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クイーン・ビー・エクスプレス第2回
「どうも、皆さんこんにちは、航生です。本日のクイーン・ビー・エクスプレスは俺一人でお送りします」
「お~い、コラコラ。カメラちゃんと定位置向けろよ」
「ダメです。そっちはネット配信上不適切な画像ですから」
「お前ふざけんなよ。不適切ってなんだ、不適切って。スタッフさ~ん、こっちこっち。あ、どうも~。ネットでははじめまして、みっちゃんで~す」
「どうも~、勇輝で~す」
「......あのね、なんでみっちゃんの上に勇輝さん座ってんですか」
「ん? 離れてたくないから?」
「普段はちゃんと一人で座ってるでしょ! 仕事中なんだから、普通に座ってくださいよ!」
「まあ、そう言うなって。これもだなぁ、見てくださってる皆さんへのファンサービスってことで」
「フ、ファンサービスって...」
「こないだメール募集したろ? 早速質問が来たんだよ。えっと...はい、ハンドルネーム『航生くん、邪魔』さんからで...」
「勇輝さん、その名前マジですか? 俺、さすがにちょっと立ち直れないかも...」
「勇輝ぃ、あんまりいじめてやるなよ。今アイツ、その辺一番ナーバスになってんだから。ほんとのハンドルネームは『航生くんも嫌いじゃないよ』さんからです」
「うううぅ...勇輝さんの鬼ぃ...」
「うっせぇ。じゃあメール読みますね~。『はじめまして。勇輝くんとみっちゃんは現在同棲中だと雑誌で読みました。部屋での二人って、どんな感じなのですか? やっぱりラブラブ? それとも仕事で疲れてるから、案外サッパリアッサリした感じ?』というね」
「んで、こうなりました~。まあ...こんな感じだよな?」
「そうだねぇ。飯食ってる時以外はソファで僕がみっちゃんに跨がってるか...」
「ベッドで俺が勇輝に跨がってるかだろ」
「皆さん、これね、ただのリップサービスとかちょっとふざけて言ってるとか思ってるでしょ? マジですからね! ほんとにこんなんですからね! 俺初めて見た時ほんと驚きましたもん。飯食ってる最中でも、急に甘えん坊になった勇輝さんがいきなりみっちゃんの膝に乗りに行くし...」
「お前なぁ、あんまり言うなよ...照れるだろ」
「あのねぇ、照れてないで、少しは恥ずかしがってくださいよ...しかし、ほんと無駄に仲いいですよね」
「...お前、なかなか言うようになったね...後で覚えてろよ」
「はいは~い、もうこの瞬間に全部忘れました。二人って一緒に暮らしだしてどれくらいになるんですか?」
「なんか航生、変に逞しくなってね? これじゃまるで、ツッコミ一人にボケ二人みたいになってんじゃん」
「本来は僕ら二人がツッコミで、航生がボケ兼イジラレのはずなんだけどねぇ」
「あなた達と一緒にいれば、嫌でも逞しくなります! そもそもイジラレって何ですか、イジラレって。え、それで実際今でどれくらいですか?」
「もうボチボチ3年になるかな?」
「うん。来月マンションの更新だし」
「世間的には『倦怠期』とか言われる時期なんじゃないんですか? 二人に倦怠期とかって無いの?」
「ああ、無いねぇ...まあ勇輝はわかんないけど、少なくとも俺、勇輝に対して嫌だとか飽きたとか思った事無いから」
「僕も全然気持ち冷めるとか無いなぁ。てかね、どんどん好きになる一方だからさぁ、このままずっと一緒にい続けたらどんだけ好きになるんだろうって心配になるくらいだもん」
「相手をずっと好きでいる秘訣とかあるんですか?」
「秘訣? 特別な事はなんもないよねぇ」
「なんせ口喧嘩すらまともにしたこと無いもんな」
「ああ、無いね、確かに。なんだろうなぁ...『こんなことしちゃって、みっちゃん怒らせちゃうだろうな』とか思う事やらかしたりもするんだけど...な、航生? 嫌がるかな、怒るかなとか思って胸が痛くなってても、結局は全然怒らないんだなぁ」
「あれじゃない? 敢えて聞かなくてもいいと思う事は聞かない。必要が出てきたらその時は相手から話すだろうと思ってるし。疚しい事が無いから聞かれれば答えるけど、必要無ければ聞かなくてもいいかなって。俺らの間には疚しい隠し事が無いってのが大きいと思う。だからね、携帯とか勝手に見られても平気だもん」
「俺もそうだな。ロックもしないで部屋の中にスマホ放り投げてる。んで、みっちゃんが隠し事してるなんて考えた事も無いから、携帯見たいとも思わない」
「は、はぁ...そういうもんなんですか...」
「あ、航生は超恋愛初心者だもんな」
「俺もそうですけど、二人もそうでしょ!?」
「まあね...みっちゃんに会うまで、まともな恋愛経験無いわ」
「俺も右に...じゃないや、上に同じ」
「俺と似たようなもんじゃないですか!」
「決定的にお前と違うのはなぁ...すでに運命の相手に出会えてるかどうかだ、ば~か」
「バカって何ですか、バカって!」
「はいはい、二人とも落ち着け落ち着け。あとさ、仲良くいるにはあれ大事だよ...やっぱり相手を全力で愛する事」
「あのぉ...それは気持ちの事を言ってます? それとも体?」
「全力で思いを込めて体で愛し合うに決まってんじゃん。やっぱり体の相性って大事だと思うもん」
「そこはやっぱ大事よ、うん。上手い下手ってだけじゃなくてさ、抱き合ってるだけで気持ちが昂ってくるからね」
「あ、じゃあそっち方面のお話がちょろっと出てきたんで、メールいきましょうか? 二人にちょっと下の方の事に関しての相談が来てます」
「お、エッチなお話?」
「よ~し、任せとけ。つか、女の子からのエッチな相談を俺らで解決できんのかな...」
「アホアホエロエロバカップルな二人にはうってつけの相談です」
「...お前、後で教育的指導な。またビデオ回してやる」
「い、いやだなぁ...冗談ですよ、ネタですよ、アハッアハッ...はい、メール読みますっ!」
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