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後期−1−

「あー···明日から後期か。純は課題終わった?」 バイト終わりの努が家に遊びに来ていた。 「終わってるけど。努は?」 「俺が終わらせてると思う?」 「なんでドヤ顔なんだよ。米沢来る前に終わらせるように言ったじゃん」 「そんなこと言ってたっけ?」 扇風機の前に座って呑気なことを言っている。 「手伝うから終わったら帰れよ」 「そうこなくっちゃ」 「そういえば、あれからどう?堀内先輩と」 課題がなんとか終わり、片付けをしていた努が聞いてきた。 「うん、あれから毎日電話してる」 「へー」 「聞いてきたのに反応薄いな」 「いや、ほんとによかったなって思って」 「努のおかげだよ」 「それなら今度なんか奢って!」 「何でそうなるんだよ」 「楽しみにしてるから!じゃあ、また明日」 そう言って逃げるように帰っていった。 先輩は東京に戻っても仕事が忙しくなかなか会えなかったが、毎日寝る前に電話で話すことができた。 「もしもし」 「もしもし、先輩仕事お疲れ様です」 「んー···今日は疲れた···」 いつにも増して声に元気がない。 「今日もよく頑張りました」 「うん、ありがと。明日から後期だっけ?」 「そうです」 「そっか。何時に終わりそう?」 「えーと、18時には終わります」 「じゃあ明日一緒にご飯食べて、純の部屋に泊まってもいい?」 ー先輩がうちに泊まる!? 「はい?」 驚きのあまり思わず声が裏返ってしまった。 「だめなら今度にするけど」 「だ、だめじゃないですけど···」 「じゃあ決まりだな。純に会えると思ったら明日頑張れるわ」 嬉しい言葉に顔がほころぶ。 「僕も先輩に会えると思ったら頑張れます」 「あー今すぐ抱きしめたい」 先輩は恥ずかしげもなくこういうことを言う。 「明日会ったらできますよ」 「つまんないこと言うなよー」 「だって···こういうの慣れてなくて」 「まぁそういうところが可愛いんだけど」 笑ってる先輩の顔が目に浮かぶ。 「···早く寝て疲れとってくださいね」 「うん、じゃあ明日楽しみにしてる」 「おやすみなさい」 「純、おやすみ」 ー明日どうしよう··· 考えれば考えるほど目が冴えてしまい、結局眠れないまま講義に行くことになった。

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