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男の嗜み?収録再開【4】
『んもう...勇輝くんがアワアワしてるのもっと見てたかったけど、他にも色々話を聞けってスタッフがうるさいから......』
『そんなカンペ、出てないわよ!』
『自分が聞きたいだけのくせに~』
『......そうですけど、何か? いやね、AVっていろんなジャンルあるじゃない? 世間的に見たら、ソフト路線専門のみっちゃんと、なんでもありの勇輝くんてイメージだと思うんだけど、そんな勇輝くんにNGってあるの?』
「それは設定って意味? それともプレイ?」
『どっちも』
「好きな設定・嫌いな設定はあるけど、設定自体についてのNGは無いかな」
『やっぱり好き嫌いはあるんだ?』
「それはありますよ~。俺だけじゃなく、みっちゃんも勿論あるだろうし、他の男優さんでもあるはずですよ。年齢的に相当無理あるのに、『昔本気で好きな先生がいたから』とかって理由で女教師と不良生徒とかって設定にガチで喜んでる先輩もいたし」
『じゃあ、勇輝くんは?』
「......たっぷり時間をかけて優しく女の子を気持ちよくさせてあげるのがやっぱり好き。熊子さんは覚えてるかもしれないんだけど、俺と触れ合う人には一瞬でもいいから幸せを感じてもらいたいっていうのが昔からの信条だったから」
『あ、さっき自分の快感よりもとにかく相手を気持ちよくしてあげる事ばっかり考えてたって熊子さん言ってたもんね』
「自分も気持ちよくなれればそれは一番幸せだけど、それを二の次にしてでも相手を気持ちよくしてあげたいってのが本音。特にみっちゃんと付き合うようになってからは、そんな思いが強くなってるかもしれないです。俺は家に帰れば泣きたいくらい幸せにしてもらえるから、だったら女の子にその幸せをお裾分けしてあげたいなぁ...とか? ごめん、なんかえらそうなんですけど......」
『そんな風に幸せにしてあげちゃったら、相手の女優さんに惚れられちゃったりしない?』
「俺はまず無いですね。撮影に入ってる時とそれ以外の時とで顔も雰囲気も全然違うから、ちゃんと芝居としてのセックスだったって相手も割り切ってくれるみたい。それで言うなら、みっちゃんは相手に勘違いされて凄かったよね?」
『......ああ、そうだね。俺は結構惚れられるタイプだった。勇輝に比べるとオンとオフの差が少ない...というか、カメラ回ってなくても現場に入った瞬間からが俺にとってはオンだったから、撮影前の雑談とかの時はほんとはもう別人なんだよ。当時の俺は特に他人に優しくないというか無関心な人間だったから、ほんとの俺を消して現場に入るわけ。そしたら女優さんは、いつだってニコニコしてる俺しか見ないでしょ? それが俺なんだって勘違いしちゃって、擬似恋愛のはずのセックスが相手にとっては本当の愛情の行為みたいに思われるって事は何回かあった」
『みっちゃんて、絶対にホストのが向いてるわ。今からでも転職考えたら?』
「無理無理! 俺、女の子に貢がせるとか絶対やだもん。それに、相手の気持ちを弄ぶような事はしたくないし......」
『でも、みっちゃんて天然のタラシって事でしょ? 偽りの優しさが本物に見えちゃって、相手がコロッと騙されるんだから』
「いや、騙してないから」
『もしかしてさ、アンタ勇輝の事もコロッと騙してるとかじゃないわよね?』
「だから、熊子さん怖いですって。コロッと騙されてくれるほど、コイツ頭の弱い男ですか? てかね、こっちが本気で押して押して精一杯押してるのに、ずーっと逃げられてたんですから。本気で恋愛するのはこんなに辛くて苦しいのかって悩みすぎて、俺体調崩したんですよ?」
「あの頃は俺もみっちゃんの事を好きだって気持ち忘れようとして、体も気持ちもボロボロになる手前まで仕事詰め込んでたなぁ」
『そうだったんだ!? じゃあさ、好きな設定はラブラブだとして、嫌いとか苦手なのは?』
「やっぱり、レイプとか痴漢物は苦手です。相手を大切にしてあげたいし、プライドを傷つける行為ってどうしてもなかなか役に入り込めない。予行演習できるようになって、やっと『プレイの一環』て割り切れるようになった感じかも。それでも、みっちゃんと俺の間には絶対的な信頼関係と愛情があるから、それを普段とは違った表情が見られるプレイだって思えるけど、女優さんに対してはそうじゃないからすごく気を遣いますよ。笑ってるけど本当は傷ついてないかなぁとか、どこか体痛くなってないかなぁとか」
「勇輝ね、ほんと相手の女優さんへの気配りがすごいんですよ。口内発射でフィニッシュの時はカットと同時に水と洗面器持って走るし、顔射したら急いで温かいおしぼりとタオル取りにいくし。スタッフよりも早いもんな」
「バスローブすら着ないで、プラプラさせたまんまでダッシュ!」
「あ、それで言うなら、薬でラリってる所を輪姦する設定とか、俺嫌いだったなぁ...実際、そんな飲んだり塗ったりするだけでガンぎまりするような薬なんてのは合法的には手に入るわけなくてね、女の子は必死にキメてる演技をしてるだけだから、別にその事にはなんも思わないんだけど...薬でラリってる女を見たい、ヤりたいって男が結構多いんだなぁって事自体が嫌だった」
『でも、ヘロヘロになりながらも、もっともっとって我を忘れておねだりするってシチュエーションは、ある意味男のロマンなんじゃないの?』
「俺は薬なんかに頼らずに、愛情とテクニックでヘロヘロにしたいもん。もしそれを惚れてる人間に使ったとして、それって自分に溺れてるのか薬に溺れてるのか、俺自信無くなるよ。快感を高める為にアロマオイルでマッサージし合うとか、リラックスと催淫効果のあるお香を炊くとかってくらいはするけど」
「大切なのは、二人ともが昂ってるってとこだよね。薬が抜けたらさ、使った方も使われた方もすごい落ち込みそう......」
『なんか二人とも、その辺熱いのね』
「うん。俺の大切な場所、安易にドラッグセックスに溺れた奴らのせいで無くなっちゃったから」
『......そうだったわね。あの事件がきっかけだったんだ...忘れてたわ』
「ここはまた編集しといていただけるとありがたいんですけどね、俺と慎吾がいた店、薬使ったセックスに嵌まったボーイがお客さんにも次々に薬勧めて逮捕されたのをきっかけに閉店したんです。家宅捜索で、信じられないくらいの量のセックスドラッグが押収されたんですって。当時はまだ違法じゃなかったマッシュルームから始まり、大麻にラッシュにMDMAにLSD...ダウン系もアッパー系も、片っ端からセックスの時の快感を求めて試してたらしくて」
『そうなんだ...だから安易に媚薬使ってのキメセク系ビデオは嫌い?』
「そう。さっきの話に戻るんだけど、嫌いってだけじゃなくて、これが俺の出演NGだったりします。何回か出演してみたんだけど、やっぱり我慢できなかった」
「まあね、脳が無理矢理快感を覚えさせられるセックスよりさ、やっぱり気持ちで快感は高めていきましょうよ...って事でいい?」
『ちょっとだけ真面目な話になっちゃったね。でも、結構大切な話かも。ヤバいとこはカットするにしても、やっぱりここって流したい』
『まあ、その辺は大人の話し合いと編集にお任せするとして...そろそろ大事な宣伝のお話にいきますか?』
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