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新年−1−
お母さんに同棲の話をしたら、二つ返事でオッケーをもらった。実さんと話し合って新年度から一緒に暮らすことになった。
元旦は全員揃っておせちを食べた後、実さんと上杉神社に初詣に行くことになっていた。
「外寒そうだなー」
何枚も重ね着をして大きい体がさらに大きくなっていた。
「雪降ってる方が寒くないですよ」
努にもらった手袋をはめる。
「そんなの持ってたっけ?」
「努からもらったんです」
実さんはなぜか少しムッとしている。
「どうしたんですか?」
「指輪が隠れるから嫌だ」
「そんなこと言われても···」
「こうすれば暖かいだろ」
そう言って手を繋いだままアウターのポケットに入れた。じんわりと温かくて湯たんぽみたいだ。
「指輪見えないですけど」
「これでいいの。ほら行こう」
上杉神社は深い雪に覆われて、夏来たときとはまるで景色が変わっていた。天気がいいこともあり、光を反射して眩しかった。
「おみくじ引いてみるか」
「いいですね」
いっせーのでおみくじを開くと実さんは末吉、僕は中吉だった。
「なんか中途半端ですね···」
「ま、伸びしろがあるってことだよ」
実さんは終始笑顔だった。
お参りを済ませて車に向かっていると、努から電話がかかってきた。
「純、あけおめー」
「あけおめー」
「堀内先輩も一緒?」
「うん。初詣して帰るとこ」
「そかそか。親御さんは許してくれたのか?」
「なんかすんなり許してくれたよ」
「へーよかったじゃん」
「うん。ほんとによかった」
「あんまり長いと先輩に怒られそうだから切るわ」
「わかった。じゃあまた大学で」
「じゃあなー」
電話を切ると実さんが後ろから抱きついてきた。
「金子か?」
「そうです」
「友達なのは分かってるけど嫉妬する」
どんな顔して言ってるのか気になり振り向いた。
「意外とヤキモチ焼きですね」
右頬にキスをした。
「そうだよ」
今度は左頬にキスをした。
「そんな実さんが可愛くて好きです」
唇を塞がれた。
「俺は可愛くなんかないよ」
「可愛いですよ。可愛すぎて他の人に見られたくないです」
「純にしか見せないよ。これからもずっと」
ー幸せすぎて怖い
家に帰ると、お父さんとお母さんがパソコンに向かって何か話していた。
「何してんの?」
「2人が住む家を探そうと思って」
「気が早いなぁ」
「何言ってるの!新年度は引っ越しシーズンだから早く決めないと取られちゃうじゃない」
「確かにそうですね!」
実さんもパソコンを覗き込む。
ここがいい、いやこっちの方がいいと仲良く話してる姿は本当の家族のようだった。
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