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クールダウン&ヒートアップ【3】

勇輝の唇がしっかりと俺の唇を覆う。 その腰に腕を回しながらも、俺の頭の中はどこか冷静だった。 スルリと滑り込み、中で俺の物を探している舌をかわしながら、部屋の中に時計を探す。 今朝の家を出る瞬間の顔、バスの中で珍しくブランケットにくるまっていた姿、そしてあの罰ゲーム終わりに浴衣を丁寧に畳みながら必死に瞬きを繰り返していた目が頭から離れなかった。 今焦らなくても、まだまだ夜は長い。 今日がダメなら明日だってある。 もし明日がダメでも、明後日だってその次だって...俺達にはいくらでも時間はあるのだ。 今はただ少しでも長く勇輝を休ませ、最高に旨いだろう匠の料理を一緒に食べながらのんびりと楽しく酒を飲みたい。 しばらく舌を妖しげに蠢かしていたものの、一向に自分の挑発に乗ってこない俺に焦れたのか、勇輝はそっと唇を離した。 拗ねているか、あるいは怒っているかと思っていた勇輝の俺を見つめる目は、少し潤みながらもひどく穏やかだ。 その、すべてをわかっているとでも言いたげな表情にこそ、何故か俺の体は熱を持った。 いっそ欲情にまみれたイヤらしい顔で腰をくねらせ、露骨に俺を欲しがってくれればいいのに。 それなら俺も、怒って宥めて説得して、無理矢理にでも引き剥がして横にさせる事ができただろう。 けれど今の勇輝はまるで、俺が先を拒むと予想していて、そしてその通りだった事を喜んでいるように見える。 「勇輝...今はちゃんと寝ないと......」 「うん、そうだね。でもさ、俺の体がどうにも収まらないんだ。充彦が好きで欲しくて堪らないって気持ちで、身体中が熱くて仕方ない」 欲情してます、発情してますなんて言葉を発しているとは思えないくらいに清らかな微笑み。 そしてその表情とは裏腹に、言葉通りに勇輝の綺麗な指は俺の胸から腹の辺りを明らかな意思を持って動いている。 「なに、やりてぇの?」 それならそれでも仕方ないかと一瞬思った。 射精寸前の状態を止められ、あの後は辛うじてみんなの前では取り繕ってみたものの、もう出さなければ収まりのつかない所まできてたはずだ。 『もう抱かない』なんて言ってはみたが、どこかでオスとしてのスイッチが入ったのかもしれない。 仮眠の時間を考えればそれすらも拒絶した方がいいんだろうが、俺だって男なわけで、いつまでも出すに出せない苦しさはわかってる。 同じ寝られないなら、勇輝の負担を考えても俺が抱くより勇輝が抱く立場の方がいいだろう。 俺の言葉に笑顔は崩さないまま、勇輝が小さく首を傾げる。 俺はもう一度言った。 「やりてぇの?」 「ううん、やられたいよ」 何を言ってるの?と、腹を擽っていた指がピシと俺のデコを弾く。 「俺はもうタチはしませんって話したじゃん」 「いや、だけどさぁ...俺、今は絶対に勇輝の事抱かないよ?」 「うん、わかってる。俺だってさあ、昨日もできてないし、今日もこれだけ焦らされてわけじゃない? 今から時間気にしながら慌ただしくセックスして、おまけにそのせいで疲れてご飯美味しくないわ夜は楽しめないわとか...そんなのはまっぴらです」 「だったらどうする......」 俺の言葉を遮るように勇輝がクスッと笑った。 またこの顔が可愛くて、けれど直後に俺に向けられた視線がやけに艶かしくて、途端にズクズクと欲が疼きだす。 その顔を俺の物で汚したいだとか、声が枯れるほどに啼かせて抱き潰したいとか...なんだかそんな、変に暗い欲。 その思いを隠すように慌てて目を逸らすと、勇輝はあっさりと俺の上から下りた。 ホッとしたような、だけど少し残念なような...... 「充彦が俺の事なんでもわかるようにね、俺だって充彦の事は結構わかるつもりなんだよ......」 言うが早いか勇輝は俺の足をソファーから下ろし、腰をごく浅くかけるような格好にするとトンと胸を押してきた。 不必要なほどにクッションの効いた背凭れに体が埋まると、俺の膝を大きく割ってその間に跪く。 「ちょっ、お前......」 「俺の事、めちゃくちゃにしたいって...傷つけたい、汚したいって思ったろ? で、その途端ここをピクピクさせてた......」 手のひらを股間に押し付け、そこを慈しむように優しく撫でる。 「セックスはしないよ。今の俺じゃ、絶対1時間ちょっとでできるセックスなんかじゃ物足りないし。でもね、それでも俺は今すぐ充彦が欲しいの、どうしても欲しいの。さっき言ってたじゃない...俺の喉をガンガン犯して、涎も何にも飲み込む事できないくらい、口開きっぱなしにしてくれるって」 勇輝の顔がその手のひらに包まれた場所へと近づいた。 ウエストのホックだけ外すと、デニムのジッパーの金具を前歯で咥える。 それをジジジッと下げると、鼻先をそこに埋めながら両手を穿き口へとかけた。 なぜだか俺にそれを拒む事はできない。 あっさり勇輝への嗜虐的な思いを指摘されたせいなのだろうか。 素直に腰を上げ、勇輝がデニムを下ろそうとする動きまで助けてしまう。 「今すぐしてよ...喉の奥までいっぱいにして、ガンガン苦しいくらい突いて、苦しくて気持ちよくて涎と涙が流れっぱなしになるくらい......」 「でも...それじゃお前のどうすんの。だったらシックスナインにすれば......」 「見ててよ、充彦のを必死でしゃぶりながら、俺がイヤらしくオナニーするとこ」 またあの清らかな笑みを向け、勇輝の舌が下着の上から俺の中心をねっとりと舐め上げた。 もう既に熱を持ちだしていたそこは、ムクムクと一気に大きさを変える。 「見てて欲しいんだ...充彦でいっぱいの俺が、喉の奥突かれながら気持ち良くなって自分で扱くなんてとんでもなく恥ずかしい姿。さっきは止めてくれて良かった...充彦に見て欲しいから、充彦だけに見ててもらいたいから。そんな恥ずかしくて情けない姿、充彦にしか見せられないだろ?」 「恥ずかしくも情けなくもないだろ。可愛くて健気で、どうしようもないくらい淫らなだけだよ」 俺だけが見る姿。 俺にしか見せたくない姿...そんな言葉に俺はますます昂っていく。 さっきのプレイルームでの痴態を思い出せば、確かに俺もいつもとは違う興奮を覚えてた。 自分の手で快感を追いながら、それでも俺に嬲られる事を望む姿に。 「さっき頑張ったご褒美、まだだったな......」 ご褒美の言葉に勇輝はそっと目を伏せ小さく頷く。 その勇輝の頭を、優しくポンポンと叩いた。 「じゃあ、お前が待ってた物やるよ...大好物だろ? まずは手を使わないで、上手に外に出してみようか?」 勇輝が近づきやすいようにと、更に大きく脚を開く。 勇輝は俺の腿に手を置くと、言いつけを守るように舌と唇と鼻を使い、下着のゴムベルトの上へと膨らみ始めた頭を引きずり出した。

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