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引っ越し前日、努が荷造りの手伝いに来てくれた。
「ほんとに引っ越すんだな」
段ボールの山を見て努が言った。
「まだ実感なくてふわふわしてる」
「だよなー」
努のおかげで日付をまたぐ前に荷造りが終わった。
「お疲れ様。今日はありがとう」
冷やしておいた缶ビールを渡した。
「お疲れ。大したことしてないけど」
「今までのお礼も兼ねて、ね」
「うん。乾杯」
2年間お世話になった部屋は、2年前に引っ越してきた時の状態に戻った。
「にしても、夏から色々ありすぎたな」
「ほんと、濃すぎだよ」
「新居も落ち着いたら遊びに行くから」
「うん、待ってる」
引っ越し当日、実さんは午前中に、僕は午後に引っ越し業者が来て荷物を運び出した。実さんの車で新居へと向かった。
「なんか夢みたいです」
「まだそんなこと言ってるのか」
「だってこれから毎日実さんに会えるなんて」
「嬉しい?」
「嬉しすぎます」
信号が赤に変わり、キスされた。
「可愛すぎ」
「褒めても何も出ませんよ」
「ん」
実さんが左頬を指差している。
「甘えん坊ですね」
指定された場所にキスをした。
「よくできました」
新居に着くと、引っ越し業者のトラックが見えた。
どこに何を置くかを伝えて運んでもらった。
「本日以上になります」
さすがプロといった動きであっという間に作業が終わった。
「ありがとうございました」
「これで失礼します」
業者さんが帰った後、家具屋で購入したソファとベッドも届いた。
「さ、荷解き始めるか」
「はい」
とりあえず必要最低限のものだけ出して、残りは明日に回すことにした。リビングと寝室は実さんが、キッチンと風呂場は僕が担当した。2時間ほど作業して夕飯の時間になった。
「夕飯どうします?」
「外出るのも面倒だからデリバリーにするか」
中腰でずっと動いていたからか、実さんは腰をさすっていた。
「そうしますか。何がいいですか?」
「麺系がいいかも」
「この油そばとかどうですか?」
「いいね、それにしよう」
油そばを食べ終え、実さんの腰に湿布を貼り作業を再開した。なんとか今日の分は片付けし終わった。
「疲れた···」
「疲れましたね···。汗もかいたし先にお風呂入りますね」
立ち上がろうとすると、腕を掴まれた。
「一緒に入る」
「···嫌です」
「なんで?」
「恥ずかしいです」
「お互いの裸は見てるだろ」
「明るさが違います···」
「ほら」
左手を出されて反射的に繋いでしまった。
「行こう」
「···はい」
湯船に浸かると疲れが溶けた。
「まだ恥ずかしい?」
後ろから優しい声がする。
「聞かないでください」
鏡を見ると、熱さのせいか恥ずかしさのせいか耳まで真っ赤だ。
「純、ここ弱いよな」
首筋に実さんの唇が触れる度、感覚が研ぎ澄まされていく。
「···実さんだけずるいです」
「俺の弱いとこも探して」
そう言いながら、実さんの手が前に伸びて僕の弱いとこに何度も触れた。
ー意地悪
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