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サービス、サービス!【9】
充彦から玉を渡され、大きく息を吐いた。
相変わらず『失敗は許さない!』ってどす黒いオーラが半端じゃない。
まあ、とにかく入れさえすればあとは充彦がなんとかしてくれるんだろうと、俺はしっかりと玉を見つめながら軽くラケットを押し出す。
カツンと乾いた音と共にピンポン玉は手前で一度台に着地すると、綺麗な弧を描いてネットを越えた。
入れる事だけを考えて打ったから、気持ちいいくらいに真っ直ぐな球筋。
俺の対角線に立っていた航生は、僅かに一歩足を引きさえすれば玉の真正面に入れる。
まあ俺とレベルはどっこいどっこいだから、強烈なスマッシュを打ち込むなんて真似はできないだろう。
ただのリターンならば、スリッパでも充彦が上手く返してくれるはず...と少しだけ体を台の外に向けて移動させながら隣を見た。
......が、スリッパを構えた充彦は、その場で微動だにしていない。
というか、返球されてない?
キョロッとネットの向こうを見ると、さっき俺がサーブした時の格好のままで航生はピキーンと固まっていた。
僅かに後ろに引けば済むはずの足も、ピクリとも動いていない。
「航生...くん?」
「す、すいません。あ、あのぉ...ちょっとアソコがガチガチになりすぎちゃって......」
泣きそうな顔で航生がボソッと言うと、慎吾がワッと頭を抱えた。
なんの事はない。
航生の反応が可愛くて慎吾が調子に乗り過ぎたせいで、チンコがビンビンになっちゃったわけだ。
それも、ただ勃起してるって程度の話じゃなく、もうのっぴきならない状態まできているらしい。
ある意味自業自得。
乳首ピンピンで終わらせとけば良かったのに、もっともっとって弄って舐めてを続けたせいでチンコまでピンピンにしちゃったんだから。
しかし、乳首愛撫されただけで動けないくらいガチガチになるって...航生、どんだけ敏感なんだよ。
腰がちょっと引けてるなあとは思ってたけど、マジでもう発射寸前なんじゃないの?
「ほらほら、今度こそ航生引け!」
不恰好なだけで動きは軽やかな充彦は、山口さんの手から箱をふんだくりそれを航生の前にドンと置く。
「引きます...引きますよぉ......」
そっと手を突っ込むと、中身をかき混ぜるとかどれにするか迷うなんて素振りも見せず、真っ先に指先に当たった紙を握りしめたらしい。
クシャクシャになった紙を引っ張り出すと、山口さんはそっちのけで充彦がそれを受け取った。
「いいか、読むぞ。『パートナーの目をしっかりと見つめながら、3分間本気で指フェラさせてください』だってさ」
充彦の言葉に、頭を抱えたままだった慎吾はガックリと肩を落とす。
「俺、指フェラ苦手......」
「あれ? そうだっけ?」
「......別のん咥えたなるやん」
あ、それ激しく同意。
確かに充彦の指をしゃぶらされてるとどんどん体が熱くなってきて、早く充彦そのものを咥えたくなる。
けど、そこを焦らすみたいにいつまでも口の中から指を抜いてくれなくて、それどころか結構苦しいくらいまで奥の方を丁寧に指の腹で撫でられるってのも...なんかちょっといたぶられてる感じがして堪らなかったりもする。
あの長い指が俺の涎でベタベタになり、それを躊躇なく出し入れして、その度に指の節が前歯を押し開いて......
......ああ...俺もしゃぶりたいな...充彦の指...
まあ、今の充彦だったら、パンツからはみ出してるモノの方を口に捩じ込んできそうだけど。
あ、でもそれもいいな...すぐに口の中でムクムクって大きくなって、閉じようとしても口が閉じられなくなって、顎が怠くて涎ダラダラ垂らしてるまんまで喉の深いとこまでガツガツ犯されて......
「心配しなくても後で嫌ってくらいしゃぶらせてやるから、今はそんな顔すんな」
「そんな顔?」
「指フェラしながら、我慢できなくなってうっかり自分で扱いちゃう...ってくらい卑猥な顔」
......バレバレだな。
しかし、自分で扱きそうな卑猥な顔ってどんなんだ?
「慎吾く~ん、早くしないと勇輝が発情してるから代わりに航生の指しゃぶっちゃうぞ~」
俺は別に航生の指はしゃぶりたくないけどな!
でも充彦に言われて変に焦ったのか、慎吾は慌てて航生の右手を取った。
「航生の目、しっかり見ながらだぞ~。航生もちゃんと目ぇ見てろよ~」
山口さんが腕時計を外し、タイマーをセットして卓球台の上に置く。
「じゃあいきますよ~。3...2...1...スタート!」
合図と同時に慎吾が航生の指の股にゆっくりと舌を這わせだした。
中指の先端をチュッと吸い、手のひらの中心へと向かって唾液の跡を付けていく。
どこか戸惑いがあるのか、それともやはり遠慮してしまうのか、慎吾はただひたすら丁寧にその表面を舐めるだけ。
舌は何度も同じ場所を往復する。
「慎吾さん、これ一応罰ゲームなんでガチでいきますね?」
それは今や、誰もが認める最上の男前ボイス。
クソ真面目な航生からすれば、どれほど嫌でも恥ずかしくても罰ゲームは罰ゲームだからちゃんとしよう...って程度の言葉だったんだろう。
けれど滅法その声に弱い慎吾の表情は、あっという間に甘く蕩けていく。
自ら積極的には動く事のできない慎吾に焦れたのか、見つめた目を逸らす事もなく航生はフッと笑みを浮かべた。
「はい、ちゃんと俺のをしゃぶってるつもりで、本気で舐めてください」
小さく細い顎を左手で固定すると、中指と人差し指を合わせて慎吾の口の中へとジュブと押し込んだ。
「歯は立てちゃダメですよ...俺のですからね。大事に優しく可愛がってください」
ユルユルと指を抜き差ししながら、まるで暗示にでもかけるみたいに航生は慎吾の耳許に繰り返す。
「ほら、もっとベチャベチャにして...もっと吸って舌を絡めて...そう、やっぱり慎吾さんは上手ですね......」
もう慎吾が自分の指を吐き出す事はないと判断したんだろう。
顎を掴んでいた手を離すと、『イイコ、イイコ』と褒めるように頭を撫で始める。
慎吾の顔はますます甘さと淫猥さを増し、自分から進んで頭を前後に動かし始めた。
口の中で航生が指を動かしているらしく、時折『フッ...うぅ...ん...』と声にならない喘ぎが漏れてくる。
「なんか航生...怖いな......」
苦笑いしながら充彦が呟く。
俺もそれに小さく頷いた。
ついさっきまで、慎吾に乳首を嬲られて、体と睫毛をプルプル震わせてたんだぞ?
暴発寸前まで興奮を高められて、満足に動く事もできなかったんだぞ?
本当なら、今頃慎吾にしゃぶられてるような気になって、パンツの中をグショグショにしてたっておかしくないところだ。
けど、今はどうだ?
しゃぶられてるんじゃなく、しゃぶらせてる。
いや...しゃぶらせてあげてるって感じか?
言葉で煽り、声で煽り、指先で口内を嬲り......
その顔も仕草も、甘く優しいサディストそのものだ。
さっきまでの震える草食動物はどこに行った?
けど、しゃぶらせてる航生もしゃぶってる慎吾も間違いなく興奮してて、おまけにめちゃくちゃ幸せそうで...見てる俺の体がどんどん熱くなってくる。
......ヤバい、ほんとに...したい...
「慎吾さん、もうちょっとですよ。ほら、もっと激しく頑張って」
力が抜けてきたらしい慎吾の腰をグッと支えながら、それでも指の動きを止める気配の無い航生。
「俺もだけど、お前もいつ辞めても大丈夫そうだな。アイツの豹変ぶりは勇輝に負けてないぞ」
「まあでも、あれは慎吾相手限定だけどね」
「それもそうか。でも、このビデオ見たら...ファンの人の航生への印象かなり変わるだろうなぁ」
「いや、正直俺も変わった。チンチンの形も変わったけど」
「俺以外の男に勃ててんじゃねぇよ」
「充彦にしてるの想像したから勃起したに決まってんじゃん」
ピリリリリと無機質な電子音が大きく響いた。
それと同時に航生はゆっくりと慎吾の口から指を引き抜く。
慎吾の腰を支えたまま、表面がヌラヌラと光る指をペロリと舐めた。
「航生くん...アカン...腰抜けた......」
その首に腕を絡め体をしっかりと預けながら、キスをねだるように顔を上に向ける。
「ちゃんと立ってくれないと卓球できないですよ?」
「今は無理...もう無理ぃ...ちょっとイッてもうてんもん......」
イッたかどうかは別として、足腰立たない状態ってのは間違いないらしい。
「山口さん、どうする? 慎吾くん、続行不能っぽいよ?」
「卓球はちっとも撮れてないけど、想像以上に罰ゲーム映像は濃いのが撮れたからねぇ...まあ、このまま終わってもいいんだけど......」
「けど?」
「ほら、一人だけ無傷な人がいるじゃない? やっぱり全員のサービスカット、欲しいよね~」
一気に全員の視線が俺へと集中する。
やっぱり、そうですよね~
......なんもなしでは終われないってか?
正直俺も身体中熱くてムラムラして、早いとこ充彦と二人きりになりたい。
この場をとっとと収めるには、それもまあ仕方ないよな。
「はいっ、じゃあラス1の指令、引きますっ!」
腹を括ってチンコ鎮めて、俺は深呼吸しながら例の箱に腕を突っ込んだ。
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