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守りたくて壊したい矛盾【5】

「あぁ...やだ...どうしよう...何で...ごめん、ごめんなさい......」 いまだ俺の指をしっかりと咥え込み、体の中も外も小さく震わせながら、なぜか勇輝は泣きそうな顔になった。 押さえるように脇に挟んでいた脚を解放してやり、俺は勇輝を真っ直ぐに見つめる。 中を探り続けていた指の動きも一旦止めてやった。 「ん? 何がごめん? 気持ちよくなかった?」 「違う...違う...気持ち良くて...良すぎて...ただ慣らしてもらってるだけなのに、勝手に気持ち良くなって結局イッちゃって...ごめんなさい...」 「ごめんの意味、マジでわかんないわ」 ケツから指を引き抜き、震えの止まらない勇輝の体を強く抱き締める。 「お前、なんか考え違いしてないか? あれは慣らしてるとか、穴広げるとかってだけじゃなくて、愛撫だろ? 女抱くときに、機械的に『濡れさせる為』だけに手マンとかするか? そうじゃないだろうよ。お互いが気持ち良くなる為の前戯じゃん。その次の段階に進む為に気持ちと体を昂らせる為の前戯だろ。違う?」 「だけど...結局俺一人だけが気持ち良くなっちゃって...」 「勇輝...俺は客じゃないんだぞ?」 一度体を離し、まだ縁の赤い目元にキスをすると、改めてしっかり抱き締めた。 「お前もそうだろ...女の子に手マンしたりクンニして一人でイッたからって、嫌な気分になるか? 少なくとも俺はならない。寧ろ『ちゃんと相手を感じさせてやれた』って嬉しくなるし、余計に興奮するよ。今は俺が、お前の特に気持ち良さそうなトコ一生懸命探してたんだから、それがイくほど気持ち良かったなら何より嬉しいに決まってんじゃないか」 「俺...こんなに早くイッたことなくて...それも、タチの人喜ばせる前なのに...自分の体が...全然思うように抑えられ...なくて......」 「だ~か~ら~、なんでそうなるんだよ。いらん事を考えたり凹んだりすんなってばぁ。俺に触られて気持ち良いなら何回でもイけばいいんだって。その分ね、今から俺だって気持ち良くしてもらう」 俺のその言葉に、勇輝が何やらモゾモゾと腕の中で動きを見せる。 少しだけ抱き締める力を抜いてやると、勇輝は俺のチンポをしっかりと握りしめた。 「ガチガチのまんまだ......」 「だから言ったろ? 勇輝が俺の動きで感じてくれてるってだけで、すっげえ興奮してるの。なんの感情も持ってない女優相手でもそれなりに興奮と達成感あんのに、大好きな大好きな勇輝が俺の指の動き一つで悶えまくってんだぞ。んなもん、こっちまでイくかと思ったわ。俺のこの指、旨そうに咥えたまんまでキュウキュウ締め付けるしさ...完全に頭の中では指とチンポが連動してたよ」 わざとニヤニヤと悪い笑顔を見せながら、勇輝の中を犯していた人差し指と中指を目の前に差し出す。 照れるかな...なんて、ちょっとからかうくらいのつもりだったんだ。 『もう、充彦ったら!』なんて顔真っ赤にしながら肩とかペシペシ叩いてきたりしたらなんか可愛いし、少しは落ち込んでるような雰囲気が和むかと思ったんだ。 でも、俺の想像は甘かった。 『ペシペシ』なんて可愛い行動を期待した俺がバカだった。 ジェルでまだ少し湿って光る俺の指を見た瞬間、勇輝の表情がふっと変わる。 それは『照れる』とは真逆にあるような... 可愛いなんて物の正反対のような... ただ『淫猥』としか表現できない表情でそっと俺の手を握ると、うっとりとそこに頬を擦り寄せてくる。 「俺を...あんなに気持ち良くしてくれたの...この手なんだね...」 チュッチュッと手の甲から手のひら、指の股から先へと唇を押し付けてきた。 なんのスイッチが入ったのか、それともこの顔こそが本当の勇輝なのか、その匂い立つような毒気に当てられてひどく喉が渇いてくる。 そんな俺に向かってわざと見せつけるように舌を伸ばすと、勇輝は指の一本一本を丁寧に舐め始めた。 ......まただ...指先に与えられる熱い粘膜の感触が、そのまま俺のチンポへと直結する。 裏側を舌先でゆっくりとなぞると、先端をチュプと口に含んできた。 たっぷりと溜めた唾液を使いそれをクチュクチュと出し入れしながら、右手は本物のチンポへと改めて伸ばされる。 「今度はガチガチで...トロトロだ......」 「それは...お前が指フェラなんかするから......」 「じゃあ...指じゃなくて、こっち舐める?」 たっぷりと溢れてるらしいヌメリを利用しながら、親指でクリクリと亀頭を擽り始めた。 俺は急いでその勇輝の手を掴み、動きを止めた。 「これ以上はダメ」 「なんで? 俺も充彦を気持ち良くしてあげたいよ?」 「俺は勇輝の中で気持ち良くなりたいの。口内発射も手コキもいらない...俺は早く勇輝の中に入りたい...」 勇輝の駄々漏れの色気と自分の抑えきれない興奮に、本当はすぐにでも射精してしまいそうなのだ。 これ以上触られたら我慢なんてできなくなる。 俺の顔が余程切羽詰まっていたのだろうか。 勇輝はこれ以上無いほどに幸せそうな、そしてこれ以上無いほどにいやらしい笑顔で俺の体をそっと突いて放す。 「...勇輝......?」 俺の顔を見つめたままで腰の下のクッションの位置を整えると、勇輝は改めて膝を抱えて上げた。 「いいよ...もう大丈夫だから...早く充彦のでいっぱいにして...俺をもっともっと気持ち良くして...」 膝を上げたまま自ら蕾を開いて見せる勇輝の姿に俺は釘付けになり、ただ生唾を飲んだ。

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