて向かうことになった。 合宿当日、校門前に行くと峯岸の姿があった。初めて会ったときは運動とは無縁の白い肌をしていたが、練習のおかげかほんのり日焼けしていた。 ー参加しないんじゃなかったっけな 「実!久しぶり!うちら最後だから楽しもうね!」 就活から解放された楓はやけにテンションが高かった。 「俺は運転だから楽しめないかも」 「なんか言った?」 「なんでもないでーす」 ーテンション高いと面倒くさいんだよな   誰がどの車に乗るかは参加希望の連絡をした順ということで、急遽来ることになった峯岸は俺の車に乗ることになった。 ーマジかよ··· 「駐車場に停めてるから行こうか」 「は、はい!う、運転宜しくお願いします!」 深々と下げた頭にはすでに汗が滲んでいた。 運転し始めて30分、お互い何も話さなかった。 ーそういえば名前以外何も知らないな 「あーあのさ、新歓のとき俺遅れて来て自己紹介聞きそびれたから教えてよ」 急に話しかけられたからか、ビクッとして持っていた飲み物を落としそうになっていた。 「あ、えーと···名前は峯岸純です。学部は国際学部です···」 「それだけ?地元は?」 「山形です」 「へー。スノボしに蔵王には行ったことあるわ。その辺?」 「いや米沢です」 「あー米沢牛のとこかー」 「はい···」 「兄弟は?」 「一人っ子です」 「ははっ、ぽいなー」 「ぽいって何ですか」 そう言って拗ねたように口を尖らせる。 ー表情コロコロ変わるの面白いな それから何か思い出したように、鞄の中から袋を取り出した。 「せ、先輩···ほんとはみんなに配ろうと思ってたんですけど···飴食べますか?」 ー気利くじゃん 「お、サンキュ。食べさせてくれる?」 「は、はい!?」 ー動揺しすぎだろ 「ハンドルで手塞がってるから、食べさせてくれると助かるんだけど」 「あ、そうですよね···すみません、気付かなくて」 飴を持つ手が震えていた。 「もっと近くじゃないと食べられないだろ」 「じゃあ、もう食べなくていいです」 そう言って伸ばしかけた手をしまおうとしたので、手を掴んで峯岸の指ごと飴を口に入れた。 「せ、先輩!!何してるんですか!」 「飴食べただけだろー」 ー指きれいだったな

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