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FACE DOWN【16】

滑り込んできた舌が絡まり合わされ、すぐにその感触に、そして快感に溺れたくなる。 他人と粘膜を触れさせる事がこれほど気持ちいいと最初に教えてくれたのはこの舌だ。 抗えないほどの欲が一気に体内を駆け巡る。 俺の熱を一気に高めようと口内を自在に動き回るその舌をなんとか押し留め、俺からもそれに吸い付き軽く歯を立てた。 俺ではなく、充彦の体温こそ上げたいのだと少しムキになってそれを吸い上げる。 どちらが攻め立てているのか、どちらがそれを甘受しているのかもわからないほど、ただひたすらにお互いを貪りあった。 心地よさと多幸感と、そして溢れ始めた欲に体が震える。 いつまでもこうしていたい...けれど、いつまでもこうしているわけにはいかない。 ジンと痺れるような甘怠さを下腹部に感じて、名残惜しくも唇をゆっくりと離した。 そんな気持ちを表すように、二人の間を頼りない銀糸が繋ぐ。 「フフッ、ヤバかったぁ。俺、キスだけでイッちゃうかと思ったわ。ほんと、勇輝とのキスって、なんでこんなに感じちゃうのかねぇ」 「俺も、ちょっと気持ちよくなりすぎちゃった」 いつもと変わらない様子でニヤリと笑うその顔に、フッと気持ちが軽くなった。 心から安心して充彦に笑い返すと、その大きな体の上から下りる。 「ん? もう終わり?」 「終わっていいの?」 「そりゃあダメでしょ。んじゃ襲っていい?」 「今日はダメー」 クスクスと笑いながら、ベッド脇のチェストに手を伸ばした。 そんな俺を特に非難する事もなく、充彦はただそれを穏やかで艶やかな目を向け黙って見ている。 引き出しの中からいつも使っているローションを取り出すと、俺は改めて充彦の方に向き直った。 「今日は、俺が全部やるよって言ったでしょ? 充彦を一杯甘やかして、一杯温めて、一杯幸せにしてあげるから」 「そうなの? でも俺は、勇輝とこうしてイチャイチャしてるだけですんげえ幸せなんだけど?」 「じゃあね、もっと幸せにしたげるよ...今日一杯泣いた分、一杯幸せに」 手にしたローションを傍らに置き、充彦の隣にピタリと体を横たえた。 耳朶を口に含み、その耳孔に舌を差し入れながら唇から喉元へと指先を滑らせる。 その指を追いかけるように唇に吸い付き、喉仏に軽く前歯を当てれば、そこがまるで別の生き物のように上下に大きく動いた。 そのまま頭をずらし、鎖骨の窪みを舌で擽る。 右手は更に下へと向かい、胸の先端をフニフニと摘まんだ。 そこはすぐに反応を示し、僅かな突起がすぐに桜色の痼へと変わる。 粘膜に包まれる事を期待するように微かに産毛を立てているそこは指に任せ、俺は唇を肩から腕へと移動させた。 手首を握り右腕を軽く上げさせると、俺よりもいくらか体毛の濃い脇に鼻先を擦り寄せる。 「汗臭いだろ?」 「さっき綺麗にしたよ。それに、充彦の匂いならなんでも好きだし」 まじまじと見られるのは少し恥ずかしいのか、すぐに閉じようと力の入る腕をしっかりと押さえつけ、脇から二の腕へと舌を這わせた。 そのまま皮膚の薄い所にジュッと強めに吸い付く。 ...充彦は俺の物...... 唇の大きさそのままに赤黒く残る鬱血。 まるで自分の所有印のようだ。 そんな物が必要無い関係なのはわかっているけれど、それでも俺にそれを付ける事が許されている事自体が嬉しい。 充彦の体は唇を押し付けるたびに小さくピクンと跳ねる。 腕の内側にいくつか俺の印を付けると、最後にそれを一筆書のように舌で順番になぞった。 乳首だけでなく、徐々に充彦の肌全体が粟立ち始める。 そこから肘へ、手首へと唇を移し、手のひらをペロペロと猫がじゃれるように舐め上げた。 手のひらの皺の一本一本を丁寧に舐め、指の股に舌を這わせ、大きく張った指の節にチュッチュっと吸い付く。 最後に人差し指と中指をキュッと握り、先端から根元までを一気に飲み込んだ。 いつも充彦のペニスにしているようにたっぷりと唾液を絡め、爪の表面を尖らせた舌で擽り、ジュプジュプと大袈裟なくらいの音をさせながら大きく頭を動かす。 「んぁっ...勇輝、タンマ...マジ...ちょっと......」 そんな充彦の声は聞こえないふりで、我を忘れて指にしゃぶりつく。 俺の唇が、そして舌が充彦を感じさせている事に、今日はいつもよりも興奮していたのかもしれない。 「ほんと、マジで止めろってば!」 いつまでも指への愛撫を止めない俺に焦れたのか、充彦の指先がいきなり反撃してきた。 俺の舌を指の間で挟み、上顎や舌の奥を撫で始める。 ...はぁ...ヤバい...気持ちいい...... しっかりと手を掴んでいたはずの力が抜け、すぼめていた口がだらしなく開いていく。 乳首を弄っていた手を逆に掴まれて、今度はそれを充彦が口に含んだ。 俺がしていたように舌で擽り唾液を絡め、ジュルジュルと出し入れされる。 思わず喘ぎ声を漏らしそうになったけれど、俺の舌は充彦の指に挟まれたままで...口を閉じる事も声を出す事もできなくなっていた。 指に与えられる粘膜の快感と、舌を動かせないままで粘膜を嬲られる快感に涙が出そうになる。 思わず無意識に自分の腰をシーツに擦り付け、直接的な快感をも追いかけそうになった。 それに気づいた充彦が、俺の指と舌を同時に解放する。 俺の唾液でドロドロになった自分の指を、見せつけるようにしながらペロリと舐めた。 「やっぱ、いつも通りで良くない? なんか今日の勇輝、しつこいし。俺がする方が気持ちよくなれるだろ?」 「...俺が気持ちよくしたげたいの! もう反撃されるほどしつこくしないから......」 シーツに擦り付けたせいで少しだけ雫が押し出されてしまった自分のペニスを隠すようにしながら、今度は綺麗にへこんだ腹筋へと唇を落とした。

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