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SHAKE IT!【4】

「充彦...手、離して...」 小さな甘える声で勇輝がポツと呟く。 はぁ...ヤバいくらいエロい声。 本当なら、今すぐにでも抱き締めてやりたいところだ。 けれど少しだけ...もう少しだけ我慢...勇輝も俺も。 「ギュッてしたい...」 「まだダメ...馨さんからオッケー出てないだろ」 俺とは違い、ジャケットのボタンすら外していない勇輝。 その厚い生地に覆われた二の腕にそっと鼻先を擦りつける。 「キスしよ、ね?」 「それもまだダメ。さっき言われたの、聞いてたろ? 焦らして焦らして焦らしまくって、勇輝をうんとエロい顔にしろってさ」 「ちょっとだけだから...なあ、ちょっとだけギュッてしてよぉ。キスしようよぉ」 したいのはやまやまだ。 すっかり甘えん坊のエロモードに突入した勇輝は、破壊力抜群の色気を振り撒いている。 ほんとなら今すぐにでもこんな服破り捨てて、馨さんに見せつけるように喘がせたい。 けれど真剣な顔でファインダーを覗き続けている馨さんは、何か大切な瞬間を待っているのだ。 俺の一時の欲でその大切なタイミングを失わされるのは、さすがに少し憚られた。 「んじゃさ、俺が馨さんの言いつけなんて守ってられなくなるくらい、可愛くエロく誘ってみ? 最高に可愛く誘えたら、すぐにでも...いつもよりずっと気持ちよくしてやる」 これで少しは時間が稼げるだろうと思った。 どうすれば誘えるだろうとか、もっと可愛くなんてどうするんだろうとか、多少は迷い戸惑うと踏んだのだ。 ......が、俺が甘かった。 いや、本当に。 馨さんや岸本さんといった知人の目の前で続いている行為におかしなスイッチが入ったのか、それとも俺のいつもより硬質な態度に気持ちの昂りが抑えられなくなったのか。 自由の利かない上半身を動かす事は諦め、辛うじて動く右足を俺の腰に絡めてきた。 「勇輝...?」 「す~ぐエッチな気分にしたげる...」 一度ペロリと舌舐めずりをすると、その絡めた足で俺の腰をグイと自分の方へ引き寄せた。 驚いているうちに、勇輝は俺の腿に腰を擦り付け始める。 「こら、勇輝...」 「先にチンポグリグリしてきたの充彦の方だろ。俺はチューだけで我慢しようとしてたのに、充彦があんまり焦らすから...」 「だってそれは、まだ馨さんのオッケー出てないし...」 芯をはっきりと感じさせる勇輝の中心が押し付けられるたびに、俺のもドクドクと大きく脈を打つ。 プロとしてカメラマンの要求に従わなくてはいけないという気持ちと、どんどんイヤらしさを増していく勇輝の誘惑に、頭と股間が爆発しそうだ。 「なあ、俺可愛くおねだりできてない? まだエロさ足りない?」 ほんのり頬を赤く染めながら、泣きそうにも見える顔で唇を突き出してくる勇輝。 お互いを擦り合わせるような腰の動きは止まらない。 いや、もう十分だろ。 せっかく胸の中に作った苛立ちも加虐心も、勇輝の痴態の前には簡単に霧散していく。 「馨さん、ゴメンね...勇輝より、やっぱ俺が我慢できないわ」 高く上げさせていた腕を離し、勇輝の顎を強く掴んだ。 「お待たせ、勇輝。あんまり可愛くて、俺ももう限界」 そのまましっかりと体を引き寄せ、赤く濡れた唇に噛みついた。 嬉しそうに勇輝は俺の首に腕を絡めると、おずおずと舌を挿し入れてくる。 俺の口内で絡まり擦り合う舌の感触に、ますます体の熱が高まっていく。 馨さんの口から制止する声は無い。 いや、撮影を台無しにしてしまうほど我慢の利かない俺達に、呆れて物も言えないのかもしれない。 でも、もういい。 こうして深く唇を合わせているだけで、何も考えられなくなる。 ただ勇輝の熱だけを感じられればそれでいい。 少し唇を離し、お互いの目を見つめながら舌先を擽り合い、そしてまた角度を変えて貪るように唇を重ねる。 何度も何度も繰り返し、勇輝を抱き寄せる腕の力を強くすれば、首に回っていた勇輝の手がそっとスラックスの上から俺の中心を撫でてきた。 それを拒むことはなく、俺も勇輝の中心に触れる。 もう、きっと中はしっとりと湿っているだろう。 そんな事を俺だけが知っている。 それがまたどうしようもないほど嬉しい。 堪らずスラックスの中に手を入れようとホックに手をかけた。 「は~い、オッケーで~す。悪いんだけど、とりあえずそこでストップして。ばっちり、ばっちり」 俺達の勝手な行動に怒るどころか何故か満足そうに笑いながら、馨さんはようやく制止の声をかけて『パン、パン』と手を叩いた。

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