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収録スタート【3】

『みっちゃんは、まあ今年いっぱいって引退発表してて、勇輝も来年一年で一応休養に入るわけじゃない? インタビューとか読んでてもCSの男優さんの番組とかで見ててもね、男優やってる人ってやっぱりすごい仕事に誇り持ってるって言うのかな...本気でエロスって物に向き合ってるってずっと感じてたの。だからさ、アンタ達は少々の事では辞めないって思ってたのよ。それが二人ともAV辞めるって事にほんとに驚いたんだけど...どうしても辞めなきゃいけないような具体的な理由ってあるの?』 『それ、アタシも聞きたかった。特に今、年収教えてもらったから余計に。それだけの収入、なかなかもらえる仕事とか無いもんね』 「具体的な理由は、パティシエとして生きていく為です。ほんとに公式で発表してる通り」 『ほんとは、どうしても続けたくない理由があるとかじゃなく? 嫌な仕事やらされる事に我慢できなくなったとか』 「そんな事で簡単に辞めるとか、俺どんだけガキなんですか。それにね、ここはちょっと天狗になってるって思われるかもしれないんですけど、どうしても嫌な仕事なら俺にしても勇輝にしても断れますよ。俺ら、この業界の中でならそれくらいのレベルにいますから。今回の事は、ほんとにパティシエになる為なんですって。ただ、俺自身パティシエになるってのはとっくに諦めてたんで、まさか今更会社からの業務命令で引退させられるとは思わなかったですけど」 『業務命令だったの!? 自分の意思じゃなく!?』 「そう、最初は。まあ、ここはちょっと複雑な話になるんで一部割愛しますけど、うちの所属事務所が業務転換を図る為の長期計画ってのを立てまして、んで俺が飲食部門の責任者になることになったんです」 『それって、嫌ではなかったの? それでも男優でありたいとは思わなかった?』 「......難しいなぁ。他の人間から言われた話なら、まあ断固拒否して事務所辞めてたかもしれない。ただ、それを俺に命令した人ってのは俺の一番の恩人て言っても過言じゃなくて、おまけに俺が心の奥でまだ夢を諦めきれてないってのをわかってての言葉だったから。俺は納得せざるを得なかったんですよ」 『そうなの? 心残りってのは無い?』 「それはね、無い。勿論後悔もしてないですよ。元々俺の中で、『口と指だけででもちゃんと女の子を悦ばせて、ビデオの売上だって取れてる』って気持ちがある半面、『本番もできない俺が、いつまでもAV男優名乗ってるのはおこがましい』って部分も強かったから。人気男優なんて言われてちょっとアイドル的な騒がれ方して、それで雑誌で特集組まれたりしても、結局俺だけは出来損ないなわけじゃないですか? みんな精一杯の仕事してるからこそ人気あるのに、俺は何を調子に乗って浮かれてるんだって悩む事もありましたしね」 『中途半端な仕事で男優は名乗るべきじゃないって事?』 「うん、そうですね。どこかで自分は男優じゃないって気持ちにはなってきてた。なんせほら、隣に現役バリバリで見た目・テクニック・体力の3拍子揃ったトップ男優がいるから余計に」 「この1年くらいは、なんか俺のマネージャーみたいな仕事してる事が増えたもんね。なんかごめん」 「いやいや、あれは俺の趣味。結局ね、俺の中の燻ってる気持ちもわかった上で、社長から引退勧告されたんだと思ってるんです。だから今は、心残りとかってのはまったく無いですよ」 『じゃあ逆に、心身共に絶好調!みたいな勇輝くんは? こんなに人気あって収入も伴ってる仕事を捨てるって事に恐怖心とか未練てのは無いの? それに、辞めて何がやりたいってのも決まってるの?』 「みっちゃんが飲食部門の現場責任者になるんで、俺は事務方の責任者って感じになる予定です。とりあえずはうちの事務所で経理の基礎を教わりながら、あとはみっちゃんが必要とする食材を最高の品質で1円でも安く手に入れられるように、海外の知り合いに口利きをお願いして回ろうと思ってます」 『ちょっと勇輝、知り合いって...例の知り合いとかの事言ってる?』 「ん? 使えるツテはどんな物でも使いますよ、みっちゃんの為になるなら。で、みっちゃんの店が軌道に乗るまでは完全に裏方に回って、そこからは...今度はたぶん、航生の店の準備ですね」 『ああ...そうなんだ? あの頃の知り合いに自分からでも連絡取ろうって考えられるくらい、ちゃんと幸せになったんだねぇ...ヤダ、アタシちょっと泣きそうだわ』 『熊子さんが勝手に感動してるとこ悪いんですけど、今ちょっとビックリするような事言いませんでした?』 『そうよっ! 航生くんも引退したらお店やるの!?』 「そうか、これはまだちゃんと話してない事だった。悪い、航生。この辺ちょっと本格的にバサッとカットしといてくださいね。皆さんなんで言いますけど、航生は男優引退したら、大学で栄養学みっちり勉強してからカフェやることになってるんです」 『そ、そうなのぉ!? こ、航生くんの作ったご飯、食べたい......』 「勉強終わってからもしばらくはみっちゃんの下で修行してからになりますけどね」 『慎吾くんは!? 慎吾くんも引退しちゃうんだよね? ほら、イベントの時にも、これからもずっと4人一緒...みたいな話もしたじゃない? 慎吾くんも一緒に仕事するの?』 「本人もまだ悩んでるみたいなんですけど、俺らは慎吾になら店のコンセプトデザイナーみたいな仕事を任せられると思ってるんです。店のロゴだとか、家具やお菓子を入れる箱や紙袋なんかもアイツのセンスで決めていけたらいいなぁって。その為に、今後はデザインの勉強させるつもりです...本人が嫌がったとしても」 「これ、ほんとまだ俺らの間でだけ出てる話なんで、くれぐれもエクスプレスにメールで問い合わせとかしないでくださいね」 『やだ、シークレット中のシークレットの話を聞いちゃったの?』 「バリバリにシークレットです!」 『オッケー。スタッフさん、ここの話、勇輝のとこから上手い事バッサリ切っといてよ! 後でアタシ達、確認するからね!』 『んじゃ、AV男優のお仕事について、ここからはバッサリカットじゃなくバキュンでいけるような話にいきましょうか?』 「はははっ、音声だけバキュンで消さないで、最悪手元とかモザイクかけてくださいね。俺ら手付きとか腰付きもやっちゃいそうで、ちょっとドキドキしてるもん」 『オッケーオッケー。じゃあバキュンとモザイク連発の少し危ない話に入らせてもらいましょ~』

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