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第5話
side悠
「お待たせいたしました」
厨房から戻ってきた彼の手には、美味しそうなクレームブリュレがあった。
(っ……美味しそう…)
「ご感想をいただけると嬉しいのですが…」
「悠、食べてみよ」
「うん…」
クレームブリュレの上に乗っている飴の部分を少し崩し、中のクリームと一緒に口へ運ぶ。
「「…美味しい…」」
千世と2人で一言そう言った。
「ありがとうございます」
「あの、とても美味しいです。飴の焦げている部分が俺は好きです」
改めて千世が感想を言うと彼がホッとした顔を浮かべた。
(うん、とても美味しい…けど、なんか足りない気がする…)
そんなことを考えていると彼が千世からこちらへ視線を移して
「なにか、思われたことがありますか?」
と聞いてきた。
「あ…えと…」
彼はじっと俺を見つめてくる。
(綺麗な顔でそんなに見つめられたら、穴が空く…)
恥ずかしくなって斜めを下を向いてしまう。
「…とても美味しいです…でも…」
「でも?」
「…少し何か足りない気がします」
下へ行った視線を彼へと戻しそう告げる。
「足りない、ですか…」
「あ、えと、ほんとにとても美味しいです。でも、なにかバニラエッセンス以外にも香るものが欲しくて…」
「香るもの、ですか…」
彼は俺の言葉に考え込んだ。
「その、香るものって例えば何が欲しいの?」
そう千世から問われた。
「んー、はちみつとか…「それだ」
…ほぇ?」
食い気味に言われ変な声が出てしまった。
「貴重なご意見ありがとうございます」
と、綺麗な顔で物凄く見惚れる笑顔で言われてしまった。
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