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温めよう【5】

いきなり加えられた力に充彦の体がキュッと強張る。 「何、その顔。怖いんですけど...つかさ、可愛がるにしては力強すぎない?」 「失礼な。かつてはユグドラシルのナンバーワンで、今やAV男優でもナンバーワンと呼ばれるアイドルフェイスの俺のドヤ顔が怖いだなんて」 「......怖いよ、お前の真剣な目で見つめられるのは...怖い。お前がその目を向ける時は、俺が何か間違ってる時だ。他の誰も気づいてないのに、お前だけがそれに気づいてる時...だろ?」 なるほど...弱ってようが自己嫌悪に陥ってようが、やっぱり充彦だ。 俺が瞳に込めた意味をちゃんと汲み取ってる。 うん、これなら大丈夫。 ちゃんと俺の話だって聞いてくれるはず。 そして...わかってくれるはず。 力を込めた手の位置を変えないように意識しながら、竿を覆っている皮だけを強めにシュッシュッと上下に動かす。 すぐにその膨らんだ亀頭の真ん中からはプクッ、プクッと透明な雫が押し出されてきた。 「充彦さぁ、さっき自分で言ってたよね? 『性風俗は必要悪だ』って。確かに、なかなか胸を張れる仕事じゃない。いつまでも偏見は付いて回るし、病気の心配だってあるし、何より...やっぱりセックスは大切な人、ちゃんとしたパートナーとだけする方がいいと思う。そういう意味ではね、確かに『悪』だよ。でもさ、『必要』とされてるんだよね。そこには色んな事情もあってさ...ただひたすら有り余るほどの金を色欲に使う事でしか自分の価値を見つけられない人、大切なパートナーはいるけど自分の性癖や欲求をぶつけられない人、どうすれば恋愛ができるのかわからないからって一晩だけの恋愛ごっこに逃げる人もいる」 「んな事はわかってるよ。その世界に入る女の子の方に事情があるのだって十分わかってる」 溢れてきた雫を親指の腹に擦り付け、そのヌルリとした指で亀頭の裏側を優しく撫でる。 見せつけるように左の手首から手のひら全体をペロペロと舐め、その湿らせた手のひらを充彦の乳首へとそっと押し当てた。 「需要と供給だよ。これは立派な経済活動だ。そしてその需要と供給を安全に円滑にマッチングさせる『仲介者』の存在だって...立派な経済活動だよね」 裏側を擽っていた親指で鈴口の周囲を軽く押しながら、更に蜜が溢れるのを促す。 手のひらで撫で、押し潰していた乳首へとゆっくりと唇を寄せた。 「充彦がね、デリヘルのマネージャーやってようが個室マッサージの教育係だろうが、匠さんからしたら何とも思わなかったと思うんだ。どんな仕事でも差別意識なんて無いでしょ? とにかく頑張ってる、プロとして誇りを持ってる人ならさ、寧ろ尊敬に値してたんじゃないかな」 右手はピンポイントに特に弱い鈴口から亀頭の裏側を、左手はさらに下に伸ばしてタマと竿の付け根を、そして唇と舌は左の乳首を...... 柔く押し、丁寧に揉み扱き、そして吸って舐めて...すべての場所を違う動きで、違う強さで甘く攻めていく。 いつの間にか充彦の手は、優しく俺の頭を撫でていた。 それは話の続きを催促してるようでもあり、もっと舐めて欲しいとねだってるようでもある。 その手のひらの感触は心地よくて、もう怯えるような強張りは感じなかった。 「それで? じゃあさ、尊敬に値してたはずの俺が...なんでアイツにクズ呼ばわりされなきゃいけなかったと思ってんの? 勘違いって何?」 少しだけ背を反らすように俺に乳首を差し出しながら、それでも充彦は話の続きを求める。 俺はその膨らんだ赤い粒をカリカリとかじり舌で包み込み、チラリと充彦の表情を窺った。 欲を浮かべながらも、その欲にまだ溺れきってはいけないと我慢してるかのような、どこか幼くも見える儚げな顔。 めったに見る事の無いそんな顔は、何だかひどく俺を興奮させた。 この顔を知ってるのはきっと俺だけなんだろう...聞いた事もないけれど、確信はある。 充彦に会うまでは知らなかった『独占欲』や『優越感』なんていう暗い感情が満たされていく感覚に、ひどく背中がゾクゾクした。 それ以上の刺激を望んでいるのはわかってるけど、俺はたっぷり唾液をまとってヌラヌラとテカる乳首から唇を離す。 「あんまり焦らすなよ......」 「ん? それはどっちの事言ってるのかな? 話の続き? それとも...こっち?」 それまで微かに周囲を擽っていただけの親指の先でグリッと鈴口を押し潰す。 もうかなり昂っているせいなのか、頭はすっかりカチカチなのにその出口だけはやけに柔らかくて、押された所は滑稽なほどにパクッと口を開いた。 「どっちもだよ。あんまり面白がって焦らしてると...明日、腰抜けて立てなくするぞ」 「それくらいまで元気になるっていうなら、俺は大歓迎だよ。意識無くなるまで、身体中の水分無くなるまで、泣いて喚いて許しを乞うまで責め立ててくれてもいいんだけど...でも、今のまんまの充彦じゃ無理かな?」 桶に湯を汲むと、それでザーッと床を湿らせる。 一度立ち上がり脱衣場からバスタオルを持ってくると、その床の上にそれを敷いた。 そこに改めてお湯をたっぷりとかけ充彦に笑って見せる。 「マット無いから本格的に奉仕するってのは難しいけどちゃーんと天国見せたげるから、とりあえずそこに横になってみ? 話はそれからね。あ、あくまでも今日の俺は個室マッサージの嬢設定なんで、オッパイ触るのまでは有りだけど指入れは無しだよ~」 「あ? 反撃食らうのビビってんの?」 「今の充彦相手に俺がビビると思ってんの? 俺を誰だと思ってんだよ...誰もが認めるナンバーワンの勇輝だよ? 優しいクズごときにビビるわけないじゃん。反撃できるなら...してみ?」 わざと少し冷たい口調で嘲笑う。 今の充彦は絶対に反撃なんてできない。 俺の話の続きを聞かなければいけないから。 俺が快感で言葉を途切れさせれば、充彦の一番知りたい部分をいつまでも知る事ができないんだから。 逆に言えば...俺の言いたい事、匠さんの言葉の本当の意味に気付きさえすれば、すぐにでも反撃に移るだろう。 嘲った俺を甘く激しく苛め続けるはずだ...それこそ空が白む頃まで。 不服そうに眉間に皺を寄せながらも、タオルの上に充彦が体を横たえる。 どうか一刻も早く気づいて...... あの大好きな手が俺に触れ責め立てるその瞬間を待つように目を閉じると、改めてニヤリとした笑顔を作って充彦の体に覆い被さった。

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