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似た者同士【11】
「おはよ、航生」
「はぁ...おはようございます。あ、勝手に材料とか道具とかエプロンとか、お借りしましたからね」
俺達の部屋に航生が乱入してきておよそ10分。
出すモンは出したが今一つ満足感に欠けるせいで悶々とする俺と、出すモンは出してそれなりにスッキリしたらしい勇輝とで寝室を出た。
リビングに出してやった肌掛け布団はすでにきちんと畳まれて部屋の隅に追いやられている。
航生は勇輝のエプロンを着け、ちょうどテーブルに朝食らしき物を並べている所だった。
俺は先にスマホを開きLINEでメッセージを送ると、ソファに腰を下ろしてすぐにノートパソコンを立ち上げた。
「航生...航生ぃ...うわ、いいっ! なんか航生すげえかわいーっ!」
いそいそと俺達の朝食を準備している事にか、それとも自分のエプロンを着けている姿にか、勇輝はいたく感激したらしい。
目をキラッキラさせながら航生へと近づくと、いきなりガバッと思いきり抱き締めた。
「ああ、もう...航生ってばほんとに...ほんとに可愛い...」
ムギュムギュと航生の体を抱き締めるだけでは気持ちの昂りが抑えられなかったのか、いきなりその薄い唇に吸い付く。
必死にキーボードを叩く俺のすぐ傍らで聞こえる、チュッチュッというリップ音。
軽やかだったそれは、じきに纏わりつくような水音を含み始める。
指先の動きを止めないままでそちらにチラリと目線を遣れば、案の定勇輝の舌が航生の唇を割り開いていた。
航生はと言えば焦ったような、それでいてその舌から与えられる快感に抗えず戸惑っているような、それはそれはなんとも嗜虐心を擽るトロリとした視線を俺の方に向けている。
どうやら本人なりに助けを求めているつもりらしい。
......ま、面白いから放っておくけど。
自分を間違いなく見ていたはずの俺がまた素知らぬ顔でパソコン作業に集中し始めた事で助けは期待できないとわかったのか、航生は本格的に慌てだした。
まったく、ほんと航生って面白すぎるだろ。
覚悟もテクニックも全く無い素人同然だったとはいえ、現役バリバリのゲイビの本番男優がちょっとキスされたくらいでジタバタするって...ウブというか真面目というか。
結局航生はそのまま自力でベロチューから逃れる事はできず、勇輝が満足して解放してやるまでなすがままだった。
そこに抗議の意味を孕ませているつもりが本当にあるのかの不思議になるくらい、熱く潤んだ目でジーッと勇輝を見つめる。
「ん?」
どうした?とでも言うように、ニコニコとまったく邪気の欠片も無い笑みを浮かべて首を傾げる勇輝。
航生が首までブワッと赤くする。
「な、な、なんでいきなりキスしてくるんですかっ!」
「ああ...航生が可愛かった...から?」
「可愛かったって...俺が可愛いわけがないでしょ! だ、だいたいっ! 可愛いならなんでもキスしていいんですかっ!」
「何でもって...何でもいいわけないだろ。航生だからしたに決まってんじゃん」
「へ? い、いや...じ、じゃあなんで俺だとするんですか!」
「可愛い可愛い弟みたいなもんだから?」
「弟にキスなんてしないでしょ!」
「別にいいだろ、したかったんだし。外国人なんてもっとチュッチュしてるじゃん」
「チュッチュはしてもベロ入れないし、そもそもチンコ触りません!」
あ、そこまで見てなかった。
勇輝そんなことまでしてたのか。
そりゃあ航生も多少は焦るわな。
......やべっ、すっげえ面白い。
これは俺も絡まない手は無いと、パソコンの画面を一度確認してからゆっくり立ち上がる。
「み、充彦さんっ! ちょっとなんとか言ってくださいよぉ。勇輝さんが目の前でこんなことしてるんですよぉ...」
俺は航生のすぐ隣に立つとその腰を抱き寄せ、有無を言わせず上から覆い被さるように口付ける。
まどろっこしいバードキスなんてすっ飛ばして、いきなりぐいと舌を挿し入れてやった。
航生は驚いたように目を見開き、すぐにギュッと目を閉じて体を固くする。
上顎を舌先でなぞり、逃げまくる舌を捕まえ絡ませれば、突き離そうと俺の胸を押していたはずの手はいつの間にか頼りなさげに縋り付く物に変わった。
さすがにちょっと形が変わってるであろうチンポまで触るのはかわいそうだから、残念だけどすぐにその体を解放してやる。
「はい、ごちそうさま。勇輝とおんなじことしたから、これでおあいこおあいこ」
「な、なんのおあいこなのか...意味わかんないし...」
俺の肩口にコトンと額を預け、航生は乱れた息を整える。
...と、突然何かを思い出したように航生が頭を上げ、俺と勇輝の顔を交互に見た。
「勇輝さん、起きてきて口漱ぎました?」
「はぁ? なんもしてるわけないじゃん。部屋出てきて、す~ぐ可愛い航生にチューしたもん」
「充彦さんは!?」
「右に同じ。つか、うがいしに行く暇がどこにあったよ...お前で遊ぶのに忙しかったっつうの」
いったい航生は何が言いたいんだ?と勇輝と目を合わせて首を捻る。
「二人して...二人して朝からガツガツ盛ってたくせに! ど、どうせしゃぶり合ったりとかしてたくせに!」
「ん? してたしてた。なんで?」
「あ...ああ、そういうことか...」
ジッと航生の顔を覗き込む。
ニターッと笑ってみれば、合わせた視線がすぐに逸らされた。
「間接フェラ......」
「うわーっ、うわーっ! そ、そんなのわざわざ言葉にしないでください!」
「え、何。そんな事嫌がってたの!? なんだよぉ、お前は充彦のチンポ、バッチイ物だとでも言いたいのか? それともアレか、ザーメン気にしてる? 大丈夫大丈夫、二人とも今朝は口には出してないから」
「兜合わせでフィニッシュだもんなぁ。てか、もうちょっとでズッポリ挿入ってとこだったのにさぁ...お前、ノックぐらいしろよ」
「しましたよ、何回も! 起きてる気配してるのにいつまでも返事が無いから開けちゃっただけでしょ! ていうか...手は洗いましたっけ?」
「ちゃんと綺麗に拭いてきたって」
「うわーっ! ザーメン受け止めたんですから、早く手ぇ洗ってきてください!」
勇輝もどうやら、航生をオモチャにする事の面白さに気がついたらしい。
俺と一緒になって、焦る航生に更にキスを繰り返したりチンポ握ったりを始める。
こうして航生がグッタリとフローリングに膝をつき、俺達がその遊びに飽きた頃には、テーブルの上の味噌汁はもうすっかり冷めていた。
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