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俺、今から浮気します【5】

  自分のプライドを必死で抑え込んだ瑠威は、それだけで疲れ果てたようにグッタリとしてしまった。 俺はその体に手を添えてやり少しだけ起こすと、ただのボロ布になってしまったシャツをゆっくりと剥ぎ取っていく。 露になる上半身。 スタジオで見た時から思ってはいたが、綺麗な体をしている。 そう...ちゃんと鍛え上げられた、本当に綺麗な体。 筋肉量にすれば、充彦と俺の中間というところか。 無駄な肉が削ぎ落とされたその腹には見事なシックスパックが浮かび、肩から上腕にはしっかりとした盛り上がりがある。 全体には細身なのに、その隆々とした筋肉と広い肩幅でまったく貧弱さは感じさせない。 これならば纏う空気次第で、学生の持つ無邪気でいながら荒々しく棘のある雰囲気も、大人の男らしいしなやかでしっとりとした色気も出せるようになるだろう。 もっとも、今のままではただの生意気で安っぽい読モ崩れのホストにしか見えないが。 「下も脱がしてやるから、ちょっとだけ腰上げな」 俺の言葉にやはり少しだけ躊躇う素振りを見せながらも、瑠威はノロノロと素直にそれに従った。 入らない力を、それでも無理矢理入れながら少しだけ腰を上げる。 穿いていたデニムと下着を合わせてずり下ろせば、思いの外しっかりとした下生えが現れた。 他の場所はそれほど極端に体毛が濃いわけではないのに、そこだけは少し羨ましくなるほどのボリュームを見せている。 恐怖からか屈辱のせいなのか、チンポはかわいそうなほど縮み上がり、黒々と艶やかな下生えの陰に隠れようとしていた。 しまったな...さすがにちょっとビビらせ過ぎたか。 ずらした物を瑠威の脚から抜き去ると、俺も急いで着ていた物を全部脱いで隣にコロンと寝転んだ。 瑠威の首下に腕を通すと、腕枕でもするようにそっとその頭を胸元に抱き寄せる。 「うん、大丈夫だから...もう怖い事はしない...そうやってちゃんとイイ子にしてたら...な?」 抱き締めた体からは、まだトクトクとひどく早い鼓動が伝わってくる。 それが落ち着くまで俺はただ頭を撫で、背中をさすりながら額に繰り返し唇を押し付けた。 伝わってくる鼓動が小さくなるまでひたすら待ち、今度は優しく瑠威の上半身を起こす。 「いつも相手役にするみたいに、ちょっと俺にキスしてみ?」 「えっ? あ、あの...いや...あんまり...俺からキスとか...するシーン...無い...」 あれ? ゲイビってそんなもんなのか? さっきチラッと見せてもらったDVDは、一応二人は恋人同士って設定だった。 まあ、さっきのはどっちかって言うとツンデレの瑠威に対してデレデレの相手役がなかば強引にキスもセックスも誘い込むって内容ではあったけど、何も毎度毎度あんな設定ってわけじゃないだろ。 瑠威に関しては...いつもあんな風なのか? それとも、もしかして...キスすらしないような内容のビデオに出てる事が多い? 「うん、そっか、わかった。じゃあ、相手役じゃなくていいよ。女としてる時思い出してみ。女とだったらちゃんとキスすんだろ?」 何故か俺の言葉に一瞬目を逸らし、唇を噛む瑠威。 それでもコクンと頷くと、恐る恐るといった風に俺の頬に手を添えてきた。 そのままいきなり真正面からブチュッと唇を合わせると、驚く間もなく強引に舌を挿し入れてきてひたすら口内を舐め回す。 なるほど、コイツのセックスの印象そのままだ。 セックスを覚えたばかりでいきがってる、大人ぶった高校生のような勢いだけの物。 いやそれどころか、知識ばかりを付けて本当は経験などまるで無い中学生みたいだと言う方が正しいかもしれない。 俺は瑠威の髪をクルリと指に巻き付け、ツンツンと引っ張る。 瑠威は体をまたビクつかせ、震えながらゆっくりと顔を離した。 「お前、それ全然ダメ。キスってのは、大事な愛撫の一つなんだぞ。キスする事でお互いの気持ちを確認して、そこから盛り上げるんだ。ただ自分の欲を押し付けて、それをぶつけるだけじゃなく、ちゃんと相手の事考えなきゃ。そうだなぁ......あ、充彦!」 すぐ近くに椅子を引っ張ってきて、そこに座りカメラを構えている充彦を手招く。 言葉にしないままカメラを指を差す充彦に向かって首を横に振ると、『わかった』とでも言うように小さく頷き、そのカメラを椅子の上に置いて俺のそばに来た。 「ちょっとここ、座って」 「ん? 何?」 ベッドに上がりながら俺達を面白そうに交互に見る充彦に、俺は笑いかける。 「充彦、キスして?」 「おうっ」 チュッと音をさせ、ほんの少しだけ軽く唇を触れ合わせる。 『そうじゃないだろう...』と脱力する俺の目の端に、やたらとニヤニヤしている充彦の顔が映った。 あ...コイツ、俺のしたい事わかってて...わざとかよ... 「子猫ちゃんに躾するなら、まずは自分がお手本見せてあげたらどうかな、勇輝センセ? おねだりはちゃ~んと可愛く、イヤらしくね?」 ...まあね、目の前でこんなことしてる段階でずいぶん嫌な思いはさせてるはずだし、ここは素直に充彦の意向に従うとしよう。 「ねえ...充彦、キスして?」 「どんな?」 「すっげえエロくて、すっげえ気持ちいい、ドロドロになって腰が砕けるようなキス...して?」 「かしこまりました」 クスッと笑い、充彦が俺の腕を強く引く。 「要は子猫ちゃんに見せつけてやればいいんだな?」 「違うってば...ちゃんとしたキスは、見てるだけでもドキドキムラムラできるって教えたいの!」 「だからな、それを『見せつける』って言うんだよ」 そう言うと、瑠威のちょうど目の前に俺達の顔が来るようにしながら、充彦は俺の唇を舌先でゆっくりとなぞり始めた。

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