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サービス、サービス!【勇輝視点】

子供みたいなウフウフキャッキャな写真と、大人っぽいシットリシッポリな写真を撮った。 後ろからは黒木くんのカメラ、前からは煽り状態で萎びたバナナに向けられた隠しカメラに全裸をバッチリ捉えられ、一先ず温泉での撮影を終える。 睡眠時間が少ない中で長く温泉に浸かってたせいか、思ってた以上に体が重い。 本当ならこのまま夕食までの少しの時間だけでも部屋で休憩したかったんだけど...... なんの因果なのか、このまま急いでプレイルームに行き、卓球をさせられるらしい。 それも『脱衣』なんだって! ......いや、脱衣卓球って、そもそも何? 体を拭きながら頭を一人捻ってみるけど、イマイチよくわからない。 山口さんから説明を受けた慎吾や航生は、『えーっ、やだよぉ』なんて言いつつ二人で『バカバカしい...』と顔を見合わせて溜め息をついてるから、どうやら何をするのかわかってるんだろう。 「あ、黒木くんは厨房で料理の前撮りさせてもらうらしいから、こっからは俺がご案内しま~す」 着てきた服を改めてきっちり着直した俺達に、相変わらずニヤけ顔の山口さんが言う。 「とりあえず、フロント行って浴衣選ぼうか」 「浴衣選ぶ?」 「うん。ここのホテル、すごいのよ。男性用も女性用も、サイズやら柄やら好きな浴衣選ばせてくれるんだって。みっちゃんサイズの浴衣とかなったらうちで用意しないといけないのかなぁとか思ってたんだけどね、外国人観光客もいるからって事でちゃんとトールサイズにも対応してるらしいんだよ」 浴衣...か。 撮影でしか充彦の和装は見たことないけど、細身の割に違和感なんてなくて、やけに色っぽかった印象がある。 それも、イマイチ丈の足りない物を着ている時ですらそれだったんだ。 体にピッタリ合った浴衣なら、どれほど男振りが上がるんだろう...... かつての記憶と目の前の姿を擦り合わせれば、それだけでトクンと胸が跳ねた。 その充彦が内線で匠さんの奥さんに浴衣を選びに行きたい旨を伝えると、もう男性用の物を用意して待ってると言ってくれたらしい。 ついでに、プレイルームもとっくに貸し切りにしてあるとの事で、俺達は急いでフロントへと戻る。 奥さんは、すぐに俺達をフロントそばの衣装部屋らしき個室へと通してくれた。 「充彦さんのサイズだけはちょっと色の種類が少なくて申し訳ないんですけど......」 そんな事を言いながら、和箪笥からいくつか畳紙を取り出して充彦の前に並べる。 特にサイズを気にしなくてもいい残り3人は、吊ってある浴衣から好きな物を選べばいいらしい。 「へぇ...男物でもこない鮮やかな色のんもあんねんねぇ......」 慎吾が手にしたのは、爽やかな若竹色の地に白で柳らしき木が染め抜いてある物。 それを肩に当てながら、姿見で顔映りを確認している。 「奥さん奥さん! 俺、この浴衣やったらどうですか?」 あまりに突飛すぎるとでも思ったのか、それをフワリと羽織って匠さんの奥さんの前に立つ。 奥さんは優しい顔でニコリと微笑むと、傍らから何本か帯を手に取った。 「慎吾さんや勇輝さんは肌がとても白いので、少し派手に思うかもしれませんけど鮮やかな色の浴衣、とてもお似合いですよ。逆に色の浅黒い充彦さんや航生さんは、男らしい暗めの落ち着いた色味の物を選ばれた方が色気が出て素敵だと思います」 慎吾の腰に、奥さんは次々帯を当てていく。 「こちらの、銀鼠の帯なんかどうですか? 華やかさの中にも男っぽさが出ると思いますよ」 頷く慎吾は、奥さんの助けを借りながらその浴衣を着付け始めた。 「あ、でもこの後、皆さんゲームか何かをなさるんでしょ? 気崩れてしまいますねぇ......」 気崩れるも何も、『脱衣』なんですよ、奥さん! 一体何をするルールなのかはわからないけど、とりあえず脱がされるんだって事くらいは俺でもわかる。 「俺が着付けできますから、そこはご心配なく。今だけ俺以外のみんな、着付けてやってもらえますか?」 まさかガッツリ脱いでる所に充彦の友達の奥さんを呼びつけて『浴衣着せて~』なんて言うわけにはいかない。 久々過ぎてちょっと帯の結びは雑になるかもしれないけれど、ここは全面的に俺が着付けるしかないだろう。 「さて...と......」 他3人は奥さんに任せ、俺も浴衣を選ばせてもらおう。 もっとも、この衣装部屋に入った時から俺の目は一枚の浴衣に釘付けで、それ以外を着るなんて事は欠片も考えなかった。 衣紋掛けに指をかけ、スルリとそれを手に落とす。 こちらも男性用にしてはなかなか珍しい色。 濃い緋色の生地には、黒い染料で紅葉が描かれていた。 一見派手にも思ったけど、いざ体に当ててみれば俺の妙に甘ったるい顔には良く合っているように思う。 真っ黒の帯を合わせるといくらか甘さも派手さも抑えられ、なかなか悪くない。 粋だのなんだのって物はまったくわからないけれど、ありがたい事に俺は肩幅も胸板もわりとしっかりあるから、敢えてのこの色を男らしくもセクシーに見せる事ができるだろう。 腰紐を一本借り、早速鏡を覗きながら袷を丁寧に調整してその紐で留める。 「あかん...航生くん、かっこよすぎ......」 さすがに慣れてるのか、奥さんの手でさっさと浴衣に着替えた慎吾が、溜め息混じりに呟いた。 その目線の方向を見る。 ......ああ、確かにこれはカッコいいな... 生成りの、淡いクリーム色に薄墨のようにかすり十字の柄の入った浴衣。 さすがに細すぎたのか腰回りには手拭いを詰めてもらってるみたいだけど、長い手足を丁度良い長さで覆っているそれは、まるで誂えたようにぴったりだった。 それに刺子の白がアクセントになった黒い帯がまた脚の長さを強く印象付ける。 「航生、ほんとすっごい似合ってるわ」 「ほんとですかぁ? 頭悪そうに見えないですか?」 「それは前に着た浴衣が寸法合ってなかった上に着付けの人が下手くそで、細すぎるお前の腰をちゃんとカバーできてなかったからだろ? 現に慎吾見てみろよ。爆笑するどころか、ヤりたくてウズウズしてるって顔だから」 少し照れる航生に笑いかけながら、俺は帯を端から丁寧に半分に折っていく。 新品ではないおかげで、ぴっちりと綺麗な折り目がついた。 帯の端を少し残し、それをきつめにグイグイと腰に巻き付けていく。 ちょうど3周巻いた所で垂れを作り、予め残した部分と合わせて丁寧に結ぶ。 きっちりとできた三角の結び目が解けないようにさらに一度強く引き絞ると、ぐるりとそれを背中へと回した。 ......う~ん、少し乱れたけど、久々にしてはまあ納得の出来でしょ。 袷を整えてから帯をグッと前下がりにすると、最後に背を確認して衿を少しだけ抜く。 「はぁ~、暑い、疲れた、もう嫌だ...すっごい緊張したし」 出来上がった途端、緊張が解けたせいなのか一気に体温が上がり汗が滲んでくる。 せっかく着たのに早速脱ぎたくなってきた。 「おっ、さすがに勇輝は色っぽいな...そのうなじ、吸い付きたくなるわ」 後ろから聞こえた声に急いで振り返る。 濃紺の地に描かれてるのは...吉原繋ぎの柄。 少し大きめに開かれた袷を辛うじて留めているのは銀煤の帯。 航生が着るには少し渋すぎるだろうその色と柄は、充彦の男らしさと色気をいつもより強調して見える。 「ヤバい...充彦、かっこよすぎ......」 さっきの慎吾と同じ言葉を呟くと、俺もなんだなヤりたくてウズウズしてた。

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