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好きだから【12】

「なんかさ...」 「うん?」 「女の子って...対面座位って...好きじゃん...」 「ああ、確かにそうだね...女の子が観るのを意識してるビデオだと、大概入る体位かも。ていうか、俺も好きだけどさ」 「ああ、そうか...勇輝も...好きだったな...」 二人で抱き合ったまま、小さな声で囁き合う。 もうどれくらいこうしているだろう...真ん中を深々と貫かれているせいで身動ぐ事もままならないのに、いつの間にかそれが全く苦にならなくなっていた。 「どうしたの、急に?」 「いや...俺も...このカッコ...好きかもなぁと...思って...」 抱く立場の時は、特別好きな体位というわけじゃなかった。 大きくピストン運動するには不便だし、胸を触る事もぺニスやクリトリスに触れる事も決して簡単じゃない。 ただ相手が悦び、俺に必死でしがみついてくる事に精神的な満足感を得ていただけだ。 けれど立場が変わり、こうして勇輝に抱かれてみれば、なんだかこの体位を好む気持ちがわかってくる。 体で得られる快感ではなく、愛されているという安心感と多幸感が『精神的』な快感に繋がっているのかもしれない。 自分が意識することで苦痛を和らげようとしても叶わなかったのに、こうして勇輝と抱き合っていればその苦痛すらも快感のように思えた。 この痛みや圧迫感こそ勇輝が俺に欲情している証で、苦しさこそが愛されている証拠だと。 そう考えれば、俺と勇輝を深く繋いでいる太い楔のなんと愛しいことだろう。 「なあ勇輝...もういいんじゃないかな?」 「ん? 大丈夫そう?」 「うん、平気っぽい。なんかさ...勇輝をもっと感じたいんだよな......」 「......わかった。じゃあ、ちょっとだけ動いてみるからね。まだ無理だったら言って」 背中を抱いていた腕が下に向かい、腰の下で組まれた。 そのまま、ユラユラとゆっくり腰を揺さぶられる。 「あっ...あっん...んっ......」 繋がっている所よりももっと内側から、ピリピリと甘い痺れが体を駆け抜ける。 決して大きな動きではない。 ほんの僅かに内側の粘膜が擦られ、奥の方をグリと押されている程度だ。 けれどたったそれだけの動きに、薄く開いた唇の間からは勝手に熱い吐息と声が漏れた。 「どう?」 俺の体を揺らす動きはそのままに、勇輝の唇が耳たぶを優しく食む。 その感触に肩を竦めながら、勇輝の髪に指を通した。 「なんかこれ...気持ちいいかも...俺の腹の奥で...勇輝のが...ドクドクしてんの...わかる...」 少しずつ俺の体の揺れが大きくなる。 勇輝は右腕を後ろにつき、ゆるゆると腰を動かし始めた。 中を擦る強さと角度が変わる。 「うんっ...あっ...勇輝ぃ...」 中をゆっくりと、けれど大きく抉られる感覚に背筋がゾクゾクした。 思わず仰け反り倒れそうになる体を勇輝の腕がしっかりと受け止め、そのままそっとマットレスに横にされる。 「なんか、イイ顔になってきた...」 「うん...ヤバい...やっぱ中擦られてんの...気持ちいいみたい...」 「自分でもわかんじゃない? だんだんさ、もっと欲しいって俺のをキュウキュウ締め付けだしてんの」 確かに俺の体が変わったのはわかった。 粘膜がうねり絡み付いているのか、勇輝のぺニスの形も、ドクドクと大きく脈打っていることもしっかりと伝わってくる。 「なあ...勇輝ぃ...」 「うん、何?」 「普段勇輝が好きなの...俺にもしてみてよ...」 「えっと...したげたいってか、俺もしたいのはやまやまなんだけど...まださすがにちょっとしんどいかも」 「なんで...?」 「んもう、自分が俺を抱く時の事思い出してみてよ。結構無茶な事言ってるのわかるってば」 言われた通りに思い出してみる。 ベッドの上をのたうち回り涙を浮かべる勇輝の腕をしっかりと押さえ、逃げる体を許さずに腰を激しく打ち付ける...俺。 確かにガツガツしてて、なかなかハードかもしれない。 けれど、少しずつでも快感を拾えるようになってきた俺の体は、自分が思っているよりもずっと貪欲らしい。 もう今与えられる温い刺激では物足りなくなってきてる。 「ガツガツきて...いいよ...足りないんだ...もっとして...もっと激しくして、もっと...ほんとの勇輝見せて...」 驚いたように目を丸くしている勇輝は、それでもすぐにいやらしい顔に変わりニッと笑った。 体勢を整えると、改めて俺の脚をグッと抱えあげる。 「せっかく優しくしてあげるって言ったのにぃ」 「俺は...ほんとのお前が見たいって...言ったはずだけど...」 勇輝の手が、俺の腰を強く掴む。 「じゃあ、充彦が俺を抱いてる時とおんなじように、すっごい激しくいやらしく攻め倒してあげる...泣いて許してほしがるくらい」 言葉が終わるのを待つまでもなく、勇輝は一番奥を目掛けてドンと腰を強く打ち付けた。

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