『はい、改めまして本日のゲスト、みっちゃんと勇輝くんです』 「よろしくお願いしま～す」 『ちなみにお二人は、男優歴ってどれくらいなんですか？』 「俺は１０年目ですねぇ。ま、この３年ほどは男優なんて名乗ってもいいのかどうか微妙な感じなんですけど」 「俺は...４年ですね」 『あ、さっきのみっちゃんの言葉、知らない人もいると思うんでちょっとだけ補足しますね。こちらのみっちゃんは、この３年間は男優でありながら一切本番行為をしてないという、普通だとあり得ない男優さんなんですよ』 「ヤバい発言あったら、後でちゃんとカットしてくださいね。えっとね、本番してないだけじゃなくて擬似も無いし、ついでにフェラも無いです」 『あれ？　そうでしたっけ？　フェラ無し？　じゃあ、一方的にみっちゃんが奉仕するだけってこと？』 「そうなりますねぇ。あのね、一応あっちこっちで話してるんですけど、勇輝以外の人間には勃起しなくなっちゃって」 『あれ、冗談じゃなくてホントだったんだ！？』 「ホントですよぉ。実は勇輝と付き合いだしてからも、現場には行ったんです。なんせ前の日には普通に勇輝とセックスしてるから、ちゃんとできるつもりでいるじゃないですか。ところが、いざ！ってなったら、俺のジュニア様がウンともスンとも言わなくて」 『これ、失礼な質問だったらごめんなさい。アタシ、みっちゃんてどんな状況でも即勃つし、そんなにシコシコしてなくても監督のカウントダウンで射精できたって聞いた事あるんだけど......』 「さすがにシコシコ一切無しってのは難しいですけど、それでもまあ必要なら３分もらえれば勃起はできましたね。射精もゴーが出ればいつでも出せるようにタイミング測ってたかな。あっ、でもプロの男優なんてみんな似たようなもんですよ。疲れてようが熱があろうが興奮してなかろうが、監督に『勃起！』って命令されたら勃たせるのが仕事ですから」 『そうか。そんないつでもどこでも勃たせないといけない仕事なのに、その仕事道具が勃たなくなっちゃったんだ？』 『それってなんで？』 「えーっ！？　まあ...カッコ良く言っちゃえば、好きになりすぎたって事じゃないですか？」 『んじゃ、カッコ悪く言うと？』 「勇輝とのセックスが良すぎたって事かな。肉体の快感は勿論なんですけど、とにかく精神的な満足感がすごくて。ほんとに勇輝以外は何もいらないって思っちゃったんです」 『それって、普通なら廃業じゃないの？』 「あ、そのつもりでしたよ。もう現場には戻れないし、迷惑もかけられないよなぁって思ってたし。ただありがたい事に、本番無くてもキスと愛撫だけできればいいよ～とか、新人でどうしても踏ん切りつかない女の子リラックスさせたいからとか、そんな現場から今も声をかけていただいてるんで、辛うじて男優名乗れてる感じですね」 『勇輝くんはそういうの無かったの？　勇輝くんもみっちゃんの事ホントに好きだったわけでしょ？』 「うわ、こんな流れだと、誠実なみっちゃんと不実な俺って図式になりません？」 『不実とは思わないけど、本気で不思議だったから。ほら、エクスプレス一緒にやってる航生くんと慎吾くんも、付き合いながらそれぞれ仕事続けてるでしょ？　ああいうの、どういう気持ちなんだろうと思って』 「難しいなぁ...まあ、航生と慎吾の気持ちについては俺らと立場が違うからよくわかんないんですけどね...あ、なんなら次回のゲスト、アイツら呼んでください。俺に関して言うなら、仕事は仕事でプライベートとは全くの別物だって割り切れてたのかなと思います。俺を求めてくれる場所があるなら俺はそこで生きるべきだって考えてたから、俺を使いたいって現場がある限り、勃たない抱けないって心配はしなかったかな。ただ、アナル舐められるのだけはどうしてもダメになっちゃって......」 『なんでなんで？』 「やっぱりどこかに、そこはみっちゃんの物だ！って気持ちがあったんじゃないですかね。舐められたり触られたりした途端、それまで気合い入れてギンギンの状態までもっていってた分身がプシューッて萎んじゃうんです」 『まあ、アナルは舐めるシーンとか無理になくても、ビデオは成立しますもんね』 「先に女優さんにも監督にも、ちゃんと先にお願いはしますよ、舐めちゃヤダって。俺ってわりと童顔じゃないですか？　そのせいか、一時痴女に襲われるウブな学生って役が増えた時期があって、説明しとかないと勝手に舐められちゃうんです。ただ......」 『ただ？』 「俺を求めてくれる撮影の現場っていうのが自分のいるべき場所だってずっと思ってたんです。だから、みっちゃんっていう最高のパートナーができてからも、仕事だって割り切ってセックスできてた。でも、段々俺の居場所は現場じゃないなぁって思い始めちゃったんですよね......」 『ああ、その気持ちが強くなったからこその...この間の引退宣言？』 『今たぶん、画面に説明のテロップ入ってるわよ』 『夏のイベント直後でしたもんね』 「そうですね。居場所に縋りつくために必死でセックスしてたけど、俺にはみっちゃんの隣にちゃんと無くならない居場所あるじゃんて、やっと気づいたんです」 「ほんと、やっとだったもんな」 『ん？　もしかしてみっちゃんは、勇輝くんが男優続けてるのって嫌だったの？』 「いや、俺もちゃんと仕事は仕事だって割り切ってたから、別に本番するのが嫌だってのは無かったですよ。実際、ビデオに出てる時の勇輝はとびきりイヤらしくて綺麗で、見てるだけで興奮するくらいだったし。ただ、俺の事を心から信じられない部分があるせいで現場から離れられないんじゃないかって思ってたから、そっちの方が辛かったかな」 『じゃあ、勇輝くんの引退宣言聞いてみてどうだった？』 「ようやく俺の隣にいるのが一番幸せってわかったか！って思った。遅いんだよ、バ～カ...みたいな？」 『......あのさぁ...なんか、この番組にふさわしくないレベルでイイ話になってない？』 『アナタといるのが幸せなの』 『当たり前だろ、今頃気づいたのか？...でしょ？』 『イイ話すぎてムカつくから、ちょっと別の話にしちゃいましょ。それでアンタ達、年収いくらくらいなの？』 「え？」 「いや、いきなり過ぎません？　てか、すっごいゲスな話になって......」 『あのね、勇輝信者のアタシからしたら、二人とも仕事辞めてご飯食べられるのかってのが一番心配なの！』 『アタシもすごい気になる～。あの業界のトップレベルの人がどれくらい稼いでるのか。勿論、二人が今の仕事辞めてからどうするのかも含めて』 「......えっと...ちゃんとバキュン入れてくれます？」 「てか、引きませんか？」 『引かれるレベルなの！？』 『いや、まさか低すぎて引くって話？』 『みっちゃんの年収って、今がMAXとかってわけじゃないでしょ？』 「ああ、まあさすがに今がMAXだったら他のバリバリ現役の男優さん達に殺されますね。MAXは勇輝と付き合う直前かなぁ......」 『MAXでどれくらいだったの？　出だしの人って、１射精3,000円くらいとか聞いたんだけど』 「それは汁専門の、いわゆるエキストラの人ですねぇ。絡みできるくらいになったら１現場10,000円くらいになるかな。会社とか女優さんから指名で役がつくようになったら、30,000円から50,000円くらいに一気にギャラ上がりましたけど」 『掛け持ちとかもあるんでしょ？』 「俺は役柄のせいもあって、掛け持ちできるような仕事って少なかったんですよ。１日かけてのラブラブエッチとか、ドラマ仕立てでシチュエーションだけ変えながら同じ女の子とずっとヤりまくるような現場が多かったんで。だからその分、１本あたりのギャラは少し高めにいただいてました」 『で、年収にしたらいくらくらい？』 「えーっ...年収かぁ...1,200万から1,500万くらい...じゃなかったかと......」 『ウッソ！』 『なかなかの高給取りじゃない！』 「あ、でもね、なかなか家とか借りられないんですよ。給料明細出しても信用してもらえないし」 『それ、ニューハーフも！　ちゃんと家賃払えるって言ってるのに、ほんと部屋って借りられないんだから！』 『そこは芸人もだってばあ。仕方ないから、堅気の仕事してる友達に借りてもらって、又貸ししてもらったり』 「一緒です一緒です。俺らもなかなか部屋借りられなくて、会社名義で借りてもらってますもん」 『1,200万でもそんなんなんだ......』 「MAXで言うなら、断然俺より勇輝のがすごいですよ。去年の年収、たぶん男優の最高額だもん。１本のギャラ高い上に現場の掛け持ちもしてたから」 『ど、どれくらいが最高額なの？』 「いや、俺より上はいると思うけどなぁ...去年は2,500万にちょっと足りないくらいでした」 『セ、セレブじゃなーい！　毎日がパーリーナイッ？』 「いやいやいやいや、俺らなんていつまで稼げるかわからない仕事じゃないですか？　体壊したら即廃業だし、税金とか保険料とかの支払いもありますし。なので、基本的に贅沢はご飯に関してだけで、あとは物凄く大人しい生活です。洋服とかアクセサリー欲しいって気持ちも薄いから、残りはちゃんと貯金してますよ。そこそこまとまったお金があるからこそ、引退してから色々勉強していこうって思えたんです」 『すごい...のね、プロって。やっぱり引退を決意できるくらいの金額、４年で貯められるんだ......』 『想像以上の金額出ちゃって、ほんと引いたし』 「だから引かないでって言ったのにぃ」 『じゃあ、次はその引退後のお話を少し聞かせてもらいましょうか』