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「塚本さん、いい人ですね」 「うん、いつも助けてもらってる」 居酒屋からの帰り道、風が冷たくて実さんのポケットに手を入れて歩いた。 「僕達のことも受け入れてくれたし」 「そうだな」 塚本さんは実さんの恋人として接してくれた。 「塚本さんみたいな人が増えたら、もっと生きやすいのに」 「もう塚本さんの話は終わり」 そう言って僕のほっぺたにキスした。 家に着くと、お母さんから電話があった。 「もしもし」 「純、今大丈夫?」 「うん」 「あれから実さんの様子どう?」 いつの間にお母さんも下の名前で呼んでいる。 「仕事にも復帰したし、今のところ大丈夫」 「ちょっと実さんに代われる?」 「わかった」 電話を実さんに渡した。 しばらく話して電話を切った。 「母さんの四十九日に純のお母さん来たいって」 「そうですか」 「久しぶりに会いたいし快諾したよ」 「わかりました」 「自分の息子みたいに心配してくれてた」 そう言うと実さんは僕の手を握った。 「もう家族みたいなもんですから」 実さんの手を握り返した。 「純、あのさ···俺達、結婚しよう」 思いがけない言葉に驚きすぎて頭が追いつかない。 「だめか?」 不安げに見つめている。 「だめ···じゃないです」 「そっか」 ホッとした表情で指輪にキスをした。 「でも···」 「でも?」 「日本には同性婚の制度がないですよね」 「うん、でも家族とかお世話になってる人には純と夫夫になったって伝えたいんだ。母さんが死んで、後悔しないように生きようって思ってさ」 実さんは笑いながら泣いていた。指で涙を拭いて、おでこにキスをした。 「実さん、僕幸せです」 「俺も幸せ」 繋いだ手から温もりが広がる。 「母さんの四十九日でみんなに伝えよう」 「はい」 ーお母さんは絶対大喜びだろうな 喜ぶお母さんの姿を想像して笑ってしまった。 「そうと決まれば、結婚式もしないと」 「展開が早くてついていけません···」 「ははっ、確かにそうだ」 「でも、ずっと結婚式に憧れてました」 海が見える真っ白なチャペルで、みんなから祝福される光景を何かの映画で見てから、ずっと夢見ていた。 「なら尚更やらないと」 2人の唇が重なる。 「楽しみです」 「うん」 指輪に2人の姿が映った。

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