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食事が終わり話す時がきた。
「お父さんとお母さんに話があるんだけど」
片付けをしていた手を止め、椅子に座り直した。
テーブルの下で実さんの手を握った。
「僕と先輩···いや実さんと付き合ってます」
長い沈黙が続く。お父さんとお母さんを交互に見るが視線が重ならない。
ー何か言わなきゃ
そう思ったとき実さんが口を開いた。
握りしめた手から緊張が伝わってくる。
「あの···俺の親は10才の時に離婚してて。父親の浮気が原因なんですけど···」
初めて聞く話だった。
「泣いてる母親の姿を見て、好きな人と一緒になってもいつか裏切られると思ってて···だから今まで誰とも真剣に向き合ってきませんでした。その方が楽だから···」
言葉を絞り出すように話している。
「でも···純と出会って、初めて誰かと··そして自分と向き合おうって思えたんです」
ー僕と一緒だったんだ
握る手に力が入る。
「だから···交際を認めてください!」
「認めてください!」
2人揃って頭を下げた。
「純のこと宜しくね、実さん」
涙ぐみながらお母さんが言った。
「頼んだぞ、実くん」
お父さんも少し目が潤んでいる。
「はい!絶対幸せになります!」
「なんか結婚の挨拶みたいね」
「確かに」
重い空気が晴れて、緊張が解けた。
実さんがお風呂に入ってるとき、お母さんと指輪の話になった。
「もらったの?」
「うん。クリスマスプレゼントで」
「お父さんもね、結婚する前にクリスマスプレゼントで指輪くれたのよ」
お父さんは恥ずかしいのか聞こえないふりをしている。
「でもサイズが合わなくて、後で直しに行ったの」
「そのくらいにしてくれ」
バツが悪そうに立ち上がって寝室に逃げた。
「指輪を貰えたことより、お父さんと恋人になれたことが嬉しくてねー」
「うん、分かる気がする。あのさ···どうして認めてくれたの?」
「純が選んだ人なんだから反対する理由がないじゃない。お父さんもお母さんも2人の味方だからね」
「うん。ありがとう」
ずっと心のどこかで認めてもらえないんじゃないかと思っていた。ゲイであることを言えなかったのも、結局は自分を信じていなかったからだと気づいた。
風呂上がりの実さんに後ろから抱きついた。
「実さん」
「ん?」
「一緒に来てくれてありがとう」
「うん。でも緊張したなぁー」
「かっこよかったです」
「そうか?もう必死だったよ」
「僕も怖かったです」
「お互い勇気を出してよかったな」
「はい」
狭いベッドから落ちないように、鼓動が聞こえるくらい体をくっつけて眠りについた。
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