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「そうなんだね···」 鼓動が早くなるのが嫌でも分かる。 「俺、高校の時に男と付き合ってるのがバレてハブられてたんです。大学に入っても周りにカミングアウトするのが怖くて···。だから純さんと彼氏さんの関係がすごく羨ましいです」 「うん。僕も初めて友達とか親に言うとき、すごく怖かったよ」 おかわりを渡すと、食べずにじっとしていた。 「こういう話できる人、周りにいなくて···」 賢人くんの声が震えていた。 「僕でよければ話聞くからね」 「···ありがとうございます」 そう言うと、おかわりを綺麗に平らげた。 「明日行きたいところがあるんですけど」 賢人くんはシャワーを浴びた後で、タンクトップにパンツとラフな格好だった。細いながらも綺麗な筋肉がついていた。 「どこ行きたいの?」 極力テレビに集中して見ないようにした。 「ゲイバーに行きたいです」 「ちょっと実さんに確認してもいい?」 「分かりました」 その日の夜、実さんから電話があった。 でも、余計な心配をかけて仕事に支障が出たら申し訳ないと思い、賢人くんとゲイバーに行くことは伝えなかった。 博多も東京に負けず劣らず暑かった。吹き出た汗がYシャツに染みを作っていた。ホテルにチェックインをして、すぐにシャワーを浴びた。 寝る前に純に電話したら、金子に頼まれて従兄弟を泊めているということだった。金子は純の大切な友達だから断るに断れなかったんだろうなと思って、何も心配することなく寝た。 次の日、取引先と居酒屋で飲んでとんこつラーメンで〆た後、電話が鳴った。 「もしもし」 「楓だけど」 やけに声が小さくてスピーカーに切り替えた。 「おー久しぶり!」 「そんなこと言ってる場合じゃないんだけど!」 「どうした?」 「峯岸くんと付き合ってるんだよね?」 「あー、うん」 よく聞こえなかったが、やっぱり私の勘が当たってた、とか推せる、とか何とかボソボソ呟いていた。 「で、どうした?」 「私、今東京に仕事で来てるんだけど···」 「うん」 「峯岸くんと金髪の男の子がゲイバーにいるの」 一瞬言われたことが分からず反応できなかった。 「聞こえてる?おーい」 すぐに電話を切り、純に電話をかけた。 スマホを持つ手が震えている。 ーお願いだから出てくれ 願いも虚しく電話は繋がらなかった。

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