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緊急配信!? クイーン・ビー・エクスプレス【3】
「そもそも勇輝くんは、『男の娘』っていうんに興味はあったん?」
「いや、別に無かったよ。もしあったらねぇ、とっくに試してる。そういう意味では、俺らの間ではセックスのシチュエーションって自由だと思ってるんだよね。誰にも迷惑かけないし、お互いの合意の元で自分達が気持ちよくなれるなら、何でも試してみたいっていうかさ」
「女装が似合うだろうとは思ってたけど、そういう願望があるかもって気付いてれば、俺の方からも提案したかもしれないよね」
「そしたら、いきなり急にやってみたなったん? それってなんで?」
「そうだなぁ...たぶん最初のきっかけは、写真集の撮影だったと思うんだ。女装ってわけじゃないんだけど、女物の着物羽織って本格的に縛られてるシーンとかあるのね。いわゆる緊縛プレイってやつ? それ撮影してる時に、家でたまにやってる『シチュエーションプレイ』とは違う気持ちになったんだ。明らかに別人になってるってわけじゃなく、でも普段の俺とは違う俺に対して充彦が本気で欲情してて...なんか、その事に嫉妬混じりの変な興奮覚えたんだ。ちょっとモヤモヤしてるような、曖昧な感覚なんだけどね」
「ん? 難しいな...たとえどんな姿でも、みっちゃんが勇輝さんに発情するのは......」
「発情言うな」
「えーっ!? 大差ないじゃないですかぁ...勇輝さんに対してみっちゃんが『欲情』するのは当たり前なんじゃないんですか?」
「だから俺もね、そこの気持ちがあやふやだったんだよ。何にモヤモヤしてるのか、イマイチ自分でもわかんないっつうのかなぁ......」
「そっからなんで女装って考えになったん?」
「それはもう、お前とイベントの衣装探しに行ったせいだって。女装男子の為のコスプレショップ行ったじゃない?」
「えっ!? そんな店があんの? ただのコスプレショップじゃなくて、女装専門?」
「あったんだよ! まあ、だからあっさり俺のサイズでもこんな服が買えたわけだし」
「ああ、そっか。なるほど......」
「色々あったんだよ。宇宙に戦いに行きそうなスーツとか、パンツ見えそうなフリフリの制服とか」
「一応、一通り試してんな? んで、勇輝くんの男らしい体型を一番エエ感じで隠せるし、みっちゃんとか航生くんの衣装とも合うからってこのちょっとクラシックなメイド風のワンピになってん。せえけど、どれも結構似合うててんで。やっぱり勇輝くんてほんまもんのベッピンさんやなぁって、改めて思うたもん」
「実は俺も思ったの、『体型さえカバーできりゃ、案外悪くないよな』って。そしたらなんかまた、胸の中にモヤモヤしたもんが出てきてさ......」
「その時には、モヤモヤの正体ってわかってたの? ほら、部屋に戻ってからとか、別に何かに苛ついてるって素振り無かったじゃない?」
「逆に、わかったから苛ついてなかったのかも」
「じゃあ、そのモヤモヤって何だったんですか?」
「充彦に対しての疑心暗鬼? 見えない何かへの嫉妬って言う方が正しいのかな? 女物の着物羽織ってた時にいつもより興奮してたのは俺にだったのか、緊縛された姿にだったのか...それとも、女物の着物を羽織ってたからなのかって部分に引っ掛かってたんだって気付いたんだ」
「聞いてる立場からしてみたら、大好きな勇輝さんが、普段とは違うエロさを醸し出す姿を見せてたからだとしか思えないんですけど?」
「今ならわかるって...でもさ、あの時は『女の姿の俺とだったら、どんな反応するんだろう?』って事しか考えられなくなったんだよ。俺だから当たり前に欲情するか、俺なのに女の姿だからって萎えるのか、女の姿だからこそいつもより興奮するのか...そこをどうしても知りたくなった」
「なるほどな...そんな風に考えてたとこで俺が『ラブホ行きたいけど、男二人じゃ入れないかも』なんて言い出したわけだ?」
「そうそう。最初は、東京に戻って落ち着いたら試してみようと思ってたの。そしたら充彦がそんな風に言うからさ、俺が改めて『今日は女装エッチ試してみたいんですけど、いいですかぁ?』とか言わなくてもチャンスが転がり込んできた!って」
「......で、どうやった? 女の子の格好でみっちゃんとエッチしてみて...勇輝くんの中でなんか変わった? 結局モヤモヤとかって解消できたん?」
「......できた。もうね、ほんと今更なんだけど...充彦がどんなに俺の事大切にしてくれてて、俺がどんなに充彦の事が好きなのか、すっげえわかった」
「うっわぁ、ほんと今更~」
「そんなん改めて感じるような事? それ、誰でもわかってんで?」
「違うんだよなぁ...みんなが知ってるレベルの好きとか大切っていうんじゃないんだ...俺の本当の居場所だって実感したんだよ...充彦の隣にいる事が何より俺にとっての幸せで、俺のいる場所は...ここにしか無いんだって......」
「勇輝......?」
「あのね、俺大事な話があるから、まずはとりあえず充彦から改めてみんなにちゃんと挨拶しなよ。んでその後で、俺にも少しだけ...時間ください」
「あ...れ? な、なんかちょっと...予定と違う展開なんやけど...ま、まあええか。そしたら、みんな改めて本人の口から『引退』についてとか、その後の事とかちゃんと聞きたいと思うんで、ここでみっちゃんから挨拶してもらいたいと思います」
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