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浩介−1−
帰省2日目、電話の着信音で起こされた。時計を見たら9時過ぎだった。
ー昼ぐらいまで寝たかったのに
昨日の今日で、また先輩からだと思い名前を見ずに電話に出た。
「土曜は行きませんから!」
「いきなり怒るなよー。土曜って何の話?」
ーん?先輩じゃない
名前を確認すると努からだった。
「なんだ、努か」
「なんだってなんだよ。名前確認してから出ろよ」
電話越しに笑い声が聞こえた。
「すまん」
「明後日の昼過ぎにそっち着くから迎えよろしく」
カレンダーを見ると明後日は木曜だ。
「ん、了解。なぜかお母さんが張り切ってる」
「ははっ、会うの楽しみにしてる。で、土曜に何かあんの?」
「あー···実は新幹線で堀内先輩に会って···」
「堀内先輩ってあのサークルの?」
「うん···」
「卒業してぶりだろ。仲良くしてた先輩だし会えてよかったじゃん」
「それはそうなんだけど···」
「だけど?」
「先輩の出張先がまさかの米沢で、一緒に飲もうって誘われたんだよ···」
「すごい偶然じゃん!地元で先輩にも会えて俺にも会えるなんて純は幸せ者だなー」
「努とは大学で毎日顔合わせてるだろ。面倒が増えるだけだよ」
「珍しく荒れてんなー。こんな機会ないんだから飲みに行けばいいじゃん、ってか俺も行っていい?」
「努は堀内先輩と面識ないだろ」
「それはそうだけど、聞く感じサシで行きたくないんだろ?」
ーこういうところは察しがいい
「まぁ···そんなところ」
「じゃあ決まりだな!バイト行くから詳しい時間分かったらまた連絡するわ」
「はいはい、行ってら」
「またなー」
ー努がいれば大丈夫かな
電話で眠気がどっかにいき、二度寝せず起きることにした。先輩には大学の友達も一緒でよければ土曜行けます、とメッセージを送った。
「運転気をつけてね」
「ちょっとの距離だから大丈夫だよ」
「やっぱりお母さん行こうか?」
「大丈夫だって!」
お母さんの車を借りて努を迎えに行くことにした。免許は1年の夏休みにこっちで取った。帰省する前にふと思い立って髪の毛をブリーチして、教習所で怖いお兄さんに絡まれたことが懐かしい。
家を出て駅に向かう途中、信号待ちで何気なく外を見るとコンビニで煙草を吸う人がいた。
ー浩介だ
そう気づいた瞬間、思わず外から見えないように顔を隠した。青信号になって恐る恐る見返したときには姿が消えていた。
ーただの見間違いだ
ハンドルを強く握りしめた。
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