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家族−1−

新居に引っ越してから最初の土曜日、インターホンが鳴った。純はまだ寝ていたので、起こさないようにそっと起き上がってモニターを見た。 「はい」 「宅配便です」 「今開けます」 純の実家から大きなダンボールいっぱいに引っ越し祝いとして米や牛肉、野菜など大量の食材が届いた。すぐに純のお母さんに電話した。 「もしもし」 「あ、実です。引っ越し祝い届きました。ありがとうございます!」 「無事届いたみたいでよかった!いいのよお礼なんて!」 「純と一緒に美味しく食べてね。あれ、純は?」 「まだ寝てます」 「もう本当にあの子は···。一緒に生活して実さんに迷惑かけてませんか?」 「迷惑なんてとんでもないです。お母さんに似て料理上手で、胃袋つかまれてます」 「それならいいんだけどね。今度遊びに行くから」 「はい!お待ちしてます」 電話を切ると純が起きてきた。 「おはよ」 「おはようございます。電話誰ですか?」 「純のお母さん。引っ越し祝いで食材送ってくれたから」 まだ眠そうな目をこすりながら、ダンボールの食材を冷蔵庫に入れていく。 「2人だと食べ切れないんで、努呼びましょう」 「そうだな」 純を手伝っていると、またインターホンが鳴った。 モニターを見ると茜だった。 「何しに来た?」 「引っ越し祝い持ってきた」 そう言って画面に映るように袋を持ち上げた。 鍵を開けると遠慮なしに部屋の中に入っていった。 「純さん久しぶり!」 「茜ちゃん、いらっしゃい」 「お邪魔します。これ宇都宮の冷凍餃子」 ざっと見ても20人分はある。 「来るなら連絡しろよ」 「連絡したら断られそうだし」 純は俺と茜のやりとりを見て笑ってる。 「服買いたいからお兄ちゃんと純さん付き合って」 「ほんとはそっちが目的だろ」 「さぁねー」 そう言うと自分の家みたいにソファに座ってテレビを見始めた。 「ごめんな、純」 「全然大丈夫です。朝食準備するんで、顔洗ってきてください」 「うん」 「新婚かよ」 茜がつっこんだ。 顔を洗ってキッチンに戻ると、純と一緒に茜も朝食を作っていた。 「お兄ちゃん、もうちょっとでできるから」 「ん、了解」 「純さん料理上手くていいなー。あたしもこんな彼氏ほしいー」 純は褒められて嬉しそうにしている。 「茜ちゃん、これ運んでくれる?」 「はーい」 ー本当の家族みたいだ 2人の姿を見てそう思った。

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