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結婚式当日、僕達を祝福するように空は晴れ渡っていた。式は午後からだが、衣装やヘアメイクのために早めに会場に向かった。
お互いの姿が見えないように、別室で準備を進めた。髪が整えられ、目の下のくまや肌が荒れているところを化粧で隠すと鏡に映る自分は別人みたいだった。
「純、よく似合ってる」
後から来たお母さんが僕の姿を見て涙ぐんでいる。
お父さんもそれにつられて泣きそうだ。
「メイク崩れるから泣かないで」
そう言って2人を抱き締めた。
「お父さん、お母さん今まで育ててくれてありがとう。これからも迷惑かけるかもしれないけど、よろしくね」
2人は何度も頷いた。
しばらくして扉をノックする音が聞こえた。
「はい」
「純、入ってもいい?」
実さんの声だ。
「大丈夫です」
タキシードを着た実さんは絵本の中から飛び出してきた王子様みたいだった。
「純、後でね」
お父さんとお母さんは実さんと少し言葉を交わして部屋を出た。
「どう?」
そう言うとぐるっと回った。
「かっこよすぎます」
実さんは隣に座って手を繋いだ。
「純もすごく似合ってるよ」
そう言うと左手の指輪にキスをした。
嬉しさと恥ずかしさで鼓動が高鳴る。
「今さら聞くことじゃないんだけどさ···」
実さんは跪いて僕を見上げた。
「本当に俺でいいの?」
「実さんがいいんです」
実さんの目をまっすぐ見て答えた。
「よかった」
そう言っておでこにキスをした。
実さんは先に式場に入って、僕はお母さんと一緒に入場する扉が開くのを待っていた。深呼吸をして呼吸を整える。
「緊張してる?」
「うん。···でも幸せ」
「そう、それならよかった」
お母さんの顔を見ると泣いちゃいそうで、ずっと扉を見ていた。
「そろそろ入場です」
スタッフさんの声かけに一歩踏み出した。
大きな扉が開くと、真っ青な海を背に大切な人たちが拍手で迎えてくれた。茜ちゃんはお義母さんの遺影を抱えて、隣にいるお義父さんと一緒に泣いていた。楓先輩と努は満面の笑みで写真を撮っている。
お母さんと歩幅を合わせて、ゆっくりと、一歩ずつ、実さんのもとへと歩いていく。近づく度に今まで過ごした思い出が色づき、真っ白なチャペルを鮮やかに染めていく。
「それでは誓いのキスを」
実さんと向かい合い、唇が重なった。
今までで一番優しいキスだった。
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