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俺、今から浮気します【9】

  慣れた手付きでローションを纏わせると、充彦は俺と同様、瑠威の表情をしっかりと確認しながら長い指をゆっくり中へと忍ばせていく。 「勇輝、前立腺まともに触ったらダメだったんだな?」 「うん。俺の力加減のせいなのか、ソコ自体がダメなのかまではわかんないけど」 「オッケーオッケー、了解」 指先の感触に集中をしているのか、いつにも増してその表情が真剣に、男らしい物に変わった。 普段こうやって男の体に真剣に触れる充彦の顔を見ることはほとんどない。 なんせ俺が愛撫されている時は恥ずかしいやら気持ちいいやらで、大概目を開けてることすらままならないから。 僅かな変化も見逃すまいと、いつもこんなに熱い瞳で見つめられていたのかと気づいた途端に、俺の頬と体が火照ってくる。 「なあ瑠威、勇輝じゃなくて悪いけど、ここは俺が責任もって感じさせてやるから、とりあえず信じてくれよ...な?」 そう言うと、中に深々と突き立てた指をグルリと動かした。 瞬間的に瑠威の体に力が入る。 怯えるようにその顔からはまた色が消え始めた。 「おい、充彦っ!」 「心配すんな。無茶はしない...大丈夫だって...」 瑠威の頭をひたすら優しく撫でてやりながらキッと充彦を睨みつけたものの、当の充彦は俺のそんな視線など一向に気にも留めず、中を抉る手の動きも止めようとはしない。 「ああ、なるほど。ほんと勇輝とよく似た体だな...敏感過ぎるんだ、たぶん。前立腺への刺激だと、感じ過ぎて怖くなるタイプ。だからほら、見てみろよ...刺激された事でカウパーだだ漏れだろ? ただお前と違ってね、たぶんこういう行為に慣れる前に、いきなり前立腺ばっかり責められたんだろうな...ここは苦しい所、ここは辛い所って体が覚えちゃったんだ。いくら生理的に反応しても頭が拒絶してんだから、そりゃあ気持ちいいわけない」 中が馴染んできたと判断したのか、侵入する充彦の指が3本に増やされた。 「瑠威、勇輝が教えてやりたかった事、今から俺が教えるよ。慣れるまではちょっとそれどころじゃないかもしんないけど、まあ一応聞いてろ」 さすがに3本...それも俺より節の張った充彦の指ではかなり抵抗が強いらしい。 今度は一気に奥まで突き刺すような事はせず、グジュグジュと卑猥な粘着質の音を響かせ、細かい押し引きを繰り返している。 「んっ...あぁ...」 ようやく瑠威の口からは声にもなりきらない吐息が漏れた。 充彦に任せた俺でも驚くほど、そこに苦痛の色は無い。 いや寧ろそれは、どこかしっとりとした艶すら感じさせた。 男らしくも瑞々しい、甘い喘ぎ。 見た目だけじゃない... コイツは...瑠威はこの『声』も...きっと大きな武器になる... 「うん、いい感じ。少しきついかもしんないけど、こうやって中をゆっくり擦られて揺らされるの、そんなに悪くないだろ?」 充彦の言葉に、瑠威は戸惑った顔で俺の方を見上げてくる。 「素直に話してみ。さっき言ったろ? 嫌なら嫌って言えばいいし、痛いなら痛いってちゃんと言うようにって。どう、痛い?」 「い、痛くはない...けど...変な感じ...」 「でも気持ち悪いわけじゃないんだな? だったら、今はそれだけでも上出来だ」 フワリと柔らかく微笑む充彦の言葉に、瑠威は小さく頷く。 「あ、そうだ。お前今女いる?」 いきなりの充彦の質問に、瑠威は目を丸くしてそちらを見る。 その間も、中に埋め込んだ指の動きが止まる事はない。 「女なんか...いない...」 「そっか。じゃあさ、もしこの先彼女ができても、AVの真似して潮吹かせようとか絶対すんなよ? 今のお前だったらどういう事かよくわかると思う」 「はぁっ...ん...な...んの...話......?」 「男なら誰でも前立腺さえ攻めてりゃ気持ちよくなると思ってるヤツが多いように、女は膀胱の裏側刺激したら気持ちよくなって潮吹くと思ってるヤツも案外多いんだよな...」 もうそろそろ大丈夫かと、充彦が3本の指をググッと奥まで押し込んだ。 瑠威が切なげに眉根を寄せながら、俺の腕にすがりつく。 「女が潮吹くのも、男が前立腺刺激されて先走りダラダラ流したり勃起したりすんのも、言ってみりゃただの生理現象なわけよ。勿論な、それで気持ちよくなる人も多い。だけど、その刺激を『これは快感なんだ』って理解する為には、やっぱりそれなりの経験と気持ちの積み重ねも必要だったりすんの。おまけに、当然個人差も大きいわけで、どこを触ればいいのか、どれくらいの力で刺激したら気持ちよくなるのかなんてのは、ちゃんと相手を観察しながらじゃないとわかんないんだよ」 充彦の指がゆったりと大きく出し入れされる。 そのたびに瑠威はピクンピクンと小さく体を跳ねさせ、徐々に呼吸が荒くなってきた。 「例えばな、お前は前立腺を直接刺激されるのは苦手みたいだけど、こうやって中をゆっくり強く擦ってやると、だんだん俺の指を締め付ける力が強くなってくる。んで...ここな...こうしたら...どう?」 もうそれ以上は入らないという奥までグンと指を突き立てる。 「うぁ...あっ...あぁっ...な、何...?」 疑問を口にした瑠威の頬は赤く染まり、俺の肩を掴む指先に力が入った。 その腰は更に刺激を欲しがるように、ユラユラと僅かに揺れる。 「気持ちいいんだな。今はよくわからないかもしれないけど、それはお前にとって『気持ちいい』って事なんだよ? だから安心して充彦がくれる物を全部受け止めればいい」 安心させるように、口を開いたまま必死に呼吸を繰り返す瑠威に何度も何度も触れるだけのキスをしてやる。 まるでねだるように舌を出してくる瑠威がなんだかやけに愛しくて、それをチュッと音をさせて吸い、しっかりと絡めた。 「勇輝、チンコ入れる時はできるだけゆっくり大きく腰動かしながら、奥の方攻めてやって。だいたいお前が好きなとこばっかり、捏ねながら突いてやればいいと思う。前立腺は、ちょっと当たるくらいなら問題無いだろうけど、中がしっかり馴染んで気持ちよくなれるまではあんまり刺激しない方がいいかもな。...って、おいおい、聞いてんのか?」 貪るようにお互いの舌を激しく絡め、いつまでもキスをしたまま離れない俺達に、少し呆れるような充彦の声が聞こえた。 ゆっくりと顔を離しながら瑠威の瞳をしっかりと覗き込む。 「どう? 今は気持ちいい?」 「あぁ...気持ち...いい...と...んっ...思う......」 「いいか? これからはとにかく相手の反応見るんだぞ。女なら『濡れてるから気持ちいいんだろう』、男なら『勃ってるからいいんだろう』なんて、そんな簡単なもんじゃない。表情だけじゃなくさ、体のちょっとした震えだとか息の詰め方だとか、少しの事にも注意しろよ。んで、これが一番大事。目一杯相手が気持ちよくなってくれたら、それだけ自分だって目一杯気持ちよくなれるんだ。お互いが気持ちよくなるのが本当のセックスだからな。だからこそ、ちゃんと相手の事を考えて、相手をしっかり見てやんないとダメなんだぞ」 俺を掴んでいた瑠威の手をほどき、ゆっくりと体を起こす。 次の行動がわかったらしい充彦は、今いる場所を俺に譲った。 「どうする? ビデオまだ撮る?」 「うん、撮る...あ、でも...瑠威の体にも触っててやってほしい...」 「こりゃまた面倒な事を。ま、しゃあねぇか...」 充彦は一旦元の椅子の方に戻り、ディスプレイを確認しながらカメラを座面にセットする。 「全身じゃなくて、瑠威の顔中心で撮りたいんだろ?」 「さすが充彦。よくおわかりで」 「これで瑠威の表情はある程度入るはずだから...あとは隣にいてやるよ。ただし、あんまり体入れ替えたりすんなよ?」 「わかってる、わかってる。さすがに今の瑠威に体位変えまくりのハードなプレイはいたしません」 「はいはい。んじゃ勇輝先生にバトンタッチな」 そう言うと、充彦はベッドに戻ってきて瑠威の手をそっと握った。 「ケツでも気持ちよくなる感覚ってのは、さっきのでちょっとわかったろ? 今度は、少しでも自分で快感を追えるようになる練習...な?」 瑠威は充彦の手をしっかりと握り返し、俺がコンドームの袋を破る様をぼんやりと見ていた。

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