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聖夜−1−

紅葉も落ち葉になり、一番好きな季節がやってきた。東北出身だから大丈夫だと思っていたが、東京の寒さは東北よりも辛い。 「雪降ってる方が暖かいよなー」 「確かに」 何年かぶりに雪が積もったこともあり、学食は空いていた。 「クリスマスどうすんの?」 「先輩の誕生日が23日だからイブにお祝いする」  「ラブラブですねぇ」 「うるさいなー」 「プレゼントは買ったの?」」 「まだ···。何買っていいかわからなくて」 「今日バイトないから一緒に探しに行く?」 「そうしてくれると助かる」 クリスマスが近いこともあり、駅前のショッピングモールはイルミネーションで飾られていた。 「非リア充には辛いな」 努がぼそっと呟いた。 「プレゼント何がいいかなー」 聞こえないふりをして歩き出した。 「仕事で使えるのとかはどう?ネクタイとか」 「うん、いいかも」 ネクタイといっても種類が多く、決まらないまま30分が過ぎた。 「俺ちょっと別の買い物してきていい?」 「あ、ごめん···。終わったら下のカフェで」 「おっけー」 ネクタイコーナーの隣に置いてあるネクタイピンがが目に入った。テニスラケットの形をしたピンがあり、プレゼント用にラッピングしてもらった。 ー喜んでもらえるといいな カフェに向かう途中で先輩から電話があった。年末ということもあり、仕事が終わらず24日は会えないかもという内容だった。仕方ないと分かっていながら、お祝いできないと思ったらショックが隠せない。 カフェに着くと努が中で待っていた。 「プレゼント買えた?」 「買えたけど···」 「けど?」 「仕事が忙しくて会えないかもって、さっき電話があった」 「年末だしなー。会う日ずらせば?」 「一番最初に祝ってあげたいんだよ」 「先輩は幸せ者だなー」 「どういうこと?」 「だってプレゼント真剣に考えて、一番最初に祝ってくれる人がいてさ」 「僕の方が甘えてばっかりだから、これくらい当然だよ」 「はいはい、ノロケごちそうさまです」 そう言ってメニューを真剣に眺めている。 「買い物付き合ってくれたお礼に奢る」 「そうこなくっちゃ」 食べ終わった後、努がリュックから何かを取り出した。 「ん、これあげる」 「何これ?」 「ちょっと早いけどクリスマスプレゼント」 「え、僕何も買ってないけど」 「いいのいいの、思いつきだから」 中を見ると手袋が入っていた。 「手冷えるって言ってたから」 「ありがとう。ちゃんと使うよ」 「じゃあ帰るか」 努のおかげで落ち込んでた気持ちが軽くなった。

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