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温めよう【10】

穴の周りをゆっくりと擽り、遠慮がちに指の先が侵入を試みた。 自分でも少しは弄ってたし充彦の指だってたっぷりと湿らせたから、そのまま一気に奥まで広げられるかと思ってたんだけど...それはいつまでも遠慮したまま、浅い所でクニクニと動いてる。 あまりに物足りなくて、目の前でユラユラと揺れる大きなモノをねだるようにツンツンとつつけば、クスッと漏れる笑い声が聞こえた。 「お前、さっきあんなにイヤらしい顔でさ、デロデロに自分の指濡らしてココ解そうとしてなかったっけ? まだ『処女かよっ』てくらいキツキツなんですけど?」 「だってローションとか無いんだもん...仕方ないじゃん。それでも俺なりには頑張ったんだってば。第一、普段充彦が俺に触らせないから自分で解すのって慣れてないの!」 「確かに自分で触らせるなんて勿体ない事、させないよな。まあ、俺がいるからお前は下手くそなまんまでいいよ...これからもずっと」 やけに自信マンマンな口調が少しおかしい。 さっきまではあんなにしょぼくれてたってのに。 俺に嫌われないか、軽蔑されてないかってあんなに気にしてたのに。 だけどそんな、俺に対しては自信まんまんで、でも俺の気持ちに対しては時々自信を無くす充彦が本当に好きだなぁって思う。 こんな充彦だから、時に自信家で高飛車とも取れる発言をしながらも誰からも疎まれたり非難されたりしないんだ。 自分に自信が持てない『弱気な自分』がある事を認めているからこそ、驕る事も無ければ他人を見下す事もない。 たくさんの偶然と奇妙な縁に助けられてきた自分と、そしてその縁に感謝を忘れず、人に手を貸すことも『偶然』であり『縁』だと笑って苦にもしない。 知れば知るほど好きになる。 最高にカッコ良くて最高にカッコ悪い、なんて愛しい人...... 「ん? 勇輝、どうした? そんなに俺のチンポが可愛いか?」 ぼんやりと『充彦が好きだなぁ』って考えてただけなのに、どうやらうっとりと目の前のモノを見つめていたと思われたらしい。 わざとらしく充彦がそれをプルプルと揺らす。 「まあこの狂暴なモノが可愛いわけはないよね~」 「狂暴とは失礼な。こんなにお前の中に入りたくてムクムクしながらも必死に我慢してる可愛いジュニアに向かって」 「......俺だって早く欲しいってば...この狂暴で可愛いジュニアを」 「だったら、ちょっと体起こしてケツ下ろして。ほら、なんなら俺が窒息するんじゃないかってくらい、ベターッて顔騎しろ」 それ、やだな。 充彦の顔の上に乗っかるのって...さすがに恥ずかしい。 躊躇ってる俺にイラついたように充彦の長い腕が強引に俺の体を引き上げ、そのまま少し自分が動いて俺の真下に入る。 俺はそれ以上腰を落とさないようにと膝を立て、充彦の胸に手を着いて必死に体を支えた。 「ベチャッと乗って構わないっつってるのに...ま、いいか。しかし、カメラの前でケツの穴晒すのは平気なのに、ほんと俺の前だと恥ずかしがるよなぁ」 充彦は俺のケツを左右に強く押し開いた。 直接見えてるわけでもないのに、体の中心に鋭い視線を感じる。 今充彦がどんな顔で俺を見てるのか。 今俺がどんな顔をしてるのか。 それを考えるだけで体の熱が一気に上がる。 きっと充彦は今にも食いつかんとギラギラとした捕食者の目を向けてるんだろう。 そして俺は、哀れにも欲情した生贄のように呆けた顔をしてるはずだ。 思わずギュッて目を閉じた。 内腿に、そして開かれた中心にフゥッと吐息がかかる。 それだけで強引に開かれたままの中心がキュンと締まるのがわかった。 「勇輝......」 「......何?」 「俺さ、みんなからはザ・男優みたいな男だとか言われて、俺も情けない事にプロ中のプロだなんて思ってたわけよ」 「うん......」 「でもほんとは、他の人間よりもちょっと体がでかくてちょっと女性の扱いに慣れてて...ちょっと精力が強かっただけだったんだよな。俺なんて勇輝どころか、航生よりも慎吾くんよりもプロとしてはずっと格下だった」 「セックスが抜群に上手いのは間違いないんだし、現場の空気の作り方だって特別だよ。格下って事はさすがにないと......」 「気持ちの問題だよ。意識とか覚悟って言う方が正しいかな。仕事とプライベートを切り離して考える事もできなかったんだから」 「充彦...もしかしてきつい言い方しちゃったかな? 傷付けてたら...ごめんね」 「いや、別に責めてるつもりじゃ無い。寧ろ、改めて気付かせてくれてほんとに良かったって思ってるよ。俺はさ、本物のプロじゃなかったから...男優として一生メシ食っていく覚悟なんてなかったから...仕事捨ててでもお前を手に入れたいって思えたわけだ。仕事の為にも俺から逃げようとしたお前を、手段もなんも選ばないで捕まえようとしたろ? 俺さ...そんな自分、嫌いじゃないよ。間違ってたとも思わない」 「でもね、俺ももうプロじゃないよ。充彦の為に仕事辞めなくちゃって思うようになったもん。それにあの時、それこそ形振り構わず俺を捕まえてくれたからこそ今一緒にいられるんでしょ。俺だってそんな充彦が嫌いなわけないし、間違ってたなんて口が裂けても言えない」 「あ、パティシエについてはさ、ちゃんと覚悟あるよ。店繁昌させて、俺を信じてくれた人間みんなを幸せにしてみせる。だから着いてこいって胸張って言える。プロだろ? まだ卵だけど」 「うん...俺も航生も慎吾も...みんなそんな充彦だから信じてるんだよ」 「あとな...お前を一生幸せにするってのは最初から決めてたし、過去も未来も全部を受け止めるって覚悟もできてた。それってさ...俺、勇輝に関してはプロって事じゃね?」 「プロって...金銭発生しないのに、プロも何も......」 「金の代わりにお前の人生もらってるからな。金なんかよりもっと高価で重い物もらってるから。だからお前は、これからもずっと俺と一緒にいれば最高に幸せになれるし、毎晩天国にも連れてってやる」 大きく開かれたままのケツがグッと引き寄せられる。 ドキドキと痛いほど激しくなっている鼓動を抑える間もなく、開かれ少し捲れているであろう中心に熱く湿った舌が押し付けられた。

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