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俺、今から浮気します【8】

  充彦が用意してくれていたタオルで瑠威の腹の上と自分の手を綺麗に拭う。 一先ず全部出してしまった瑠威は全身の力をクタリと抜き、右腕で顔を覆っていた。 「なに、俺にイカされたのが悔しいの?」 俺の問いに、瑠威は小さく首を横に振る。 「んじゃどうした? どっか痛い?」 「そうじゃ...ない...驚いてるだけ...俺、男にイカされたの...初めてだから...」 「初めてって...たかが手コキだろ? 撮影の時はどうしてたんだよ?」 「いっつも、相手が顔射か腹出ししてから自分で扱いてた。最後まで射精すらできない事もあったし...」 「......うん、そっか。んで、俺の手でイッてみてどうよ? 良かった? それともやっぱり、男相手じゃ気持ち悪い?」 瑠威は少しだけ腕を下ろして俺を見る。 ようやく現れたその目は、どこか拗ねているような甘えているような、なんとも可愛らしい物だった。 ......まあ、本人にそんな事を言うと、本格的に拗ねてしまいかねないから、とりあえず今は『可愛い』の言葉は俺の胸にしまっておく。 「気持ち悪くは...なかった。つうか...良かった...です...すげえ...はい...」 「そう? そりゃあ良かった。んじゃゆっくり先に進もうか。怠いかもしれないけど、もっかい膝ちゃんと抱えて。うん、そう...そんな感じ。できるだけ今は体の力抜いてろよ」 改めてケツを少し上げた状態で膝を抱えさせる。 少しでも楽になるようにと、腰の下には畳んだ毛布を挿し込んでやった。 「痛かったら痛いって言っていいんだからな。苦しいとか辛いとか、ちゃんと言うんだぞ。お前に嫌な思いをさせたいわけじゃないんだから」 改めてローションをたっぷりと垂らし、またアナルの周囲をそっと撫でた。 指先に少しだけ力を入れてみると、そこは思っていたよりもずっと簡単にそれを飲み込む。 「どう? 痛くないか?」 「あ...うん...それくらいなら別に...」 ああ、そうか。 気持ち良くないってだけで、ここを拓かれる事にはそれなりに慣れているんだったな。 試しに関節一つ分をクプッと押し込んでみる。 その間も、空いた指で縁を愛撫することは止めない。 「まだ大丈夫そうか?」 指を抜き、そこが元の形に戻る前に直接ローションを注ぎ入れる。 粘膜に直接感じたローションが少し冷たかったのか、眉頭がキュッと内に寄った。 それには構わず、クチクチと再び関節を飲ませて中を広げにかかる。 細かく揺らしながら、ゆっくりとした出し入れを繰り返し、少しずつそれを奥へと進ませた。 勿論、瑠威の表情も体の反応も、たとえ吐息の一つですらも見逃すつもりはない。 辛そうな気配が僅かでも感じられれば動きを止めるつもりでいたのだが、『気持ちいい』と思えないだけで、『挿入』自体が苦痛なわけではないようだ。 結局、本人が上手く体の力を抜いている事もあって、いつの間にか中指は根元までしっかりと収まってしまった。 「瑠威、イイじゃん。力の抜き方上手だよ」 「だって...これだけでもできないと...体余計に傷つけるし」 「うん、そうだな、わかってんじゃん。でも、どれだけ試してもそれができない人も一杯いるんだよ。お前は、とりあえず第一段階はクリアできてんだから大丈夫。頑張って気持ちよくなろうな」 もうそろそろ中だけでなく縁も広げようと、グチグチと指の付け根の周りを動かしながらそっとタマの裏側に触れる。 チンポ自体は、もう用事は終わったとばかりにまた小さくなってモジャ毛の中に隠れようとしていた。 「結構楽に動かせてるんだけどなぁ...もう一本入れても大丈夫そう? 自分の感覚だとどんな感じ? あ、まだダメならダメでいい、無理はしなくていいから。いくらでも時間はあるんだし」 「いや...たぶんもう...大丈夫...」 「そう? うん、わかった」 ゆっくりと中指を引き抜くと、更にローションを足してから今度は隣に薬指を添えて指先を押し込んでみた。 入り口を広げるようにしながら、指の隙間から中へもローションを継ぎ足す。 やはり元々慣れた行為だからか、きつく感じたのは最初だけで、後は特に拒絶を見せる事もなく徐々に、でも確実に2本の指を受け入れていった。 これほど中は異物を器用に受け入れる事ができるというのに、なぜ快感を得られないのかがわからない。 ゆっくりと中の指を動かし粘膜を擦ってみても、瑠威の表情には良くも悪くも変化は見られなかった。 じゃあまあ...とりあえずココの反応を見てみようか... 指の腹に微かに感じる痼を狙って強く押し込んだ、その瞬間だった。 「あぅっ...うぅ...くっ...ぐぅっ...」 途端にその表情は激しく歪み、無意識なのか俺の手を掴んでそれを中から取り出そうもがき始めた。 しまったと思ったがもう遅い。 せっかく甘さの混じり始めていた声は、怯えと苦痛で唸り声へと変わってしまった。 俺はすぐに指先の力を抜き、宥めるように抱えさせた脚全体に唇を落としていく。 「落ち着け! もうしないから...もう大丈夫だから。ごめん...ごめんな?」 脂汗の浮かぶ額にそっと口づけながら、俺は充彦の方にチラリと目を遣った。 「何? なんかいる?」 特に言葉にしなくても、充彦はすぐに気付いて傍に来てくれる。 俺はそんな充彦にしっかりと目を合わせた。 「悪い、充彦...ここはお前に任せていい?」 「どうしたよ、いきなり。自分でやるんじゃないの?」 「今の見てわかったろ。瑠威さ...たぶん俺と一緒だ。いや、俺よりもっとダメな感じだと思う。だったらさ、俺よりも充彦がしてやる方が、コイツの体の負担を少しでも減らしてやれるだろ」 「......なるほど...やっぱりお前と一緒か。そりゃあ確かに俺のが慣れてるな。んでもさ、俺がしてもいいの? 後からこっそりヤキモチ妬かね?」 「う~ん...そりゃあまあ、少しは妬くかもね。でも俺が始めた事だし。今は瑠威を目一杯可愛がってやって」 充彦は一度俺にチュッとキスをして、瑠威の脚の間へと移動する。 俺は隣に横になり、額にベッタリと貼り付いた前髪をそっと避けてやりながら、不安げな瑠威に笑いかけた。 「そんな顔すんな。心配いらない...充彦は俺より遥かにセックス上手いから」 瑠威の頭をキュッと抱え込むと、俺の胸元に『ハァ~』と大きくゆっくり吐き出された熱い息がかかった。

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