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収録スタート【5】
『勇輝くんの方は、これまでの女性経験て何人くらいいるの?』
「ド直球ですね。えーっと...まず、引かないでくださいね? 仕事絡みじゃなかったら、女性とはセックスしたこと無いです」
『ん? あれ? 勇輝くんて完全にホモセクシャルってわけじゃないんだよね?』
「ああ...うん、たぶん。ご存じの通り、俺女性が相手でもちゃんと勃起しますから。ただ、初めての相手ってのは男性だったし、プライベートでお付き合いらしき物をしたのはみっちゃん以外だともう一人だけで...その人も男性だったんですよ。だから俺は、女性に対しても性的な興奮はするけど、基本的には男性が好きな限りなくゲイに近いバイセクシャルなんじゃないですかね」
『てことは、女性とエッチしたのってビデオの撮影でだけなんだ?』
「いや、熊子さんと知り合ったお店でボーイしてる時に、女性からの指名も少しだけどあったんです。その頃の経験も含めて、セックスした人数は1000人ちょっとかなぁ......」
『じゃあじゃあ、男性との経験人数は? そもそもボーイって何年くらいやってたの?』
「俺、永遠の18歳ですけど6年弱です」
『ん? 意味がよくわかんない』
『ちょっと、ここ絶対カットしといてね。夜の仕事だからね、18歳未満の人間が働いちゃダメなのよ、本当は。でも勇輝がいた店って、ちょっと訳ありで他に行き場所の無い男の子を拾って働かせてあげてたから、まだ18歳になってない男の子も何人かいたの。常連はそういう事情わかってるからわざわざ年齢なんて訊かないんだけど、そんなの知らない一見とかミーハーな客ってやっぱりすぐに年聞きたがるのね? そしたらみんな口を揃えて18だ!って答えてたの。それ聞きながらアタシ達が、勇輝は永遠の18歳だね~なんて笑ってたって話よ』
「俺ね、16になる少し前にその店に入ったんです」
『若っ』
『まあ、そのお店に勤める事になった経緯は聞かないとして、それだけの期間お客さん取ってたんなら、やっぱりかなりの人数になる?』
「ううん、そうでもないですよ。たぶん皆さんが想像してるより少ないです。そういう店って、女性のいる風俗店なんかに比べて、利用するお客さんが圧倒的に限られてますから」
『いや、何よりね、勇輝と夜を共にするっていうのは本当に大変だったの! 誰でも彼でも勇輝とセックスできるってもんじゃなかったんだから』
『熊子さんもお客さんの一人?』
『とんでもない! アタシみたいなチンピラが勇輝の客だなんて、あの頃の常連さんに聞かれたらぶっ殺されるわよ! その店ってね、ボーイを連れ出す為にはものすごい金額の保証金入れて、その上すごく厳しいオーナーの審査に通らないといけなかったの。ボーイとデートができる特別会員になろうと思ったら、人間的にも金銭的にもセレブリティじゃないといけなかったのよ。あの頃の勇輝のお客さんの名前とか聞いたら、みんなビビってオシッコちびるわよ、ビッグ過ぎて。でもさ、会員になれなくても良かったの。アタシは勇輝を見られて、勇輝とちょっとお話ができるってだけで最高に幸せだったわ......』
「熊子さん、さすがにそれ大袈裟だから。そんな大した話じゃないって。まあその頃のお客さん込みで、男性経験は50人くらいだと思います。抱くのも抱かれるのも合わせてですけど」
『熊子さんも、51人目になりたかったの?』
『そりゃあね、勇輝と寝た人の話聞いちゃうと憧れたわよ...みんな、夢みたいな時間だったって言うんだもん。抱いてても抱かれててもね、相手を100%満足させるまで絶対にイカないんですって! 自分はイカなくていいんだって、ひたすら相手に奉仕し続けるんだって! それでも全然押し付けがましくなくて、いつだって嬉しそうにニコニコ笑ってるって』
『やだ、天使』
「だからぁ...それほんとに褒めすぎ。そりゃあね、安くはないお金を払って俺を買ってくれてるんだから、満足してもらいたいって思うのは当たり前でしょ?」
『でもさ、みんな常連になればなるほど勇輝と寝なくなってたでしょ? 一緒に寝るだけとか、ただ美味しい物を食べに行くだけとか』
「ああ、うん...確かに」
『勇輝があんまりイイ子で健気過ぎて、逆に客の方がどんどん尽くしたくなっちゃうのよ。セックスして自分の欲求を満足させるより、美味しい物一杯食べて幸せそうに笑う顔を見たいって思っちゃうんですって。アタシにしたってそうだったもの。勇輝って本当に聞き上手でね、アタシのくだらない話にでもちゃんと言葉を返してくれるのね。相槌じゃなくて言葉なのよ。感想だったり意見だったり...それがもうね、まさに自分の言って欲しい言葉なの! 愚痴を言えば慰めてくれるし、自慢話をしたら自分の事みたいに喜んで褒めてくれるし。体だけじゃなくて、気持ちを満足させてくれる......本当にね、本当に勇輝に会えるのが毎日の幸せだって思えるくらいに憧れてたわ』
「そんな風に思ってくれてたんだ? ちょっと照れるけど...すごい嬉しい」
『熊子さんの勇輝くん愛って...本物なんだ......』
『バリバリの本物よ! 勇輝のいたお店が潰れて、いきなり姿消しちゃって...何人のファンが本気で泣いたか。だからさ、今こうして勇輝が幸せに頑張ってる姿を見られるのが嬉しいのと同時に、みっちゃんが勇輝の相手として相応しいのか見極めてやろうって使命感に燃えてるからね!』
「熊子さ~ん、俺、もう散々色んな人からそういう目で見られてきてるんだけど」
『勇輝を手に入れるっていうのはそういう事なんだって覚悟してなさい!』
「熊子さん、大丈夫だから。そんなに心配してくれなくても、俺は本当に幸せだよ? さっき熊子さんも自分で言ってたじゃない...あの頃のみんなに自分から連絡取れるくらい幸せなんだって。みっちゃんは俺に、唯一無二の居場所をくれたの。俺しかいらないって言ってくれたんだよ。もう明るい夢なんて見る事無いって思ってた俺に、夢をくれたんだ。だからね、俺は一生みっちゃんと生きていきます」
『......熊子さん、泣いちゃダメだってば!』
『お店にいた頃の勇輝くん、そんなに素敵だったんだねぇ...熊子さんがこんなメロメロになっちゃうなんて』
『熊子さん、大変! ちょっとマスカラ取れてるから! お直しお直し!』
『じゃあ、お店の話が出たついでだから、熊子さんのメイク直しの間にちょっとだけ当時の慎吾くんの話も聞いていい?』
「はい、いいですよ」
『じゃあ、もっとついでに航生くんの話も聞いていい?』
『ちょっと! そこはアタシも聞きたいから、メイク直し終わるまで待ってなさい!』
『えーっ!? じゃあ仕方ないわね。二人共、ちょっと疲れてないですか?』
「あ、えっと...まあ、少し?」
「とりあえず少し喉が渇いたかな」
『ごめんなさい。じゃあここで一回休憩取りましょうか。15分くらいでいけそう?』
『ちょうど良かったぁ。アタシも興奮し過ぎて脂浮いてきちゃってたし、一回ヒゲも剃ってきたかったの~』
「じゃ、俺ら一回楽屋戻りますんで、収録再開の時にまた声かけてください」
「お茶飲んできますね~。また後からよろしくお願いします」
『は~い、では皆さん、15分の休憩に入りま~す』
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