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好きだから【4】

風呂から出ると、勇輝は着替えを出したり濡れた体を丁寧に拭いてくれたりと、やたら甲斐甲斐しく動いた。 変な意味で特別扱いをされているようで、ちょっと居心地が悪い。 眉間に皺が寄っている俺に気づいた勇輝は、その額の皺をツンとつついた。 「な~んて顔してんの?」 「......体くらい...自分で拭けるっつうの......」 つい不貞腐れたような物言いになってしまった俺の様子に一度目を丸くすると、勇輝は心底嬉しそうに白い歯を見せた。 「これ、いっつも自分がやってることじゃない」 「......え?」 「俺もね、『それくらい、自分でできるんだけどなぁ』って思う事あったの。ヤった後ならともかくさ、まだ何にもしてないのに、なんでそこまで気遣わないといけないのかなぁ...みたいな? でもね、なんかわかった。こうやって立場が逆になってみたら、あれもこれもやってあげたくなるもんだね...これから俺を受け入れて貰うんだって思ったら、少しでも労ってあげたいし、優しくしてあげたいって」 「あ...ああ...えっと...そう...かな?」 「いつでも充彦が、どれだけ俺を大切に思ってくれてるのか、改めてよくわかった気がする。いつもほんとにありがとね。んで...こうやって俺にそれを知る機会をくれてありがとう」 その顔は、特に俺を気遣って言っているという風には見えない。 本心からの俺への感謝の言葉がなんだか少し気恥ずかしい。 そして、今勇輝がしている事は普段俺がやっているのだと改めて言われてしまい、そこは堪らなくバツが悪い。 それでもただ照れ臭いだけで、決して嫌ではないのが不思議だ。 普段の勇輝も、俺が体を拭いてやるたびにこんな風に感じていたんだろうか。 「はい、出来上がり。パンツは後からでいいよね...どうせすぐに脱ぐんだし」 手渡されたタオルを今更ながら顔を赤くして腰に巻くと、同じようにタオルを巻いた勇輝に手を引かれ、真っ直ぐに寝室へと導かれた。 ********** 「さてと...四つん這いになるのと仰向けと、どっちがいい? 構える時の体勢としては四つん這いのがたぶん楽。ただ、慣らしたり解したりって事自体は仰向けで腰の下にクッションかなんか敷く方が力は抜きやすいかもしれない。充彦のいい方選んで? どっち選んでも、絶対に傷つけるような事はしないから」 ベッドに腰を下ろすと、俺の首筋に舌を這わせながら勇輝が耳許で囁く。 でも訊かれるまでもなく、俺の中には選択肢は一つしか無かった。 体勢が楽だの力が抜きやすいだの、今の俺には関係ないのだから。 「俺は...俺を抱く勇輝の全部が見たい。表情も動きも全部。だから...お前が見える格好ならなんでもいい」 「......そうなの? あははっ...俺、ちょっとビックリしちゃった。恥ずかしいとか、辛いの嫌だとか言うのかと思ってたし」 「そんなん今更だろ。ケツの中まで綺麗に洗ってもらっといてさ。とにかく見てたいんだ...どんな顔で俺を感じさせようとしてくれるのか、感じてる俺を見たらお前の顔がどんな風に変わるのか」 「俺が視姦するんじゃなくて、視姦されちゃうんだ。ヤバいなぁ...緊張しちゃうかも」 そんな言葉は嘘だとでも言うように、勇輝の手は滑らかに俺の肌の表面を滑っていく。 そのまま俺の体はゆっくりとベッドへと沈んだ。 「充彦、大好きだよ」 上から俺の目を覗き込みながら勇輝は笑みを浮かべる。 その瞳に俺も、意地でも強がりでもない笑みを返した。 「俺も勇輝が大好きだよ」 「最後に改めて言っとくね。どんなに相手が好きでも、どんなに相手に抱かれたくても、どうしてもアナルで感じられないって人はいる。だから、どれだけ愛撫しても気持ちよくなれないって思ったら、ムキになったり意固地になったりしないでちゃんと教えて。俺は気持ち良くないセックスはしたくない。相手が俺の大切な人なら尚更。挿入しなくたって気持ち良くなれる方法はあるんだし、別にいつもの関係に戻ればいいだけ。それを充彦も俺も気に病む必要もない事だからね。どう、約束してくれる?」 「無理だったら無理だって...ちゃんと言うよ。俺だって気持ちいいセックスしたいもん。でもさ...」 俺を見下ろす勇輝の首に腕を回す。 「とにかく勇輝を感じさせて。できるできないは...二の次だ。俺は、俺を抱こうとしてくれるお前を感じたい」 絡ませた腕に力を込めると、勇輝の顔は何の抵抗もなく下りてくる。 そしてそうするのが当たり前だと言うように俺の唇を啄み始めた。

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