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戦士の休息は突然に【7】

膝に勇輝を乗せ、ただ慈しむように髪や背中を撫でる。 時折首筋に唇を触れさせれば、勇輝は力を抜いてコテンと俺に体を寄せてきた。 やけに素直なのは、もう一仕事終えた気分になってるからなのかもしれない。 俺はただ『愛しい』という気持ちを込めて撫でる動きだけを続ける。 それを不思議に思ったか、俺にピタリと背中を預けたまま首を捩ると、勇輝の目が真っ直ぐに俺を映した。 「ん? どした?」 「あ、あの...えっと...しないの?」 「何を? エッチ?」 「う...ん。終わったらするって言ってたのにしないから...俺、何か充彦を怒らせるような事したのかなぁと思って...」 「ふふっ、するする、終わったらするよ。つかさ、実は今結構必死に我慢中。でもね、まだ終わってないから。だからせめてと思って、こうやってヨシヨシして幸せ気分味わってんの」 「ほんとに? てか...え? 終わってないの?」 シフォンケーキの方はまあ知らなくても仕方ないとして、どうやら完全にレアチーズケーキの存在は忘れてしまってるらしい。 『メッ』てするみたいに、眉間を人差し指でツンとつついてやった。 「レアチーズケーキの方、ある程度冷えたらまだ作業残ってるって言ったろ? 何しに俺が、あんなバカみたいにデカいマンゴーピューレを買ったと思ってんだ」 「え、あれ使うんだ? 俺、てっきり充彦がマンゴープリンかなんか作るのに使うのかと」 「余ったらまたちゃんと作ったげるよ。あれでね、マンゴーゼリーの液を作ってチーズケーキの上に流すんだ。あと、シフォンケーキってね、実は焼いて終わりじゃ無いんだよ」 勇輝は更に不思議そうな顔で目をクリクリさせた。 ああ、クソッ...無駄に可愛い、可愛過ぎる。 なんでプレーンなレアチーズケーキとパウンドケーキかなんかにしなかったんだよ! でなきゃ今すぐにでもここで押し倒してるのに。 俺のバカッ! しかし、もう作ってしまった以上は仕方ないし、道具の片付けもまだ終わってない。 今は我慢だ、我慢しろ... 「シフォンケーキってさ、焼き縮みってのを防ぐ為に、焼き上がったら中まで火が通ってるの確認してすぐひっくり返さないといけないんだ。せっかくあんなに綺麗なメレンゲ作ったんだから、プシュ~ッて萎んだシフォンケーキなんてやだろ?」 「わざわざひっくり返すの!? そうなんだ...ケーキ作るのって、ほんと大変なんだなぁ......」 心底感心したという顔をしてニコリと笑うと、勇輝がそっと俺の手を握った。 「やっぱり充彦ってすごいよなぁ...俺より力強くて逞しくて、だけどあんな繊細で手間のかかる仕事も難なくやっちゃうんだもん...」 そのまま俺の手に頬を擦り寄せ、指先にチュッチュッと唇を押し当ててくる。 「でもケーキ作るより、勇輝の体に触る方がはるかに難しくて、ずっと優しい繊細な動きだと思うよ。何より一番大切な物だからさ。それより、何誘ってるみたいな事してんの。それとも、俺の忍耐力試してる?」 「誘ってるみたいな事じゃなくて...誘ってる」 「それは鬼だな。ケーキ焼けるまで我慢しなきゃって必死だってのに」 「ねえねえ...マンゴーゼリー、いる?」 「......なんも乗せなくても充分旨いから大丈夫」 「......ケーキ、早く焼けないかな...」 勇輝の手が、俺の股間にさりげなく触れてくる。 握られたままだった俺の手は、いつの間にか勇輝の股間へと押し付けられていた。 もういい加減限界だろ...ただ押し付けられただけの手をユルユルと動かす。 お互いが探るようにそこをまさぐり、軽く唇を合わせる。 もういよいよ限界だ...勇輝のズボンの中に手を入れようとした所で、それは助けられたのか遮られたのか...焼き上がりを教える『チーン』という高い音が部屋に響いた。

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