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「誰かに見られますよ···」
「傘があるから大丈夫」
耳元で優しい声が響いて、氷った心を溶かしていく。
「僕、男ですけどいいんですか···?」
「純は純だろ。性別とか関係なく、俺は純と一緒にいたい」
「夢ですか···これ」
先輩はいきなり僕の両頬をつねった。
「な、何するんですか!」
「ははっ、ちゃんと痛いだろ。こんな嬉しいこと夢にされてたまるか」
「···つねる必要あります···?」
「ほっぺた柔らかいなー」
「もう離してくださいよぉ」
「嫌だ」
そう言うとまたキツく抱き締められた。先輩の体温が、鼓動がはっきりと伝わってくる。
車に戻る頃には雨があがっていた。
「この後は?」
「ちょっと親からお使い頼まれてて。買う物多いんで運ぶの手伝ってもらってもいいですか?」
「うん、いいよ。金子の分もあるからか」
「そうです。食べる量すごくて···」
「昨日も死ぬほど食べてたもんな」
「今日もお腹がすいて目が覚めてました」
「ほんと変なやつ」
「でも努が背中押してくれなかったら先輩に告白できなかったんで···いいやつです」
「だな」
買う物が多すぎて、スーパーでは二手に分かれてリストにあるものを探した。最終的に2人の両手が塞が
るくらいの量になった。
「先に先輩のホテルに向かいますね」
「いや、ここまできたら家に運ぶのも手伝うよ」
「そ、それは申し訳なさすぎます···」
「純の実家も見てみたいし」
「ほんとはそっちが目的だったりして」
「ばれた?」
上杉神社からずっとニコニコしている。
「じゃあ···お願いします」
「了解」
買い物に時間がかかり、家に着いたときには18時を過ぎていた。先輩と荷物を持って玄関に入るとお母さんが待っていた。
「おかえりー。買い物大変だったでしょー」
「うん···こんなに多いと思わなかった」
「あら、どちら様?」
「大学の堀内先輩。たまたま出張で米沢に来てて」
「初めまして、堀内実です」
「初めまして。純の母です。努くーん!ちょっと手伝って!これからご飯なのでよかったら一緒にどうです?」
「ちょっと、お母さん···急にそんな」
「喜んで!ちょうどお腹空いてるので助かります」
「純、それ努くんとキッチンに運んでね」
「はぁ···」
お母さんと先輩は先に家に入り、交代で努が手伝いに来た。
「おかえりー。すげぇ量だな」
「誰のせいだと思ってんだよ」
「そんな怒んなってー。それより先輩とは上手くいったのか?」
「···うん。上手くいきすぎて怖い」
「早速ノロケかよ」
「ち、違うし!」
「お腹すいたから早く運ぶぞ」
「食べることしか頭にないのかよ」
「お祝いしないと、だろ?」
ー実家に先輩がいるなんて去年の僕に言ったら絶対信じないだろうな
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