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紹介−1−
実さんの仕事納めの日に合わせて、29日に帰省することにした。お母さんには、先輩も一緒に帰るとだけ伝えてある。
上野駅で各々駅弁を買って新幹線に乗り込んだ。
「再会した時を思い出すよ」
微笑みながら缶ビールを開ける。
「ほんとにびっくりしたんですから」
同じように缶ビールを開けて乾杯した。
「でも、純に会えてすごく嬉しかった」
「僕もです」
薬指の指輪が光に反射してキラリと光る。
「本当にいいのか?」
「僕、一人っ子だから···大切な人ができたら親に紹介したいなってずっと思ってたんです」
「そっか。純がゲイだってことは親御さん知ってるのか?」
「知らないです···でも薄々気付いてると思います」
「受け入れてもらえるといいな、俺達のこと」
「そうですね」
福島駅を過ぎると雪景色が広がった。
実さんは気持ちよさそうに寝ている。
ー恋人として戻ってくるなんて
寝顔の写真を撮って待ち受け画面に設定した。
米沢駅に着くとお母さんが迎えに来ていた。
「また遊びに来てくれるなんて!ゆっくりしてってくださいね」
「手料理が忘れられなくてまた来ちゃいました」
「ご馳走用意したからたんと食べてね」
「ありがとうございます!」
お母さんは料理を褒められて上機嫌だった。
家に入るとお父さんがいた。
「純、帰ったのか」
「うん、ただいまー」
「堀内さんもよく来てくれました」
「またお世話になります。これよかったら」
2人で選んで買った日本酒を渡した。
「わざわざいいのに。夕飯の時にでも飲もうか」
「はい」
「部屋に荷物置いてきなさい」
「うん。夕飯できたら教えて」
部屋には努が寝ていた場所に布団が敷かれていた。
「一緒のベッドに寝るのにな」
「ベッド狭いんで、実さんが使ってください」
「嫌だ。一緒に寝る」
ベッドに座って、おいでと手招きしている。
「もーわかりましたよ。その代わり眠れなくても文句言わないでくださいよ」
「うん。寝かせるつもりないし」
ーほんっとこの人は···ズルい
「お酒飲み過ぎないでくださいね」
「それは純のお父さん次第だなー」
「なら僕が飲みます」
「そうしてくれると助かる」
夕飯の時間になり1階に下りると、米沢牛のステーキを焼いていた。
「もうすぐできるから座ってて」
「美味しそうですね!」
「知り合いのお肉屋さんが太鼓判押してくれたから絶対美味しいわよー」
実さんはお父さんの前に、僕はお母さんの向かいに座った。
ーご飯食べたら僕達のこと話そう
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