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旅行−1−
ゲリラ豪雨と雷が鳴り響いた梅雨が終わり、猛暑がやってきた。実さんと相談して、夏休みに旅行に行くことになったが旅行先はまだ決まっていない。
「山もいいし海もいいよなー」
実さんはソファに座って、僕は膝枕してもらってそれぞれ情報収集していた。
「山なら見慣れてるし海にしませんか?」
「そうするか」
そう言って実さんは僕のアイスにかじりついた。
「もー···自分のあるじゃないですか!」
「純のが食べたいの」
口についたアイスを人差し指で取ろうとするとパクっと指を食べられた。指についたアイスが温かい口の中で混ざり合って溶けていく。
「鎌倉観光して箱根で旅館に泊まるのはどう?海もあるし山もあるし」
何事もなかったように、実さんが旅館のサイトを見せてくれた。部屋に露天風呂がついている豪華な旅館だった。
「高そうですけど···」
「近場だし旅館は奮発しよう」
「分かりました」
「じゃあ予約するよ」
そう言うと実さんの顔が近づいてキスされた。
唇に残ったバニラの香りはただひたすら甘かった。
旅行当日、天気は快晴で絶好の旅行日和だった。
昼は鎌倉で食べることにして、9時過ぎに家を出た。
「実さん、飴いりますか?」
しばらく走ると、純が鞄から袋を取り出した。
「うん、ありがとう」
ー夏合宿思い出すな
「合宿思い出しますね」
思ったことを純に言われて思わず笑ってしまった。
「俺も同じこと考えてた」
「一緒に暮らしてるから考え方が似てきたのかも」
そう言って飴を食べさせてくれた。
「そうかもな」
飴はあの時と同じレモン味だった。
運転すること2時間、鎌倉に到着した。
平日だったが観光客でどこも賑わっていて、空いてる駐車場を探すのに苦労した。
鶴岡八幡宮でお参りした後、小町通りで食べ歩きをした。唐揚げや練り物、フルーツサンドにソフトクリームと気になるものは片っ端から食べた。
「もうお腹いっぱいです···」
純は苦しそうにお腹をさすっている。
「昼も食べたし旅館に向かおうか」
「分かりました」
車から見える海は穏やかで綺麗だった。
窓を開けると爽やかな潮風の匂いがした。
「綺麗ですね!」
海を見てはしゃぐ純の姿に笑みがこぼれた。
下りられるところがないか探していると、目の前に人があまりいない海水浴場が現れた。
「まだ時間あるし、ちょっと寄ろうか」
「はい」
道路を挟んだところにある駐車場に車を停めて、砂の上に腰掛けた。波の音が心地いい。
「なんか落ち着きますね」
そう言うと純は俺の肩に頭を預けた。
少しだけ汗ばんだ肌が服の上から透けている。
「実さん」
「ん?」
「今日は飲み過ぎないでください」
「なんで?」
「だって···飲み過ぎたらできません」
意外な答えが返ってきてドキッとした。
「うん。ほどほどにする」
「約束ですよ」
「約束する」
繋いだ手が熱かった。
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