62 / 420
俺、今から浮気します【14】
後ろから強く抱き締められたまま、グイと貫かれる。
繋がった場所から頭のてっぺんまで、一気に電流が駆け抜けた。
「あぁぁ...あっ......」
いきなり訪れた強過ぎる快感を体を捩る事でどうにか逃がそうとするものの、俺自身の体が重しとなって動く事すらできない。
それどころか、いつもよりも深い所まで繋がっているような感覚に、口からは言葉にもならない喘ぎしか出てこなくなっていた。
「ああ、んもう...勇輝はほんとヤらしいなぁ...俺のチンポ、こんなに旨そうに飲み込んで...」
「んっ...あっ...みつ......」
背後で充彦がフッと笑う気配がした。
途端、しっかりと俺を抱き締めたまま、充彦が後ろに体を倒す。
足をそれぞれ自分の腿に乗せさせると、まるで羽交い締めのような格好で俺の体を強く締め上げてきた。
「みつ...ひこぉ...苦し...」
「苦しいだけじゃないだろ?」
うなじに舌が這わされる。
上半身をガッチリと拘束された状態で、体を丸める事も仰け反る事もできない。
横になり楽になったのか、充彦のぺニスは勿体ぶるようにゆったりと大きく中を擦り始める。
「あっ...あんっ...充彦...充彦...」
「ん? 気持ちいい?」
「うん、いい...すごい...気持ちいい......」
「そう? そりゃあ良かった。でもさ、あんまり大きな声で悦んでると...子猫ちゃんに聞こえるよ?」
言われてハッとする。
今自分の取らされている格好がまざまざと頭に浮かぶ。
気持ち良さそうにスヤスヤと眠るその顔に向けて股を大きく開き、深々と充彦のぺニスを飲み込んで喘ぐ俺。
涎でも垂らしているかもしれない...もう口を閉じる事もままならない。
さっきまであれほど強く激しく瑠威を攻め立てていたというのに、今度は情けない程乱されている様に徐々に羞恥心が沸き上がってくる。
とにかく声だけでも堪えようと、俺は唇を噛んだ。
けれど耳許にクスクスと笑う充彦の息がかかれば、たったそれだけで体が震える。
「今更、我慢してんの?」
不意に腰の動きが止まった。
安堵に大きく息を吐きながらも、体の内側には行き場のない熱がグルグルと渦巻く。
「ここまできて勇輝が声我慢するなんて、できると思う?」
「充彦...お願い...ベッド...ベッド行こう...」
「今お前抱いてるの、誰だと思ってんの...俺だよ?」
肩を戒める力が強くなった。
その瞬間、充彦のぺニスが更に強く深い場所を抉る。
「ひぁっ...」
突然の衝撃に、構える事も堪える事もできず、悲鳴なのか悦んでいるのかもわからない声が漏れた。
俺の体の緊張など気にする風もなく、充彦の腰の動きは激しさを増していく。
繋がれる部分すべてを飲み込まされ、今度はそれを一気に引き抜かれる。
粘膜が擦れ襞の捲れる感覚に、俺は必死に首を振り声を上げた。
もう嬌声を抑えようなんて事は考えられない。
苦しいほどに締め付けられている事が堪らなく嬉しい。
頭も体も、ただ快感を追う事しか考えられなくなっていく。
「充彦...充彦ぉ......」
「苦しい?」
その苦しいは、何の事を指しているのだろう。
中を抉る激しさ?
体が自由に動かせないほど強く抱き締める力?
それとも、抑えなければいけないはずの声を抑える事もできないという羞恥心?
どれも苦しい。
けれど辛くはない。
それが充彦から与えられる物であれば、俺にとってはすべてが甘美な責苦だ。
「気持ち...いい......」
その言葉に満足したのか、俺の肩と首を押さえていた腕がスルリと離れていく。
その手が今度は顎にかかり、グイと強引に後ろを向かされた。
無理な体勢に呼吸すらままならないけれど、俺は首を捻り必死に充彦の方を向く。
「俺はね、勇輝に好きな人がいっぱいいるのも、大切な人がいっぱいできるのも、全然嫌じゃないんだよ」
伸びてきた舌に、俺も懸命に舌を伸ばす。
先端同士がほんの少し触れ合っただけだというのに、その行為は体が震えるほどの快感だった。
「でもね...俺以外を愛すってのは絶対に許さないから」
充彦の手が俺の腰を強く掴む。
体が不自然に反り返ったままの状態で激しく突き上げられ、俺の頭はいっぺんに沸騰した。
「やっ...充彦...充彦...イキたい...イキたいよぉ...」
自分で触れる事は、さっき禁止された。
充彦の許可の無いまま自分で扱いて達する事はできない。
「イケばいいじゃん...いつもみたいにケツだけで...」
今日のスケジュールを知っているはずの充彦の言葉に、絶望にも近い気持ちになった。
イケるなら、とっととイッてる。
けれど、今日はもう4回も射精していて、体はもうこれ以上の性的な刺激は欲していない。
ただ俺の気持ちが昂って抑えられないだけだ。
こんな状態の俺に、アナルだけの快感でエクスタシーを迎えられるほどの体力も精力も残っていないだろう。
少なくとも射精はできないはずだ。
「充彦、イカせて...イキたい...お願い......」
どうすれば充彦の機嫌が直るのか...触れてくれないなら、せめて自分で触れる事だけでも許して欲しい。
「そんなにイキたいなら...しゃぶってやろうか?」
「い、嫌だ...抜くな...抜いちゃヤだ...」
「抜かないよ。抜くわけないじゃん」
充彦の動きが、またゆったりした物に変わった。
今すぐにでも出したいと焦るような気持ちも少しだけ収まる。
「イカせて欲しいってさ。どうするよ...狸寝入りしてる子猫ちゃん?」
ギクリとして身を竦める。
充彦の声に、目の前で安らかな寝息を立てていたはずの瑠威がユラリと静かに体を起こした。
ともだちにシェアしよう!