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クイーン・ビー・エクスプレス第3回【2】
「今男優で多いのは、AV会社のスタッフとして入ったって人なんじゃないかな。元々は助監督とか照明やってたんだけど、現場で急遽チンポ足りないから脱げ!ってなった...みたいなパターンね。監督自身が出る事もあるかな。だから、どうしても男優になりたいってんなら、スタッフになるのが手っ取り早いかも。それ以外だと、雑誌とかで『ぶっかけ企画に参加してみませんか?』みたいな求人が載る事があるんだ。まずはこれに参加して、とにかく現場に入る機会を作る。助監督さんの例も含め、まあこれがいわゆる『汁男優』ってやつだね。真ん中で絡んでる女優さん見ながらひたすら扱いて準備して、監督のサインと同時に次々発射するっていうやつ」
「この段階で、実は相当ふるいにかけられてんだよね?」
「うん。要は目の前の生セックス見ながらオナニーできればいいだけの事なんだけど、結構な人数が一斉にシコシコするわけじゃない? まあとにかく雰囲気が異様なんだよ。で、当然その空気に飲まれて勃起すらできない人もいる。そういう人は残念ながら、その場で帰らされるんだ。で、『順番に射精』ってなった途端に出せなくなる人もいるんだけど、そんな人も摘まみ出される」
「監督の希望通りのタイミングで射精できる人だけが、まずはぶっかけ要員になるんだ?」
「そうそう。うまく射精できる人は、そのうち会社の方から連絡来るようになるの、『次の日曜日撮影あるんだけど、出られそう?』って。で、射精が上手いとか、精液の量が多いとかで監督なんかに気に入ってもらえると、そこでようやくフェラとか絡みの仕事が入るようになる。それでも最初は、複数プレイの中の一人だね。そこを頑張って何現場もこなして、ここで監督なり女優さんなりに気に入ってもらえて初めて、ようやく指名付きでメインの単体絡みができるようになる感じかな。勿論人によって順番とか期間なんて物にはかなり差があるとは思うけど、ザックリ本筋の男優の道のりはこんなもんじゃない? すごいマニアックな作品になると全然過程は違うはずなんだけど、俺はそっちは知らないからなぁ」
「ただ、ここで大切なのは『気に入ってもらえると』ってとこだよね」
「そう。やっぱ中にはいるんだよ、『いつでもどこでも何回でも射精できます』って人。撮影する方としては本来、こんなにありがたい男優っていないんだよね。でもそういう事を鼻高々に言う人に限って、今度はセックス自体が得意だなんて言い出しちゃうわけよ。『テクには自信あります』だの『潮吹かせるのは任せてください』だの。現場ってやっぱりチームプレーだったりするからさ、一人だけやけに自信家で俺様な人が混じったりすると空気が悪くなるんだよね」
「......すいません。俺、昔すごい俺様でした」
「それはまあ、ゲイビデオの現場とAVの現場は違うしね。俺もあの現場に参加してみて色々と驚いたし。それに何より、航生の場合は俺様ってより拗ねてただけだろ?」
「勇輝の教育的指導で更正したしな」
「ほんとにご迷惑おかけしました」
「でもさ、現場が変わったらわかるでしょ? 男優が俺様だと成り立たないって」
「すごいわかります。あくまでもAVって主役は女優さんなんですよね。女優さんを女王様にしてあげないといけないから、男優が頑張って現場の空気を明るくやりやすく作ってあげないといけないんだなぁって」
「これこれ、航生のココなんだよ、このメールの男の子に欠けてるって感じたの。男優はあくまでも脇役だからさ、謙虚で、その場の空気をしっかり読める人間じゃないと勤まらないと思うわけよ」
「この男の子は知らないみたいだけど、みっちゃんて本番やらないのに今でもAVの現場から掛かる声って無くならないんだよ? それはセックスって意味じゃなくて、本当に気持ちよく仕事させてあげられるからなんだよね。癒し系で優しくて面白いから、みっちゃん相手だと女優さんがナチュラルに演技に入れるの。昔から本気で女優さんが惚れちゃう男優って有名なんだから」
「それ言うなら勇輝もだろ。勇輝はいわゆる下積み一切無しで男優になった変わりダネなんだけど、まあとにかく芝居が上手いんだよね。誰も文句言えないくらい上手くて、妬む人すらいなかったもん。それなのに、芝居が終わった途端、今度は『卑屈なのか? 何か疚しい事でもあったのか?』って言いたくなるくらいいつも腰が低いし女の子にも優しいし、現場でもすごい人気あるからね」
「航生は、テクニックはまだまだかもしれないけどとにかく謙虚だし、相手の事を考えようって一生懸命だから、教わった事をすごい勢いで吸収するんだよね」
「テクニックは、どっちかっていうと現場で鍛えられる方が良くないか? 色んなタイプの女の子相手にしないといけないから、下手に自信持ってると臨機応変に動けなかったりするし」
「あと、『女の子、いつでもイカせます』とか言うのも止めた方がいいよね。女の子は芝居でイケるもん」
「男は『ピュッ』で終わるからわかりやすいけど、女の子はわかんないからねぇ。あ、あと無理矢理潮吹かせて喜んでるタイプもダメだろ?」
「そうだね。勿論本当に潮吹きやすい体質の人もいるんだけど、現場だと大抵女優さんは無理矢理水を大量に飲んだりして、頑張って派手に潮吹くように努力してるから。直接触らないといけない僕達も、実はすごい気ぃ遣ってる。爪も指もきちんと消毒するし。何より、女優さんに迷惑かけちゃいけないから、プライベートでのセックスはすごい真面目になるよ」
「俺らはパートナーとしかプライベートはセックスしないし、そこは関係ないといえば関係ないけど、他の男優さんとかの話聞いてても、不特定多数とめちゃめちゃなセックスしてる人は少ないよな?」
「病気なんかもらうわけにいかないからね。そんな事になったら、下手すりゃ廃業だもん。僕らみたいに決まった相手としかしてなくても、ちゃんと定期的に性病の検査も受けてるし」
「『性欲旺盛』で『色んな人とセックスしたい』って思ってるなら、正直AV男優はお勧めできないかな。好奇心が旺盛って事ならさ、それこそ女優さんも男優さんも色んなタイプの人に会えるから面白い仕事だけど」
「ただヤりたいだけなら、普通のサラリーマンでもやってる方が気楽だって、絶対。自分のやりたいセックスじゃなくて、監督が見せたいセックスをしないといけないってだけでも結構しんどいんだから」
「あの...ぼちぼちさっきのメールへの回答をお願いしてよろしいですか、充彦先生?」
「かしこまりました。まずAV男優に本気で興味があるなら、制作会社のスタッフとかアルバイトなんかに採用してもらうのが一番早い道だと思います。で、男優として成功するのに一番必要なのは『自分の勃起と射精をコントロールする』って事じゃないかな。ここを完璧にできて、さらに周りの空気をちゃんと読めるようになると、少しずつ現場に呼んでもらえるようになります。で、収入ですが、最初のうちは射精1回で1000円から3000円くらいです。で、絡みができるようになっても、せいぜい一現場で10000円前後じゃないかな...ただしこれは、現場がどれくらいその男優を呼びたがってるかでどんどん金額は上がってきます。今は男優の売り手市場、圧倒的に『ちゃんと仕事のできる男優』ってのが少ないから、もう一桁くらいなら余裕で上がるかも。俺らは今回ありがたいことに専属契約させてもらったんで、フリーで出演してた時よりも一回のギャラは更に上がったけど、その分出演作品が減ったから収入にしたらあんまり以前とは変わらないかな。つまり、どれくらい貰えると思ってるのかはわからないけど、それなりに稼ぐには気力も体力もめちゃくちゃ使うので、割りのいい仕事かどうかってなると...そこまで楽な仕事じゃないと思います」
「普段から体調とか体型にも気を遣わないといけないしね」
「単純に一回のギャラだけなら、ゲイビデオのがいいんじゃないの?」
「そうですね。顔出し有りで単体でも出演できるくらいになったら、AVの10倍くらい貰えますよ。ただ、ギャラが高い仕事はその分体のダメージが大きいんで、一日に連続で何本も出演するなんてのは無理ですけど」
「結論出たな。という事で、『性欲旺盛だから、派手に女の子とエッチしたい』なら男優は止めときましょう。めんどくさい事だらけです。見た目に自信があって収入重視ならゲイビデオがお勧め。人が好きで好奇心旺盛で地道に頑張れる自信があるならAV男優も有りかなぁと。頑張り次第では40、50になってもできるしね...って、勇輝ちょっと言いたい事があるっぽい顔してんじゃん」
「...言ってもいい?」
「ダメならスタッフさんがカットしてくれるでしょ」
「んじゃ、思いきって......男が本気でやってる仕事、あんまりナメんなよ」
「うわ、勇輝さんの目、マジだ...怖ぇ......」
「はいはいはいはい、スタッフさん、後でアウトだったら編集よろしくお願いしますね、勇輝思ってたより相当マジギレしてたんで。それでは、次行きましょう、次! おい、航生!」
「あ、はいっ! じゃあここからはガラリと雰囲気を変えて、DVDのお話と予約特典の話にいきましょーっ!」
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