30 / 61

−3−

物件探しは、2人の中間地点である池袋周辺で、それぞれ条件に合った候補をいくつか持ち寄った。実さんは通勤に便利という理由から、駅から徒歩5分圏内の部屋が多く、僕はスーパーや商店街から近い部屋を軸に選んだ。 「うーん···なかなか決まらないな」 「実さんのは家賃が高いし、僕のは駅から遠いし」 「まぁ徒歩10分圏内までなら譲歩する」 「その条件でもう一回探してみますか?」 「そうしよっか」 パソコンの前でにらめっこすること2時間、2人とも力尽きて寝っ転がった。 「今度不動産屋で聞いてみよう」 「そうですね」 「母さんにも報告しないと」 「いつ挨拶しに行きますか?」 「来週の土曜とかどう?」 「分かりました。空けておきます」 「うん。ありがとう」 ー実さんはお母さん似なのかな 「実さんのお母さんってどんな人ですか?」 実さんの横顔を見ながら聞いてみた。 「女手一つで俺と妹を育てたから、強い人だよ」 「妹さんは今高校生ですか?」 「そう、高2かな」 「僕は一人っ子だから兄妹が羨ましいです」 「まぁある意味、純は弟みたいなもんだけど」 「弟ってなんですか」 少しムッとして背を向けた。 「嘘だよ。純は俺の大切な恋人」 そう言って実さんは首筋にキスをした。 振り向いて柔らかい唇を重ねた。 新年が明けて初めての大学でいつものように学食で努を待っていた。 「お待たせ!」 走ってきたのか息が上がっている。 「僕もさっき来たとこ」 「飯買ってくる」 戻ってきた努は大量の袋を持っていた。 「よくそんな食べて太らないよな」 「動いてるからじゃね。そういえば、先輩と一緒に住むって話どうなってる?」 「とりあえず、今週の土曜に実さんのお母さんに会って一緒に住んでもいいか許可もらってくる」 「まじかー。恋人の親とかめっちゃ緊張する」 「会うのは僕なんだけど」 「確かに」 そう言ってものすごいスピードで昼飯を平らげた。 「ま、そんなに心配しなくても純は気に入られるから大丈夫」 「適当なこと言って···」 「午後の講義始まるから、そろそろ行こう」 「マイペースだなぁ」 「褒めてる?」 「褒めてない!」 先を急ぐ努を追いかけた。

ともだちにシェアしよう!