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買い出し組は俺たちの1時間後に到着した。
夕方を過ぎると気温がぐんと下がって、BBQは外で焼く係と中で食べる係を交代しながら食べることにした。一通り片付けが済んだあとは、みんな楓のペンションに集まって、飲みながら恋バナに花を咲かせた。
「峯岸くんは恋人いるの?」
「い、いないです···」
隣に座っている峯岸が食べていた氷を飲み込んで、空になったグラスを置いた。
「どのくらいいないの?」
「2年くらいいないです」
ー2年前は彼女いたのか
「そうなんだーどんな人がタイプ?」
「うーんと···優しい人ですかね?」
顔は笑っていたが無理しているように見えた。
「見た目のタイプは?」
「特にないです···。あのー··ちょっと疲れたので先に部屋に戻ります」
「そっかそっか、明日は9時集合ね」
「分かりました」
峯岸の表情が気になって俺も早めに部屋に行くことにした。
部屋に入り2階にあがると壁を背にして座っていた。
「どうしたんだ?」
「せ、先輩!どうしたんですか?」
「なんかさっき居心地悪そうだったから···さ」
「あー···気遣わせてすみません。あの手の話苦手なんです」
「そうなのか」
俯いている峯岸の隣に腰掛けた。
「無理なことは無理すんな」
「···はい。ありがとうございます。なんか先輩に迷惑かけてばっかですね」
「俺は別に迷惑だとは思ってないよ」
「意外と優しいですね···」
「意外とってなんだよ」
「だってイケメンで性格いいなんてずるいです···」
聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。
「イケメンに恨みでもあるのか?」
「あるわけないじゃないですか!」
「ははっ、少しは元気戻ったな。明日早いから風呂入って寝ろ」
「はい」
立ち上がった峯岸の手が少しだけ震えていた。
次の日はチェックアウトをした後、地元で有名なパン屋で昼食を食べて解散となった。行きと同様帰りも峯岸と2人きりだった。
「ぼちぼち帰るかー」
「はい。帰りも運転宜しくお願いします」
「また飴食べさせてくれる?」
「だ、だめです!」
「だめってことは嫌ではないんだ?」
「昨日優しいって言ったのは撤回します」
「誰が運転手か忘れるなよー」
「意地悪ですね···」
「早く乗らないと置いてくぞ、純!」
「分かりましたよって···今、名前で呼びました!?」
「ほら、早く!」
「は、はい!」
ー純っていい名前だな
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