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クイーン・ビー・エクスプレス 第8回【3】
「さてさて、もへーさんからもう一つの質問です。『あー、もうっ! 今すぐ襲いたい!...て相手に思うのはどんな時ですか?』という事なんですが......」
「こいつらは一言で終わるんじゃない? 『常に!』 以上!」
「そんな事ないです! その辺は、俺なりにちゃんとわきまえてます」
「そうなん? 俺はエブリタイムオッケーやのに」
「一応、慎吾さんが絵を描いてる時とかは、少なくとも邪魔はしないぞと決めてます!」
「......航生、やっぱりバカだな」
「うん、間違いなくバカだわ」
「ちょ、ちょっと! なんでいきなり人の事バカ扱い......」
「あのなぁ...『決めてる!』って事は、決めとかないと襲っちゃいそうって事なんじゃないの?」
「......あ」
「気づいたか、バカめ。しかし、絵を描いてる時の何に下心を揺さぶられるわけ?」
「下心って...あの...たぶん、ヤキモチなんだと...思います」
「ヤキモチ!?」
「絵を描いてる時の慎吾さんて、俺が外に出たり風呂に行ったりしても気づかないくらいそこに没頭してるんです。普段俺に見せてる可愛いフニャフニャの顔とも、ビデオで見せてるイヤらしくて男らしい顔とも全然違う、なんだか神々しいくらいに真剣で綺麗な顔なんですね。そんな時に慎吾さんを邪魔しちゃいけないってわかってるんですけど、俺に見せない顔したり俺より何かに夢中になってるって姿見てると...ちょっとイラッとするというか......」
「ムラッとする?」
「......はい。もっと俺に構え!とか思っちゃう事があって」
「あー、俺それわかるわ。俺も勇輝が本気で料理してる時はちょっかい出しちゃダメってわかってんだけど、もう少し俺の事も考えてくんない?って襲いたくなる。頭の片隅にも自分の影が感じられないのが、妙に寂しくて不安になるんだよな?」
「充彦の場合は、ほんとに襲ってくる事ありますけど?」
「まあそれは、我慢の限界って事で」
「一緒にしないでください。俺はちゃんと我慢してますよ! 力業で流して丸め込もうなんてしませんから」
「お前、人聞きの悪い......」
「力業で丸め込む...うん、確かに。お前上手い事言うな」
「勇輝がまんまと流されるだけだろ!」
「まんまとってなんだよ!」
「はいはいはい、わかったって。そしたらみっちゃんは、勇輝くんが料理してる時でエエの?」
「まあ、他にもあるっちゃああるんだけど、俺の場合は大抵『襲いたい』って時は『襲っちゃえ』になるからなぁ」
「襲っちゃえは他にどんな時があんの?」
「仕事終わって帰ってきた勇輝から、化粧品の匂いがした時かな」
「それもやっぱりヤキモチですか?」
「まあ、そういう事なんじゃない?」
「せえけど、そういう仕事やねんからしゃあないんちゃうのん?」
「ああ、別に外で女の子とセックスしてきた事へのヤキモチじゃないよ」
「ん? どういう事?」
「俺以外の匂いがするのが嫌なの。俺からは勇輝の匂い、勇輝からは俺の匂いだけがしないと嫌だから、俺の匂いで直ちに上書きしたくなる。ついでに、女の子の感触が残ってんのも嫌だから、それもぜーんぶ上書き」
「あ、さっきの話になんとなく繋がる。俺の唇に勇輝さんの感触が残ってるの嫌だから上書きするって......」
「そうそう、理屈は同じ」
「なんかさぁ、みっちゃんてもっと大人でどっしり構えてるんかと思うててんけど、案外嫉妬深くて子供っぽい?」
「幼稚なのは普段見ててもわかるじゃないですか」
「お前なぁ。子供っぽいと幼稚じゃ、えらい違うじゃないか!」
「みっちゃんの場合、大差ないですよ」
「また始める~。もうええってば。みっちゃんて、嫉妬もせえへんし怒れへんし、気持ち悪いくらいに物分かりのエエ人なんやと思ってたけど、ちゃんとした人間やねんね?」
「......ちゃんとした人間にしてくれたんだよ、勇輝が。執着心無いから嫉妬もしたこと無かったし、いっつもヘラヘラしてたもん。でも勇輝を手に入れたい、絶対手離したくないって思ったら、んもうダメだったね。一日の最後に勇輝触るのは俺、最初に触るのも俺でないと嫌になって、そしたら他人の匂いしたら全部俺の匂いでいっぱいしなきゃ気がすまなくなった」
「すごいなぁ...勇輝くん、ほんまに愛されてんねんね」
「慎吾さん、俺だって同じ事思ってますよ?」
「うん、知ってる。俺がメッチャ愛されてるんはちゃーんと知ってる」
「慎吾くんは? 襲いたいってのがどういう立場での話かはわかんないけど、そんな気分になる事ってある?」
「タチとしてはもう無いかな...好きになったらなっただけ、抱きたいんやなくて抱かれたいって気持ちが強なってきたから。ただ、ネコとしてはあるよ」
「どういう時?」
「さっき言うたやん? 俺、航生くんに求められるんやったらエブリタイムオッケーやって。おまけに、他人の匂いがしたら上書きしたいとかってくらいに考えててくれるんやったら、ほんまにいつでも航生くんの匂いでいっぱいにしてくれたらええわけよ。ところがやな、俺がネコでの撮影終わって帰ってきたら、体の事気にしてエッチしようとせえへんねん。俺からしたら、そんなんどうでもエエからとにかく航生くんを感じとうてしゃあないのに。そうなったら、『オラ、襲うてまうぞ!』とか思う。まあ...俺がそこまで思うた時は......」
「あ、襲うだろ?」
「はい、襲いま~す」
「そうなんですよ...俺、必死で我慢してるってのに......」
「まあ、我慢すんなって事なんじゃないの? エブリタイムなんだから。で、勇輝は? 俺を襲いたくなるのはどんな時?」
「ん? 無いよ」
「えーっ? 勇輝くん、なんかカッコつけてへん?」
「カッコなんか付けてるわけないだろ。ただ単に、襲いたくなる前に絶対俺、襲われてるから」
「それって結局......」
「出た! 万年発情期のセントバーナードだ!」
「まあ、したくない時なんてのも無いから、襲われて嫌なわけもないんだけどな。そう考えたら、俺もエブリタイム?」
「こっちも発情期のシャム猫だった......」
「という事で、勇輝くんだけは襲いたいとは思えへんけど、常に襲われたいんやそうで~す」
「こんな答えでいいのかな...じゃ、次の質問いきますか?」
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