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戦士の休息は突然に【充彦視点】

いよいよ写真集の撮影が近づいてきた。 東京のスタジオで3日、少し淫靡でミステリアスな和テイストを出したいからとの事で京都で3日、これに予備日を入れて一週間ぴっちり撮影が予定されている。 本来撮影はそれぞれ2日で良かったのだが、付属のDVD撮影も併せて行う事になったらしい。 この間、少し興奮気味なメールが中村さんから来ていた。 この『付属DVD』ってのが実はなかなか曲者だ。 今度俺達プラス航生の3人で発売する事になっているビデオの予約数が、現段階で想定のン倍になっているらしい。 予約特典という事で、今回初めてトークイベントの参加券を付けたせいかもしれないが、どこかのネット通販サイトでは、年齢制限のある作品では初めて総合予約ランキングでトップ10に入ってるんだそうだ。 この事に旨みを感じたのか、出版社が当初『おまけ』の予定だったDVDを正式に1アイテムとしての販売に変更した。 DVDの予約状況に、一定の販売数を確保できる目処がたったんだろう。 そこでDVDの内容がらコメンタリー中心のメイキングに、軽い絡みを交えたストーリー部分を追加することになったらしい。 写真を撮り、ビデオを撮り...なかなかハードなスケジュールになりそうな予感... というわけで、突然撮影までの3日間、俺達には『完全オフ』が言い渡された。 これは社長命令で、既にスケジュールは調整済み。 いきなりそんなに休みなんてもらってもやることが無い!と文句は言ってみたものの、社長からは『こないだぶっ倒れたくせに、偉そうな事言うな』と激怒された。 まあ、倒れたのは事実だし怒られるのも当然だから、俺にそれ以上何も反論はできるわけもない。 実際、気管支炎でガッツリ寝込んだ僅か3日間で筋肉の張りはなくなり体力も落ち、元々痩せ型の俺はすっかり貧乏神みたいな容姿になったのだ。 おかげで体調と体力と体型が完全に戻るまでの10日ほど、イメージビデオの撮影が延期になってしまった。 それでもこのイメージビデオは...まあ、勿論褒められた話ではないけれど、スタッフも監督もビーハイヴ社員だし、共演者は勇輝と航生という事で、ちょっとスケジュールをキッツキツに詰め込んでもらってなんとか発売日の変更は免れた。 しかし、当然写真集の方はそうはいかない。 なんせ、世界的に評価されている、あの度会馨がカメラマンなのだ。 こちらの体調不良が原因で撮影スケジュールを変更するなんてことは絶対に許されない。 しかしいきなり『休みだから』と言われても...本当に困る。 定時で働くサラリーマンとは違うから、よほど撮影が詰まってない限り元々俺達には案外時間に余裕があるのだ。 それでも、撮影で本番のある勇輝であれば多少疲れが溜まる事もあるだろうが、俺なんて、あってもせいぜいオナニーか女の子をクンニするくらい。 残念ながら、疲れるわけもない。 3日あるならいっそ旅行でも行ってみるかとも思ったけど、そんな俺の考えを先読みするかのように『東京から出るの禁止』なんてことまで社長から言われている。 交通事情の問題で予定通りに帰れなくなったり、不測の事故に巻き込まれたりってのを心配してるらしい。 ついでに、外出自体を必要最小限に制限された。 社長いわく、出掛けてもいいのは近所にある都市型のショッピングモールだけらしい。 まあね、あそこに行けば服も買えるし食材も調達できるし、近くにレンタルビデオ屋もあるから映画観る事だってできる、確かに。 普段もそんなにアクティブに動き回るタイプじゃないから、いつもと変わらないと言えば変わらないんだけど... でも、二人揃って完全オフとなれば、少し遠出して旨い物食いに行くとか、車借りてドライブするくらいしたいじゃないか! たまには普通の恋人っぽいデートだってしたいじゃないか! 禁止されたとなると、余計にそれをやりたくなるのが人間の性ってもんでしょう。 ......別に監視が付いているわけでもないのに、ちゃんと言いつけを守るつもりになってる変に真面目な自分が情けない。 「さて、休みどうする? ただ寝てるだけってのも勿体ないよな」 そう声をかけてくる勇輝の声は、案外スッキリしてる。 何か楽しい事でも思い付いてるんだろうか? 「そうだなぁ...24時間で何回射精できるかチャレンジしてみる?」 「はい、却下却下。俺は回数じゃなくて、ほんとに気持ちいいセックスしたいの」 「んもう...冗談に決まってんじゃん。俺だって気持ちいいセックスを何回もしたいだけだってば」 部屋着でダラダラしている俺に対して、勇輝はいつの間にか着替えまで済ませていた。 春らしい水色の七分丈パーカーと、折り返した裾にエスニックな柄が入ったロールアップのデニム。 実際の年齢からすれば少し幼い格好かもしれないけれど、基本的には童顔に見られる勇輝にはよく似合っている。 「どっか行くの?」 「うん。充彦も一緒に行こ。ちょっといっつもと違うことしようぜ」 楽しそうにキラキラした目で俺を見てくる姿があんまり可愛くて、そっと腕を引いて膝の上に乗せた。 勇輝の楽しみの邪魔をするのは可哀想だから、別の感情が沸き上がる事がないように、抱き締める腕に力は込めない。 ただ勇輝の体温だけを感じる。 「いつもと違うって何? なんか暇すぎて腐りそうだから、俺にも教えて?」 「充彦も一緒じゃないとできないから、早く着替えてきてよぉ」 「だから、何すんの?」 「あのさ、普段俺らってね、飯作る時に得意なジャンルってあるじゃない? 充彦は洋食で俺は和食ね。んでさ、せっかく時間あるんだから、俺今日は洋食とケーキ作りに挑戦してみたいんだ、充彦に教わりながら。だから、必要な物買いたいから、一緒に来てよ」 ほう...なるほどなるほど。 時間はたっぷりあるのだから、教わりながら教えながら、普段は作らないジャンルの料理を二人で作る...か。 うん、確かにそれはちょっと楽しいかもしれない。 「ほら、お昼ご飯とおやつに間に合うように行きたいから、早く早くぅ」 俺の膝の上で、ケツをフリフリしながら俺を急かす勇輝。 いやぁ...ヤバい、ちょっと可愛すぎる。 さすがに我慢できなくて、思わずその体をキュッと抱き締めた。 「充彦?」 「...ごめんね、ちょっとだけだから。あ、そうだ...じゃあさ、晩飯は俺に教えてよ、和食。今日は担当交換しよう」 首を捩り非難めいた顔を向けていた勇輝の表情が、パッと一気に明るくなる。 「充彦が晩飯作ってくれんの? それも和食? すっげえ! んじゃ今日は交代で先生と生徒だね。嬉しいなぁ...俺さ、前から充彦が作業してるの見てて、ケーキとかクッキーとかパンとか作ってみたかったんだぁ」 勇輝の体がゆっくりと俺の方に向いた。 その脚がゴソゴソと動き、いつの間にかしっかりと俺に跨がったような格好になる。 「俺も、勇輝見てて本格的な和食作ってみたいと思ってた。下手でも優しく教えてね」 「俺も俺も! メレンゲとか作った事無いからさ、上手くいかなくてもイライラしないでね」 「勇輝にイライラするなんてあるわけないじゃん...ムラムラはするかもしんないけど」 「ムラムラもダメ~」 『ダメ~』なんて言いながら、俺の首にギュウとしがみついてくる。 いや、既にムラムラしてきてますけどね。 これ以上このままだと、確実に俺は勇輝を押し倒す。 情けないくらい、そこには自信がある。 「着替えてくるから待ってて」 一度だけ掠めるだけのキスをすると、勇輝をそっと脚の上から降ろす。 立ち上がり、ほんの少しだけ形を変えてしまったジュニアの位置を整えながら、俺は寝室へと急いで戻った。

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