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緊急配信!? クイーン・ビー・エクスプレス【6】
「勇輝くんの...夢?」
「そう。俺ね、ずっと自分の居場所を守る為だけに必死だった気がしてるんだ。ボーイの時はお客さんを喜ばせる事こそが店での自分の居場所を守る事だった。だから相手の求めるセックスをする事を覚えたし、会話の幅が広がるようにって習い事も色々してた。おかげでね、俺を買う人からも買わない人からも、本当に可愛がってもらったと思う。男優になってからは、とにかく現場の欲しがる人間である為に一生懸命だったよ。幸か不孝か、俺は与えられた役柄に気持ちさえ入っちゃえば、気弱な新入社員にも薄汚いレイプ犯にでもなれたから、この世界入ってから仕事に困る事はなかった」
「......そうだな。でも完璧に役を演じるからってだけじゃないよ。常にスタッフに気を配り女優の機嫌を窺い...勇輝はどの現場でもほんとに評判良かったもん。まあ強いて言うなら、頑張り過ぎてて体壊すんじゃないかってのが当時のスタッフの心配事だったな。毎日休み無く、一日に何本も現場掛け持ちしてさ......」
「それはほら...俺、当時フリーでやってたから、上手くスケジュール管理とかできなかったし」
「それだけじゃないだろ?」
「......うん、まあ。充彦から逃げ回ってたってのも一つある。でも一番大きな理由はね...一人ぼっちになりたくなかったんだ。仕事断ったら次から現場に呼んでもらえなくなるんじゃないか、この仕事を断る事で自分の今の居場所がまた無くなっちゃうんじゃないかって考えちゃって、毎日すっごい不安でさ」
「勇輝くんて、みっちゃんから逃げてたん?」
「そう。まあ、その辺の詳しい話は、またDVD観てくれたらわかるけど」
「ほんで? 今ビデオ業界で勇輝くんがたぶん一番稼いでるやん。名実共に絶対的な地位...いや、勇輝くんの言う所の居場所?を築いたわけやろ? そんな勇輝くんが、今度はどんな夢を持ってんの?」
「俺ね...やっと絶対に無くならない場所を見つけたんだ。だからね、俺がほんとに探し続けてた一番大切な場所を守る為に、これからは必死になろうと思います」
「ん? 勇輝さん、ちょっと俺意味がよくわからな......」
「勇輝、それ以上言うな! 今ここでそんな事言うもんじゃない」
「ここで言わなくてどこで言うの?」
「カメラあるんだぞ! 会社の人だってこれだけいるってのに...みんなに迷惑かける上に、お前も後戻りできなくなるじゃないか!」
「......後戻りなんてしないよ。その為に俺は、隠し続けた過去をここで話したんだ」
「でも、お前......」
「だからぁ、大丈夫なんだって言ったろ? この話も、もうビー・ハイヴさんと社長には伝えてあるし...了承済みだよ。勿論渋々だし、いくつか条件は付けられたけどね」
「勇輝くん、どういう事?」
「俺は自分の居場所を...充彦の隣を守り、そして充彦のこれからの夢を守る為に...来年いっぱいで男優の仕事を休業して、経営と語学を中心にビジネスの勉強をさせてもらう事になりました」
「なりました...ってそれ...決定事項なん!?」
「うん。社長とちゃんと話し合ったんだ。『俺はどうしても充彦と同じ世界で生きていきたいんですけど、どうしたらいいですか?』って。そしたらさ、『充彦には職人としての仕事に集中してもらって、お前はその店の経営とか仕入れに動くって手もあるぞ』って言われた。今後の企業展開の問題もあるんで詳しくは言えないんだけど、俺が本気で経理から法務関係、材料の調達の為の海外との折衝までやる気があるんなら、いざ充彦が店オープンさせるって時には、経営の一切を俺に任せてくれるって話までしてくれてる。だから俺は...充彦の見てる夢を俺自身の夢にする為に、そっちの勉強するつもり。必要があれば、現地の視察と語学の勉強を兼ねて、ヨーロッパをしばらく転々とする事にもなると思う」
「勇輝さん...それ、本気ですか?」
「勿論、大マジです」
「でも休業なん? 引退ではなく?」
「......まあね。それがビー・ハイヴさんがギリギリ飲んでくれた条件。俺らは一年契約だからほんとは契約を更新しなければ済む事なんだけどさ、ここまで結構な手間とお金掛けてもらって専属になったわけじゃない? おまけに散々わがまま聞いてもらって、でっかいイベントまで開いてもらっといていきなり『じゃあ辞めます』なんて、さすがに失礼な話だろ? という事で、今後3年は定期的にこのエクスプレスに出演する事と、最低年に1本だけはビデオ撮る事を約束した。だから完全休業ってわけじゃないんだよね」
「......フフッ、つまりは勇輝くんのわがまま通す為に、俺らも最低3年はここの専属を降りるわけにいけへんていうわけやな? なんや、人質にでもなったみたいな気分やわ」
「悪いな、まさにそういう事です。そんで、こっちからもその時条件出したんだけどね...3年後、航生も慎吾も専属契約を解除した上で、ビデオは引退してもらいます」
「はぁっ!?」
「まだ表では一切話した事無い話でみんな知らないと思うけど、航生にもずっと思い続けてる夢があります。その為に辛い仕事も苦しい仕事も、歯を食いしばって耐えてきたんだ。で、その夢を叶える為には、充彦の傍にいるのが一番の近道なんだよね。だから航生にはちゃんと当初のお前の夢の通り、ちゃんと勉強して資格を取ってもらう。まあそうなったら当然、慎吾だって航生の夢の支えになりたいって思うだろ? だからお前は、これからも二人が同じ夢を見る為に自分ができる事を探さないといけない...わかる?」
「そんなんっ! そんなん...俺、勇輝くんみたいに頭エエ事ないのに...できる事なんかあるわけ無いやんか......」
「あるよ。間違いなくある。俺らはわかってるし、たぶん航生だってわかってる。でもな、そこは自分で気づかなきゃ意味が無いから...今は言わない。しっかり考えたらいいんだよ...まだ3年もあるんだから」
「うっわぁ...しかし、やられたなぁ。裏でコソコソ動くのは俺の専売特許だと思ってたのに、まさか勇輝に出し抜かれるとは......」
「ごめんね、黙ってて。でもさ、俺、充彦と違う世界で生きてる自分なんてどうしても想像できなくて...航生や慎吾と離れるなんてのも絶対にイヤで...色々考えてるうちに、なんか勝手に動いてた。ほんと、ごめん......」
「いや、俺は別にいいんだけどさぁ...しかし、俺の引退の話だけのはずが、えらい爆弾発言だらけのエクスプレスになっちゃったな」
「まったくですよ。自分の要求飲ませる為に、俺らまで人身御供に出しちゃって......」
「嫌か?」
「......そんなわけないじゃないですか。元々俺は二人に助けてもらった人間ですよ? 二人に会えなければここにはいないし、慎吾さんにだって出会えなかった。今の俺は、二人のおかげで生きてるんです。こんな俺の時間でいいなら、いくらでも使ってください」
「お前の時間はお前のモンだよ。ただ、3年分だけ貸してくれ...ほんと悪いんだけど」
「3年経ったら、また全員でおんなじ場所向いて、並んで歩こうぜ。まあ、俺とお前のボスが勇輝になるってのは、ある意味恐怖でしかないけどな」
「失礼な。全員の幸せの為に...んでさ、いつか充彦の作ったお菓子を『昔ファンでした』って人が食べて笑顔になってくれるように、最高に温かくて最悪に厳しいボスになるよ」
「俺、ちゃんと道が見つけられへんかったら...どうしよう......」
「その時はね、充彦さんや勇輝さんが俺にしたみたいに、ちゃんと道に着くまで俺が慎吾さんの手を引きますよ...無理矢理にでも」
「という事で、ちょっと皆さんにはかえって心配かけるような話をいっぱいしてしまいましたが、それでも年内は充彦も含めての4人で頑張りますし、俺は来年とんでもないくらいエッチ全開でガンガン飛ばしていきますので、どうかこれからもよろしくお願いします」
「まあ、できたらこんな話は...スーツかなんかでして欲しかったけどな」
「ワンピースにウィッグ姿ですしね...残念ながら美人ですけど」
「はい、ちょっと俺、まだ心臓バクバク言うてるんですけど、ボチボチ今日のエクスプレス締めたいと思います」
「次回配信は、もういつものアホアホエロエロでいきますので、また観てくださいね~」
「またお会いしましょう。それでは航生と...」
「慎吾と...」
「みっちゃんと......」
「こんな格好ですが、勇輝でした~」
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