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温めよう【13】
後ろ手でしっかりと固定したぺニスの上に、ゆっくりそーっと腰を落としていく。
この長さ、この大きさ...まさに凶器のようなソレを自分の意思で体内に埋める事に正直、恐怖心が無いわけじゃない。
どれだけセックスが好きでもどれほどこの快感に溺れたとしても、それでも挿入の瞬間は無意識に体に力が入ってしまうし、内臓のすべてを押し上げられるようなあの特有の圧迫感は時に吐き気をも伴う。
それが肌と肌がしっかりと馴染む前で、まだ体にその準備ができていないとすれば尚更だ。
だから普段、最初から俺が上になる事はまず無い。
しっかりと充彦の手で準備をし、正常位でゆったりと体を慣らして快感を拾える状態になってから、充彦に上に乗せてもらう...それがいつもの俺達のセックス。
けど今日は久々に俺が自分で充彦に跨がって、自らの手で挿入する。
興奮とは違う感情も徐々にグチャグチャと混じってきて、俺は窄まりにペニスの先端を押し付けたままどうにも動けなくなってしまった。
そんな俺のケツの下にそっと充彦の手が触れる。
特に性的な物は感じさせず、ただ支えるだけのような優しさで。
こめかみを伝う汗を拭えないままチラリと窺い見た充彦は、その手の感触のままに優しく穏やかだった。
「どした? 久々過ぎてちょっとビビってる?」
「......かもしんない」
「安心しろって。お前の体を傷つけるような事はしないよ...お前、誰のチンポ握ってると思ってんの、俺だろ?」
「あのねぇ...充彦のチンポだからビビってるんですけど?」
「あー、そうだそうだ、確かにね。言い方悪かったわ。ほんとに絶対大丈夫だから信じろ。勇輝のペースでゆっくり入れられるように、俺が最後までちゃんと支えてやる」
「絶対? 意地悪しない?」
「ここで意地悪したとこで、お前が即意識飛ばして俺がおいてけぼりくらうだけだろ。何にも楽しくないから絶対しないって」
大袈裟な!と笑い飛ばしたいところだけど、これが大袈裟でも悪い冗談でもないからこそ俺の体が強張ってしまってるわけで......
他の誰も届かない、それこそ充彦しか知らない場所を一瞬にして貫かれる衝撃はなかなか言葉にはできるもんじゃない。
閉じる事もできなくなった唇の端からはただヨダレが滴り、喘ぎにはほど遠いうめくような声が漏れ、一気にスパークした頭の中は真っ白になってそこから先の意識も記憶も無くなる...充彦とのセックスで初めて知った『絶頂の更に先』は、快感でありながら底無しの責め苦でもあった。
何度でも頂点を迎える事ができるそれは、いつまでたっても終わりが見えない。
意識が途切れてすべてが終わるのかと思いきや、すぐに体内の熱に強引に現実に戻されて再び甘い責め苦に声にならない声を上げる。
充彦が満足して俺から出ていくまでそれは延々と繰り返され、俺は頭の中も体の中も充彦しか感じられなくなる。
幸せなのだ、最高に気持ちいいのだ。
わかっているからこそ体はそれを求めるけれど、本能的な恐怖心は決して消えない。
「んじゃ、改めて言い方変える。ここでお前が飛ぶほどヤるなんて勿体ないだろ。後でベッド行ってから『もう嫌だ』ってお前が泣いても俺が満足するまで突っ込みまくるから、今は勇輝が気持ちいい事しかしない。最高に良かったって覚えてられるとこまでしかしないよ...これでどう?」
雑で物騒な物言いだけど、充彦の甘い声はいつもより遥かに甘く、優しい瞳はいつもよりもずっと優しい。
その瞳に思わず笑みを浮かべると、天を向くモノの根元をしっかりと押さえて腰を下ろしていく。
ちょっと不自然で辛い体勢のはずなのに、俺の腰を支える充彦の手には当たり前のようにグッと力が入った。
その充彦の手に体重をかけるようにすれば、俺の体はゆっくり、そして確実に熱を飲み込んでいく。
指とは違う感触と圧迫感に、膝と内腿がピクピクと痙攣した。
ハァハァと荒く息を吐き出しながら、時折腹の下の方に力を込めて更に腰を下ろす。
「勇輝、辛いならしがみついてみるか?」
「はぁ...っ...辛くはっ...ないよ、気持ちいいだけ...だけなんだけど......」
早く欲しいと逸る気持ちと、受け止められないと拒む体。
いくらこの体位に慣れてないとはいえ、ここまで気持ちと体のリズムが掴めないなんて初めてだ。
感情の昂りを抑えられない。
よほど困った顔でもしてたんだろうか。
充彦の肩や腕の筋肉がグンと盛り上がり、俺を支える手が力強さを増した。
「そこまで入ったらもう握ってなくて大丈夫だから、お前は俺の腹に手ぇついてバランス取ってたらいいよ。あとは落ち着いて体の力抜いあら俺の手の上に座り込むつもりで体重かけてろ。あとはお前が一番楽な状態で入れてやるから」
「充...彦...ごめん。全部俺がやるつもりだったのに...俺がここでしたいって言ったのに」
「......なんなの、お前。今日はなんでそんな可愛いかなぁ...いいんだって、そんだけ俺を欲しいと思ってくれてんだろ? そもそも、あんな情けない姿見せた俺が悪いんだし、散々甘ったれた事言ったんだから、勇輝もせめてこれくらいは甘えて。入れるだけ入れたらあとは好きなようにさせてやるから」
「わかった、甘える......」
ゆっくりと呼吸すれば、既に俺をこじ開けて飲み込まれた部分の存在をしっかりと感じる。
中途半端な所に留まったまま、充彦自身も辛いはずなのにそこからピクリとも動かない...まだ俺の体が求めてないから。
「やっぱり充彦が...入れて......」
恥ずかしさで顔が熱くなるのを隠すように体を倒すとペタンと充彦の胸に額を押し付ける。
トクトクと伝わってくる早い鼓動が心地いい。
ヨシヨシするみたいに俺の頭をそっと撫でた手がゆっくりと下がっていき、強く抱き締めてくれる。
俺がフゥーッと息を吐き出したタイミングで、抱き締められて動けない俺の中にジワジワと充彦が埋まっていった。
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