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ラブラブフィーバー【7】

「おっはよ~ございま~す」 大きな声でスタジオのドアを開けた勇輝に、中で打ち合わせをしていたスタッフの視線が一気に集まる。 俺も数歩遅れてそのドアを抜けた。 「あれ、今日みっちゃんも一緒? なんか撮影とかあったっけ?」 「あ、いや...あのぉ...見学です、見学」 「みっちゃん今日は、俺専属のマネージャーなんですよぉ。なんせね、俺一人で元気にシャカシャカ動けないもんで」 勇輝の言葉の端々にかる~く棘を感じるが、俺はただ曖昧に笑ってスタッフの視線をやり過ごす。 「あ、監督。ちょっとお願いがあるんですけど」 「うん、どうした?」 「今日ってね、イチャイチャの撮影が多いなら正常位増えるでしょ?」 「そりゃそうなるよね、当然。女の子が好きだから座位も入れていくとは思うけど。まあ、細かい体位は流れ次第だし、勇輝に任せるよ」 「いや、体位とかの問題じゃなくてぇ...」 チラリと勇輝の目が俺の方に一瞬向けられる。 俺はと言えば、無駄にデカイ体を小さくして今は息を潜めるしかなかった。 「正常位で撮る時、あんまりケツ映さないで欲しいんですけど」 「ん、何? 今更『恥ずかしい』とかわけのわかんない話なら聞かないよ」 「違う違う。そんなもん恥ずかしがる程ウブじゃないってば。なんならチンコの先の穴まで撮ってもらってもいいくらいなんですけどね」 「うん、それは撮らせてもらってもモザイクかかるから意味無いね」 「無いですね~」 「で? なんで今日に限ってアナル撮影は不可?」 「別に不可ってわけじゃないんですけどぉ...ちょっと昨日ね、抜かずの3発とか冗談みたいな事やらかした、どこぞの絶倫デカチン野郎がおりまして」 その言葉に、みんなの笑いを含んだ視線が一気に俺に集まった。 わ~ん、いたたまれない...勇輝くん、ほんとにごめんなさいってば。 「おまけにそんだけヤっといてですよ、後始末に入った風呂場でも盛ってくるし、一眠りしてたらいきなり突っ込んで起こすし」 「ああ、それでちょっと眠そうな顔? せっかくの休み明けなのにね」 「まったくですよぉ。マジで一日中セックス三昧とか、どう思います?」 「どうって...元気だなぁ...とか?」 「元気どころじゃないですよ、まったく。でねでね、一日中ケツにデカチン突っ込まれてたんで、たぶん今日は穴が広がってると思うんです」 「広がってるって...ああ、それでアナルからのショットは無しで?」 「そう、ユルユルでだらしな~い感じだと思うんですよぉ。下手したら、まだパクパクしてるかもしんないし。だからね、映してみてなんかやばそうなら、ちょっと濃いめにモザイクよろしくお願いします」 いやいや、そこまで明け透けに言わなくてもいいと思うのよ、俺は。 そもそもヤりたいようにヤっていいっつったのは勇輝の方なんだし、風呂での一発に関しては後処理してるうちに勇輝が我慢できなくなってオネダリしてきたんだし。 ま、寝顔見ててムラムラしたせいでいきなり突っ込んだのは確かに申し訳なかったけども。 でも...めっちゃ喜んでただろうよ、お前だって。 俺だけが悪いわけじゃないと思うんだけどなぁ。 「勇輝くんのアレってさぁ...」 隣に立っていた助監督くんがポツリと呟く。 「みっちゃんへの愚痴とか監督へのお願いみたいなフリしてるけど...」 「完全にノロケだよなぁ。言いたくて仕方ないってのが見え見え」 小道具さんが先を続けた。 そうなのか!? あれ、俺への嫌がらせとか当て付けじゃないの!? ポカンとしている俺の肩がツンツンつつかれる。 「愛されてんねぇ」 「本気で言ってる? 俺、朝からずーっとああやってチクチクいじめられてんのに? そもそもね、離れちゃヤダとか、もう一回とか言ってきたのはアッチの方なわけで...」 「そりゃあもう、痴話喧嘩の極みみたいに俺達には見えてるけど。っていうか、今みっちゃんが俺らに愚痴ってんのも完全にノロケに聞こえる」 いかにいじめられてるかを更に説明しようと口を開きかけた時、勇輝がまた監督に声をかけるのが聞こえた。 「そういえばさ、今日の相手って誰か聞いてなかった。ごめんね、忘れてるだけだったら」 「いや、最初から言ってない」 「あれ、そうなの? んで、誰? まさか全編一人とかじゃないでしょ?」 「今日は三人。全員1時間前後の絡みの予定で、尺合わせる必要がありそうなら勇輝くんのエア口説きでも入れるわ、見てる人主観の。で、相手役なんだけど、最初は今回AV初めての子。あ、マジで慣れてない子だからちゃんと可愛がってあげてね。二人目はナナカちゃん」 「おおっ、ナナカちゃんとかすげえ久しぶりだぁ。設定は、また俺が優しくてイヤらしい保健室の先生とか?」 「当たりだよ、当たり。ナナカちゃんとの保健室シリーズ、めちゃくちゃ人気あるんだもん。あ、今回はバイブも使ってちょっと過激に攻めちゃって。他にもなんなら色々用意して...」 「監督! んで、三人目は?」 「......」 「あ、そうか...俺が苦手な人がキャスティングされてるから黙ってたんでしょ! 誰?」 「...えっとぉ...その...サラちゃんだったり...するのかなぁ...みたいな?」 「ゲッ!」 勇輝は心底嫌そうに顔をしかめた。 彼女は俺が本番止めてからデビューしたから絡んだ事もないけれど、確か前に『すごい嫌いな匂いがする』とか言ってた気がする。 その匂いを嗅ぐと、気分が落ちて頭が痛くなるとかなんとか。 彼女が付けてる香水が嫌いというよりも、その香水を付けてる女が嫌いなんだと言っていた。 ひょっとすると、過去に何かトラウマでもあるのかもしれない。 まあ、普段は結構エグめなハードコア系に出てる子だし、喘ぎ声とかアヘ顔とか、ちょっと獣みたいなとこあるから、香りの事がなくても苦手なタイプだろう。 「三人目がサラちゃんとか...俺、ラブラブエッチができる自信、全然無いんだけど。陵辱物ならともかくさぁ...」 「大丈夫だろ、そこは。だって今の勇輝、確かにちょっと疲れた顔はしてるけど...その分それ以上に幸せそうだし。一人苦手な子が入ったくらいじゃその顔も雰囲気も変わんないでしょ。それに...」 監督が何やら俺を指差してくる。 「どうしても気分乗らないなら隣の部屋貸したげるから。あそこにいるお疲れの原因人物に、もっともっと幸せにしてもらっといで。その時は撮影は休憩にするし」 勇輝の顔が、いきなりパッと輝く。 あからさまだなぁと呆れながら、そんな俺も頬の筋肉が弛んでいる自覚はあった。 「監督、とりあえず早速撮影まで10分部屋にこもるね~」 そう言いながら俺の手を引く笑顔の勇輝に、笑顔のスタッフは誰一人文句を言わなかった。

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