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温めよう【17】

なんでもわかるはずの充彦でも、俺がその手を払うというのは想定外だったらしい。 少しだけ目を丸くして、それまでの激しい突き上げを止める。 「あっ...ん...止めるな...よぉ...」 充彦の腕をしっかりと掴み、俺は自ら浅ましいほどに腰を振る。 ダメだ...俺だけが動いたんじゃダメ...全然ダメ...... 足りない。 充彦も動いてくれないと...欲しいモノが欲しい所まで届かない...... 「い、いや、どっか傷つけたとかじゃないか? 一気にいきすぎて辛かったとか?」 「ち、がう...もっと欲しい...もっともっと奥まで来て......」 「だからそれは、ちゃんとベッドに行ってから...な? お前、すぐ飛んじゃうだろ? 体もきついから」 「平気だからぁ。飛んだら充彦が運んでくれるもん。おねだりしたら俺の欲しい物くれるんでしょ? 今欲しい、すぐ欲しいんだってばぁ」 「でもな...?」 「チンポ触らなくていい。充彦のだけでイきたい。充彦しか知らない場所抉じ開けて、充彦しか届かない所にたっぷりご褒美のミルクちょうだい。俺の身体中から充彦の匂いしかしないくらいいっぱい注いで...充彦のを、ちゃんと奥まで欲しい」 右手を伸ばし、繋がったままの場所へと触れる。 俺と充彦の間には、僅か数センチの隙間。 それは充彦が俺の体を思って空けた空間で、今俺が埋めたくて仕方ない物。 「それとも、俺を抱えて行く体力も無いくらい...衰えた?」 「失敬な。なんならハメたまんまでベッドまで運んでやろうか?」 大した意味を持たないやり取りを繰り返す間も、充彦は少し悩んでるようだった。 自分だってわかってるんだ...それを望むのはちょっと無謀だって。 決して負担は少なくないんだって。 自室でのセックスであっても、翌日に俺の仕事がある時は充彦はあまり本気で俺を追い詰める事はしない。 中イキもトコロテンもすっかり当たり前になってるし、それで意識が朦朧とするのは日常茶飯事で、正直それだけでも体力の消耗は激しい。 その先となれば意識は朦朧どころか完全に消失だし、足や腰に力が入らず、下手すりゃ翌日はベッドからほとんど出られないなんて事もある。 充彦が躊躇うのは当然なのだろう。 ベッドの上でさえそんな調子だというのに、ここは硬い洗い場の床。 衝撃を受け止めてくれる柔らかいクッションは無い。 おまけに明日も写真とビデオの撮影が残ってる。 まともに一人で歩く事もできないとなれば、山口さん達にも航生達にも、何より匠さんに示しがつかないと思ってるんだろう。 それは俺もわかってる。 わかってるんだけど、体が...奥から沸き上がる熱と欲が抑えられない。 充彦への気持ちが止まらない。 「ごめんね、充彦......」 「ん? 何がごめん?」 「俺も結局は...プロになりきれないみたい。明日仕事あるってわかってても、俺はやっぱり今すぐに充彦の全部が欲しい」 「そこまでいかなくても十分気持ちよくしてやるって言っても...ダメそうだな?」 「ダメじゃないけど...それじゃヤだ」 「ヤだって...だからぁ、子供かよ」 呆れたように笑う充彦から、ユラリと匂うような色気が立ち上る。 それは獰猛で、今にも骨まで食らい尽くそうかというほどのオスのそれ。 ゴクリと喉が鳴り、自分の熱で唇が乾く。 この後の動きを察して腰を引き付けようとしっかりと巻き付けていた脚を解けば、案の定充彦は俺の左足を掴んで自分の肩に乗せた。 「んじゃ先に言っとく。今日はもうベッド戻ってもしないぞ? 2回戦はさすがに無しだからな?」 「......うん」 充彦の言葉に渋々頷く。 肩に乗せた足を撫で脹ら脛に唇を滑らせながら、充彦は下ろしたままの俺の右足を跨いだ。 「明日の撮影終わったら、体壊れるってくらいまで抱き潰してやるから」 「でも俺は......」 「心配しなくても...ここでの一回だけで十分満足させてやるよ。後片付けも移動も全部俺に任せて、お前は天国だけ見てろ」 「地獄だったりして」 「どっちにしたって望んだのはお前だ。クレームは却下な」 足を担ぎ上げたまま、充彦の手がしっかりと俺の腰を掴んだ。 そうして俺の体を固定しておいて、充彦はズルズルとゆっくり自分のモノを引き抜いていく。 離すものかと強くまとわりついていた粘膜ごと引きずり出される感覚に、ゾワゾワと背筋を快感か悪寒かもよくわからない物が走り抜けた。 堪らず縋り付こうと伸ばした指が、充彦に強く握られる。 ホッとしたのもつかの間。 充彦は少し背を丸め俺の足を倒し、握ったはずの指を離すとそのまま肘をきつく掴んできた。 すべてが抜け落ちてしまうほんの手前で止まったそれの感覚に体を震わせる俺に、充彦がニーッと笑う。 うっとりするくらいカッコ良くて、背中が冷たくなるほど恐ろしい笑顔。 きっと俺以外は誰も知らない...死ぬまで俺以外は見る事の無い顔。 本気で俺を食い散らかそうとしてる獣の顔。 恐ろしくてひどく昂って、何より嬉しくて泣きたくなってくる。 「ほら、俺の全部...勇輝にやるよ」 そこから一気にズブズブと中へとあの長いモノが戻ってくる。 ズンと行き止まりにぶつかり、先端がグリグリとその奥を強く捏ねた。 また少し下がり、すぐにズンズンと奥を突き上げられる。 反動を付けるような大きなピストンで中を擦られ、俺のペニスから溢れる雫には白い物が混じり始める。 杭で貫かれているような感覚に、俺の体は無意識に逃げを打った。 嫌なわけじゃない。 ただ本能が恐怖を感じていた。 これから訪れるであろう、苦痛と快感の境界にある『壊れる』という感覚に。 けれど充彦はそれを許さない。 俺が本気で逃げたいと思ってるわけじゃないのがわかってるから。 痕が付くのではないかというほどに肘を掴む力が強くなった瞬間、グイと思いきり引き寄せられた。 ドスンと音が聞こえそうな衝撃と共に、体の奥がその突き上げに耐えられなくなってくる。 それ以上進む事は許されないはずの場所に、グググッと塊の先端がめり込んでいく。 俺の体がそれをようやく受け入れようとしている...ハッ、ハッと吐き出すばかりの呼吸を繰り返す口は、もう閉じる事すらできなくなっていた。 目の前が涙で滲んでいく。 充彦は、先端が僅かにめり込んだ場所に更に力を込めた。 人間の体は上手くできてるものだ。 強張って体に力が入れば入るほど、なぜだか充彦のモノは真っ直ぐ導かれるようにジワリと奥へと進んでいく。 「充彦...充彦...来る...来ちゃう...もう来る......」 乾いた舌がもつれ上手く言葉が出てこない。 肘を掴んだ充彦の腕を掴み返しながら、ギリと爪を立てる。 ただ無茶苦茶に腰を振りまくってるわけじゃなく、ちゃんとタイミングと力加減を窺ってるという証なんだろう。 眉間に皺を寄せている充彦のこめかみを流れて滴った汗が俺の上に降ってきた。 俺の中の塊は更に粘膜を押し上げめり込んでいく。 行く手を阻んでいたはずの粘膜も筋肉も、もうそれを止められない。 あるはずの無い扉を、その塊はジワジワとくぐり抜けていく。 強張っていた体からは力が抜け、今度はまったく力が入らなくなってきた。 理由も何も無いのにポロポロと涙がこぼれ、開きっぱなしの口からは飲み込みきれない唾液がダラダラと伝う。 「......やっとだな。お待たせ」 そんな言葉がぼんやりと聞こえた。 俺の中がウネウネと形を変えていく。 充彦の言葉は呪文なんだろうか...そこは狭いながらもポッカリと口を開け、熱く硬い異物の侵入を待ち構えているようだった。 そしてそんなタイミングを見逃すはずのない充彦は一気に腰を進める。 「あぅっ...ぅううっ...あぁ......」 俺のケツにパチンと充彦の肌が打ち付けられた瞬間、目の前にはバチバチと火花が光る。 ダラダラと止まらない白濁を垂らしながら、俺はそのまま真っ白な世界へと落ちていった。

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