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温めよう【11】
捲られた粘膜に触れたそれにはたっぷりと唾液を乗せているのか、ツンと突くたびに小さくピチャピチャと水音が聞こえる。
なんとか少しでも体を倒そうと...つまりは少しでも腰を浮かせようと膝を必死に立たせるものの、その微かな充彦の気配と動きだけで俺のだらしない体からは力が抜けた。
せめて顔の上にまともに座り込んでしまう事だけでも避けようと、充彦の胸の上で体を支えている腕をどうにか突っ張って堪える。
その間にもペチャペチャという音は大きさを増し、それほど長さの無いはずの舌は俺の粘膜を丁寧に伸ばし中を湿らせていた。
さすが充彦だな...俺よりも俺の体を知ってる人。
ギュッと固く目を閉じ、体の内側を滑らかに蠢く存在に集中する。
少しずつ中へと入ってくる体積が多くなり、入り口も徐々に広げられていくのがわかる。
指よりも圧倒的に柔らかくて湿り気のあるそれが痛みを与える事は無い。
硬く尖らせて中を抉ろうともそこを傷つけたりはしないし、細かく滑らかな動きは侵入者を拒むようにきつく閉ざしていたはずの場所をすぐに蕩けさせる。
けれど一度蕩けてしまえば...綻んでしまえば、決して痛みを与えないそれだからこそ物足りない。
俺をそんな体にしたのは間違いなく充彦で...俺の体温がやけに上がってきてるのもわかってるはずだ。
今俺の粘膜に直接触れてるのが充彦なんだから。
痛みを伴っていても、例え苦しくて涙が浮かんだとしても、もっと熱くて長くて大きな物が欲しい。
いつまでも俺の中を舐め続け、まだまだそれを止めようとしない充彦の胸をペチペチと叩く。
焦らしてるつもりは無いだろうと思う。
今日の状況が普段とはあまりにも違う事は一旦置いといても元々充彦の愛撫はかなり長いし、何より男同士でセックスをする以上過ぎる程にそこを慣らしておくのも潤しておくのも必要な事だ。
そのやたらと長い愛撫を責めるつもりはない。
ただ今日に限っては、充彦の長い前戯が意地悪でもされてるように思えてしまう。
今日の俺は、普段とは比べ物にならないほどに昂っているらしい。
いつもの表情に戻った...いや、いつもよりずっと精悍で男らしくてイヤらしく見える充彦にどこまでも乱れさせて欲しいと。
奥の奥まで暴いて、『お前を悦ばせられるのはやっぱり俺だけだな』って不敵に笑って欲しいと。
ペチペチと頼りなくいつまでも胸を叩いてる俺に気づいたのか、一度唇を中心に寄せてジュッとそこを強く吸い上げると、充彦の顔がゆっくりと離れていく。
「ん? どした? 体冷えてきた?」
「違う、逆...なんかもう、体の奥が熱くて熱くて...充彦、早く...」
「早くっつったってなぁ...まだ全然慣らせてないだろ」
「だ、大丈夫だから! あ、いや...さすがに大丈夫じゃ...ないか...」
「ローションも無いから上手く解せないって言ってたの自分だろ? それでなくてもここに潤い足りないのに、ちゃんと解さないまんまで入れたらケガすんじゃね? そうなると出血は辛うじて免れても、明日のビデオ撮影できなくなるじゃん」
「わかってる! わかってんだけどぉ...したいの、欲しいの、早く中ガツガツ突き上げられたいの!」
何を思ったか、充彦がズリズリと体をずらし始めた。
胸の上で突っ張ったままだった腕はカクンと折れて、つんのめるみたいに充彦の上に倒れ込む。
また俺の目の前には、変わらず昂ったままで雫を溢れさせている充彦のぺニスがプルプルと震えていた。
ノソリと充彦が半身を起こす。
「部屋まで急いで戻るか?」
「......やだ...待てない」
「そう言うと思ったよ。それに、こんなに駄々捏ねてまで欲しがってくれる勇輝ってのも珍しいしな...俺もできたらこのまましたい。そこまで俺を求めてる時の勇輝の乱れっぷりも見たいし」
充彦の上で腹這いになったままの俺のケツが高く持ち上げられる。
「ちょっときついかもしんないけど、今日は早めに慣らすわ。痛い事はするつもり無いけど、あんまり辛かったら言って...その時は加減する。とりあえずもうちょい穴の周りが柔らかくなりゃいけるだろうから、しばらくはお前は俺のチンポとじゃれといてな」
そう言うと、充彦はアメニティに手を伸ばし、裏の成分表示を確認する。
「これでも借りなきゃ仕方ないな。このシャンプーならオリーブオイル由来の天然成分だけでできてるらしいし、普通の石鹸使うよりはマシだろ。まあちゃんと終わったら中も外も綺麗に洗ってやるから安心して」
プチュッとポンプから液体を押し出す小さな音を聞きながら、俺は充彦のぺニスに指を絡めた。
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